リボーン複数主 | ナノ


▼ 標的30

今日は学校の開校記念日で平日だが学校はお休み。制服を着ることも、学校に間に合うように早く起きる必要も無い。にもかかわらず、くるみはいつもと同じ時間に起床し、身支度を整えていた。

「はぁ…」

制服に着替えながら考えるのはついこの間のこと。なまえから休みの今日、どこかへ遊びに行かないか誘われたのだ。普段ゲームばかりの彼女からの誘いは珍しく、いつもであれば喜んで行くと答えたのだが、この日ばかりは事情が違った。
休みの日だろうと幼なじみの手伝いに駆り出されるからと断りの言葉を言いつつ、くるみはずっと会いたい人物がいた。その人が、学校が休みの今日、自身の生徒とその友人をつれて学校に来ることは覚えていて、最近よく巻き込まれる由良はなまえと遊ぶ予定だから来ないことも事前に把握していた。だからこそ、話すのに絶好の機会を逃す訳にはいかなかった。

「なんとかしてくれるといいな…」

呟いたくるみの視線の先にあるのは彼女が愛用する武器、拳銃だ。これは彼女の母親が色々な伝手を駆使して娘の為に造らせた特注品で、どんな物でも弾丸と同じ威力を発揮できる(例えば石でもティッシュでも)優れもので、くるみが主に使うのは拳銃と共に渡されたゴム弾だ。雪合戦でなまえを守る為に使ったのもそうで、雪玉を投げるより速いと考え使ったのだが、そこで問題が起きた。
音が大きいのだ。特注品として様々な物を弾丸と同じように使えるよう機能性を重視した為か、発砲音はあまり考えられていなかったようで、近くで撃てば鼓膜が破れてしまうような大音量が出てしまう。現に、近くにいたなまえは耳を押えていたし、毎日訓練しているくるみもいつも顔を顰めていた。
リボーンから勧誘を受け、巻き込まれることを覚悟した時から友人を守るためなら戦うことも致し方ないだろうと考えていた。でも、その時に自分の武器で友人が苦しむのは見たくなかった。気にしてしまえば、取り返しのつかないことにもなるかもしれない。そう思うと、怖くなった。

「いってきます!」

リボーンは今日、山本だけの武器、山本のバットを山本に渡す。山本の武器を調達する程伝手があるはずだから、きっとくるみの武器も何かしらの伝手を教えてくれるかもしれない。何よりリボーンもくるみと同じように拳銃を扱うのだから、何かコツみたいなものでもいいから知りたい。そんな思いで誰もいない学校に向かった。


学校に着き、いつも幼なじみがいる応接室で黙々と仕事をしていたくるみは至極不機嫌な幼なじみから見回り行ってこいと追い出されてしまった。

「はぁ…」

今日何度目かの溜め息が出る。
幼なじみが不機嫌になった理由は十分理解していた。
学校に来てからくるみはずっとそわそわして、チラチラとしきりに窓を見たり、ドアを見たりと忙しなかった。そんな彼女の様子に気配に人一倍敏感なヒバリが気づかないはずもなく、気が散るから出て行けと言外に言ったのは仕方の無い事だった。

宛もなく校舎内をフラフラと歩いていると、ふと外の方から爆発音が聞こえてきた。また獄寺がどこかでダイナマイトを爆発させてるのかもなぁなんて思いながら窓の方に目を向ければ、それは意外に近い位置で起こっている事が分かった。

「もしかして…!」

ピンときたくるみは遂に来たかと期待を胸に、爆発によって起きた黒煙が立ち上る方に向かって走った。


爆発が起きていたのは野球部が練習などで使う方のグラウンドだった。煙が完全に消えていないところを見ると、山本たちはまだ帰っていないだろう。

「っ…獄寺くん?」
「あ?ってお前かよ…」
「もうっ、くるみだよ。川崎くるみ!覚えてるよね?」
「けっ…」

しゃがみこんでそっぽを向く獄寺に苦笑する。何をしてるのか聞けばお前には関係ないと答えられ、気まずさを感じる。
思えば、獄寺とまともに会話をした記憶が無い。いつも山本がいるからそちらの方に意識がいって、獄寺はあまり見ていなかった。とはいえ、この時期の獄寺はツナ命で、くるみからどう思われようとどうでもいいと考えているだろうが。だからこうして話す機会は滅多になく、少し緊張していた。

「ねぇ、リボーンくん見なかった?」
「リボーンさんに何の用だ。」
「ちょっと、相談事というか…」
「!10代目の右腕はお前なんかに渡さねぇ!」
「へ?」

くるみの返答に何を勘違いしたのか凄んでくる獄寺に呆気に取られる。どうしてそうなった?問いたい気持ちを抑え、違うよと否定する。

「私の武器の相談。」
「なっ…!お前もかよ…」
「も?」
「………………リボーンさんと10代目が山本の武器を決めるために来てんだよ。」

渋々といった様子で嫌々話す獄寺にそうなんだと返しつつ苦笑する。正直な人だ。こういう所が彼の匣アニマルに似てるのかもなあ。ふと思ったくるみはじゃあリボーンくんいるんだ?と問えば知らね、と返ってくる。しかし、時折聞こえてくる銃声がリボーンの存在を嫌でも教えてくるので、まだいるようだ。
よかったと安堵したくるみはそれじゃあと獄寺に告げてグラウンドに走っていった。

「いた…!リボーンくん!」
「ん?」
「川崎さん!?」

グラウンドに入れば、すぐにリボーンは見つかった。山本のトレーニングの為に山本に向けて銃を撃つリボーンに声をかけて駆け寄る。近くにいたツナは驚きの声を上げ、どうしてここに?と聞いてくる。

「大きな爆発音みたいなのが聞こえて。」
「(絶対さっきの獄寺君のダイナマイトだー!)」
「川崎も間違えて学校来ちまったのか?実は俺とツナも開校記念日って忘れててさー!」
「山本くん…!」

明るく話しかけてきた山本に話しかけてくれた…!と嬉しくなり、ぽっと顔を赤く染めたくるみは嬉しそうな山本の期待を裏切りたくはないけど、そんなおっちょこちょいな子とも思われたくない!推しにはいい所を見せたい!そんな欲望の葛藤の末、素直に話すことにした。

「実は、恭弥くんの手伝いで呼ばれてて、今は見回り中なんだ!」
「ヒバリさんの!?」
「そーいや、前の雪合戦の時もそうだったよな?なんでだ?」

山本の質問にそうか、と思い返す。そういえば、みんなに自分とヒバリの関係性を明確に伝えたことはなかったかもしれない。山本辺りは先輩から聞いていたかもしれないのに知らないとなれば、きっとみんな不思議に思っていただろう。話したことのあるなまえが知っているから話した気でいてしまった。

「幼なじみなんだ。恭弥くんと私!」
「ええー!?幼なじみ!?」
「うん!だからしょっちゅう手伝い頼まれちゃって、休みの日も学校来ること多いんだ。」
「仲良いのな!」
「う、うん!幼なじみだし!」

無意識に幼なじみの部分を強調したくるみは気づいていない。言外にヒバリとは何も無いと伝えようとしていることも、山本に誤解されたくないと思っていることも。

「ついでにヒバリがトンファーを使うきっかけを作ったのもくるみだぞ。」
「嘘ー!?なんであんな危険な物危険な人に持たせようとしたの!?」
「ちょっと事情が違うんだけど、私は恭弥くんが反抗する術を見つけさせただけで、トンファーを選んだのは恭弥くんだからね!勘違いしないでね!」

母親に敵わなかったヒバリの話は彼の体裁を気にして話すことはしなかった。この話を知っている時点でリボーンは把握していそうだが、特に何か言うこともなかった。そんなリボーンが何か用か、とくるみに問うのでそうだったと思い出し、本題に入る。

「リボーンくんに相談があってね。というか、お願いみたいになっちゃうかもしれないんだけど…」
「俺は女には優しーんだ。言ってみろ。」
「ありがとう!これなんだけど…」
「ひぃっ!拳銃ー!?」
「お!すっげー!本物みたいだな!」

くるみが徐に取り出した銃に、ツナと山本は各々反応を示す。予想した通りの反応に微笑ましく思いながら、続きを促すリボーンに話を進める。

「この前使った時、音が大きくて、なまえちゃんがビックリしちゃってて。だからどうにか出来ないかなって思って、聞きに来たの。サイレンサーを使うのは効率悪いでしょ?」
「確かにな。」

サイレンサーは主にライフルや猟銃などに取り付けることが多く、リボルバー式の物では構造上意味が無い。くるみが使うのはリボルバー式に近い物なので、サイレンサーを付けるには不向きだった。

「分かったぞ。ちょっとこいつ借りるがいいか?」
「大丈夫だよ!ありがとうリボーンくん!」

無事にリボーンが相談に乗ってくれたこと、武器が更に良くなるかもしれないという期待から満面の笑みを浮かべるくるみ。そんな彼女によかったな!と声をかける山本、青い顔で頭を抱えるツナがいた。
嬉しい気持ちを隠しきれないくるみはそのまま応接室に戻って行った。戻ってきたくるみを見た幼なじみが今度は何をしたのとでも言いたげに顔を顰めたが、気にせず仕事を再開した。

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