リボーン複数主 | ナノ


▼ 標的28

両チーム準備も整い、リボーンの開始という掛け声とどこから持ち出したのか吹き鳴らしたほら貝の音で雪合戦が始まった。しかしどちらのチームも自分たちで作った塹壕に隠れ、誰も出てこない。今出ていこうものなら敵チームから雪玉の集中砲火をくらってしまうから、迂闊に出られないのだ。

「早速膠着状態か。」
「どうしましょうか?」

お互いに出方を伺っているので、遊び疲れて眠ってしまったランボを傍に寝かせながらディーノに問いかけるなまえ。流石1ファミリーをまとめあげる現役ボスと言うべきか、年長者だからか、ディーノが一番頼りになると感じ、また見た目から怖い獄寺や、威圧感がする了平に比べ、話しかけやすいという親しみやすさもあって、人見知りのきらいがあるなまえもすんなり気を許せた。
問われたディーノは顎に手をやりそうだな、と呟く。が、ディーノが何か言うより早く、動いた男がいた。

「いいや!極限まで攻めずして、勝利は掴めん!!」
「笹川!?」

ディーノの呼び止める声も無視してボクシングの構えで雪玉も持たずに了平が飛び出した。同じチームの獄寺は呆れ、ディーノも青い顔で呆然としている。
当然了平は敵チームの餌食となり、まず野球で鍛えた山本が手加減なしに投球するように投げる。そのスピードは雪玉とは思えない程速く、真っ直ぐ了平のもとへ向かう。

「えっ…」
「なっ!」

ばごぉっ。という雪玉が当たったとは思えないような大きく鈍い音を立てて山本が投げた雪玉は粉々になってしまった。

「そんななまくら玉、この極限ストレートの前ではマシュマロ同然!!」

粉々にしたのは了平の繰り出した極限ストレートと呼ばれた拳だった。雪玉でも人が殺せるのではないかと思う程威力のある雪玉だったが、了平にとってはどうということはないようで、負けず嫌いの火がついた山本が次々に投げていくが、悉く了平の拳で粉々になっていく。

「俺達も山本の援護しよう!」
「うん!」
「そうだねツナ兄!」

ツナの声にくるみ、フゥ太も了平に向かって雪玉を投げるが、山本より威力が弱いせいかすぐに砕かれてしまう。了平はそのままどんどん中央に置かれたレオンに近づいていくが、ツナたちは雪玉を投げ続けることに精一杯で食い止める術がない。

「ツナ兄おされてるよ!」
「もう精一杯だよー!」
「1人相手に全員でかかるのはよくないと思うんだけど…っ」
「思ったより手強いな…!」

東軍チーム全員がダメだと思った瞬間、彼らの背後から飛び出す影があった。

「!」
「イーピン!!」

東軍チームもう1人のメンバーであるイーピンが了平を阻止しようと1人で前に出た。もちろんそんな行為をしてしまえば止めようとなるのは当然の考えと言うべきか、西軍の了平以外のメンバーも雪玉を構える。

「わりーがレオンはやらないぜ!!」
「ごめんねイーピンちゃん!」

ディーノ、なまえがそれぞれ投げるが、ディーノが投げた雪玉は後方に向かって飛んでいき、なまえが投げた雪玉は自軍の塹壕に当たって砕け落ちた。

「ん?」
「あれ?」
「何処投げてんだお前らは!!」
「ご、ごめんなさい!」

2人に怒号を飛ばした獄寺に思わず謝るなまえ。
何やってんのあの子は。審判として見守っていた由良は溜め息をついて額を抑える。

「ったくしょーがねーな!どいつもこいつも!!」

ツナと別チームとなりツナに向けて投げるつもりはなかった獄寺も、2人のあまりのコントロールの無さに呆れて雪玉を投げる。それは前に出てきたイーピンに当たると思いきや、いきなり空中で爆発したようにぼん、ぼん、と音を立てて全ての雪玉を壊してしまった。
そのカラクリは、イーピンが使う拳法、餃子拳といわれるもので、餃子饅というものを食べその空気を圧縮させたものを雪玉に命中させていたのだ。
勝機を見たツナたちは歓喜に湧くが、それもすぐに終わってしまう。

「うがっ…」
「なんだ、この空気は…」
「き、キツい…!」

餃子拳を使う時に必要不可欠な餃子饅を食べた息が霧散し、風下にいるツナたちに流れてしまい、強烈な匂いに身動きが取れなくなってしまった。

「弾幕が薄いわ!光る玉は貰ったぞ!!」

そんなツナたちに容赦なく宣言する了平はそのままレオンまで近づいていく。

「ピンチだよツナ兄!」
「分かってるけど…」
「匂いがキツすぎて…」
「やべー…!」

最早ここまでか。ツナたちが諦めかけたその時、了平の背後がドガァンという大きな音とともに爆発し、了平は無念という言葉を残し、爆発に巻き込まれリタイアとなった。一体何が起きたというのか。驚く面々の前に出たのは西軍チームにいたはずの獄寺だった。

「スパイ活動が終了したのでそちらに戻ります!」
「………………………え?」

スパイ活動も何も無くない?混乱するなまえが何か言うより先に、獄寺はすたこらさっさと東軍の方に向かっていく。数、戦力共に大幅なダウンをしてしまった西軍チーム。現在動けるのは部下がいなければ運動音痴なディーノとそんなディーノと引けを取らない、もしかしたらそれ以上に酷いなまえしかいないのだ。
どうしよう、と不安に思ったその時、ならば我々も!という声がどこからともなく聞こえてきた。

「ボスを!」
「守ーる!!」
「!?」

突如地面から現れた見知らぬスーツの男性に驚き、目を白黒させるなまえを余所に、ディーノの部下と言われた彼らはボスであるディーノと話している。
そんな中東軍では堂々と寝返った獄寺が到着し、ツナの近くにいた山本を押しのけ戻りました!とにこやかに報告していた。

「だ、大丈夫?山本くん。」
「っと、わりぃ川崎。ありがとな。」
「う、ううん!全然!」

獄寺に押され、よろついた山本を支えるように手を背中に添えたくるみは、助ける為とはいえ、山本に触れてしまった事実に赤面する。

「こんなんでいいのかよ審判!!」
「うん。ピッタリ予想通りだ。」

抗議するツナに対し、分かっていたように答えるリボーンを見て、由良は持ってこいと言われた薙刀を袋から出し、塹壕の前で驚きすぎてへたり込んでしまったなまえのもとへ向かう。そうしている間にも雪(上)合戦は再開し、マフラーを赤から白に巻き直した獄寺が愛用のダイナマイトを大量に西軍の方へ投げる。

「させるか!」
「なまえ!」
「なまえちゃん伏せて!!」
「えっ?えっ?」

部下がいる前では抜群の戦闘センスを発揮するボスの鑑とも言えるディーノが己の武器である鞭を使い、雪玉をダイナマイトを切るように投げ、その流れで餃子拳を使って雪玉を壊していたイーピンも気絶させた。
また、獄寺のダイナマイトを鎮火したのはディーノだけでは無かった。

「なまえ、大丈夫?」
「獄寺くん、なまえちゃんに何するの?」

間一髪、間に合った由良が薙刀を払いなまえに向かってきたダイナマイトを全て斬り捨てていた。更に先程了平相手にした時は山本よりも格段に弱々しい投げ方で雪玉を当てに行っていたくるみが、自陣からその時とはまるで別人のように威力もスピードも増して雪玉をダイナマイトの導火線に向けて投げ、全て命中させていたのである。

「なまえ、沢田たちの方に行こう。ここよりは安全だから。」
「あ、うん。」

呆けた様子でありがとうと言ったなまえに何とかしなければと思った由良は手を差し伸べ、提案する。しかしこのままなまえを移動させるわけにはいかない。移動中何があるか分からないからだ。どうしようか考えた由良はある事を閃き、口を開いた。

「一旦タイムで!!」
「しゃーねーな。」

審判の特権である。
由良の声が響いたのか一瞬シン、となり、リボーンが許可を出してくれたのでありがたくなまえを引っ張っていく。
慣れない雪の上でも体幹がしっかりしている由良はスタスタといつもの様に歩けるが、なまえはそうはいかず、滑らないように慎重に、しかし皆を待たせているからという焦りで急ぎながら歩いていた。当然、そんな状態ではバランスを崩しやすい。

「あっ…!うっ…」

地面に着いた右足がずるりと横に滑りそのまま体は右へ傾き、レオンが乗っていた雪柱が近くにあった為か見事に頭からぶつかってしまった。そこそこ丈夫に造られていたようでなまえがぶつかっても崩れることはなかったが、逆に硬さがあったせいかゴンッと音が出そうな勢いで当たってしまい、側頭部が冷たいし痛い。

「ちょっ…大丈夫!?」
「うん、平気…」

恥ずかしさと痛みとで小さく答えたがこれ以上待たせてはいけないと由良が差し伸べてくれている手にも気づかず、寄りかかるようになってしまった雪玉に手をついて立ち上がろうとした。ら、固められた雪柱がなまえの体温で少し解けていたのか手をついた所がまたしても滑り、今度は前に倒れ込んだ。

「ホントに大丈夫?」
「……………ぅん…」

顔を羞恥で真っ赤にしながら先程よりも小さい声で答え、のそのそと立ち上がり、ようやく東軍に到着した。心配から駆け寄ってきたくるみに真っ赤な顔のまま無言で抱きついたなまえを由良とくるみが慰める。

「(もしかして、俺やディーノさんよりドジなんじゃ…)」

先程のなまえの様子を見たツナは絶句し、そう思ったが、言わなかった。

「気を取り直して……誰がいようが、レオンは俺たちがいただくぜ。」
「そうはいかないわ!」

ビシッと鞭を構えて言ったディーノに答えたのは別の声だった。

「よくも私抜きで遊んでくれたわね…!」

そこにいたのは中華風の衣装を身にまとったビアンキで、彼女は行くわよ下僕たち!と声をかけランボ、イーピンを呼び寄せた。

「勝つのは私たち、毒牛中華飯!」
「第3勢力だと…!?」

ポーズを決めたビアンキら3人に驚きの声を上げるディーノ。

「雪合戦とは…」

盛り上がる周りを他所にポツリと呟かれた言葉に他2人は大いに頷いた。

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