リボーン複数主 | ナノ


▼ 標的21

年も明け、三が日が終わった頃、自室でゆったり過ごしていた由良は自身の携帯に何故か登録した覚えのないリボーンからメールが届いていることに気づいた。怖、と恐る恐る開いてみると、今すぐここに来いという文面と住所、地図が添付されていた。

「どこここ…」

地図を見ても思い当たる場所が無く、しかし行かないという選択肢は与えてくれていなさそうだったので、仕方なく上着と貴重品だけ持って家を出た。

「あれ?由良ちゃん?」
「川崎さん…」

地図を頼りに指定された場所に向かっている途中、丁度十字路の右手側から振袖に身を包んだくるみがやって来た。その手には由良と同じように携帯が握られており、もしやと思って聞けば自分と同じようにリボーンに呼ばれたからとの事。せっかく目的地も同じだからと、そのまま一緒に向かうことにした。

「そういえば、明けましておめでとう。」
「!うん!おめでとう!今年もよろしくね!次はなまえちゃんと3人で同じクラスになれるといいね!」
「………………そうだね。」

ニコニコと屈託なく笑うくるみはどこか友人である笹川京子と同じような眩しさを感じ、少し後ろめたさを感じた由良はぎこちなく笑った。

「そういえば、幼なじみの彼は一緒じゃないの?」
「恭弥くん?たぶん今は町内の見回りじゃないかなあ?私達そこまで一緒に行動しないから。」
「そうなんだ。あ、言いそびれたけど、振袖可愛いね、似合ってる。」
「あ、ありがとう…!」

照れて恥ずかしそうに笑うくるみに本当に可愛いなぁと思い、同時に自分には一生無縁のものだろうなぁと思い知ってズンと心が重くなる。きっと経験の差だろう。
由良は社会人となり周りに溶け込むための処世術を身につけていた。相手を褒めること、相手から褒められること、それらへの上手い対応の仕方。きっと今の中学生らが社会人になれば誰でも身につけるであろうものを、由良は生まれる前から身につけ、そしてその知識を有したまま生きてしまったからこうしたくるみのような可愛らしい反応が出来なくなってしまったのだ。
無い物ねだりをするつもりはないが、今の子はこういう可愛らしい子の方がきっと目に行きやすいのだろうな。半ば諦めた気持ちで由良は哀しげに笑った。

「よ。お前ら。」
「リボーンくん!明けましておめでとう。」
「おめでと。何の用?」
「って、神崎さんに川崎さん!?」

なんでここに!?驚くツナに俺が呼んだと当たり前のように言うリボーン。目的地はどうやらツナの家だったようで、表札に沢田と書かれてあった。そして呼び出されたのは由良、くるみだけでなく、いつもツナと一緒にいる獄寺や山本、京子、ハルの姿もあった。京子とハルはくるみと同じように振袖を着ていた。

「京子の友達か?」
「あ、そっか!2人とも、お兄ちゃんに会うの初めてだもんね。こっちは私のお兄ちゃん。」
「笹川了平だ!座右の銘は極限!今年の抱負も極限だ!よろしくな!」
「妹さんと同じクラスの神崎由良です。よろしくお願いします。」
「隣のクラスの川崎くるみです!よろしくお願いします。」

そんな彼らの中で、袴姿の見たことのない人がいると思えば、なんと京子の兄のようで、見た目全く似てないなと驚きながら挨拶を交わし合う。京子よりも元気な人のようだ。座右の銘とかはよく分からないけど、この寒さをものともしない熱い人だ。

「あれ、そういえば、みょうじさんは?」
「そういえばいねーな。」
「お前らがいれば必ずつるんでそーなのに。」

ツナの疑問の声を皮切りに山本、獄寺も同意し、由良とくるみを見る。京子やハルも少し交流もあったからか知りたがっている様子だ。見られた2人は困ったように目線を逸らし、歯切れ悪そうにあー、と声を漏らす。

「あの子、休みの日は寝るかゲームしてるか漫画読んでるかアニメ見てるかなんだけど…」
「電話以外の通知全部切ってるから、たぶんメールも気づいてないと思うんだよね。」
「心配すんな、みょうじなまえはハナから誘ってねぇ。」
「あ、そうなんだ…」

なまえのメンツの為に説明するが、彼女は事前に連絡すると言われれば通知を切ることはしないし、遊ぶ約束も日にちさえ決めていれば最悪前日に連絡をとって細かい部分も決められる。通知を切るのは彼女が暇な休日に気兼ねなくゲームができるようにする為であり、切り忘れた場合はしっかり返信もする。
しかしなまえはリボーンとまだ面識もないので、今回リボーンは誘わなかった。もしこれまでに1度でも会話出来ていたらもしかしたら誘っていたかもしれないが、リボーンが彼らを誘ったのは理由があった。

「これからボンゴレ式ファミリー対抗正月合戦をしようと思ってな。」
「ボンゴレ式…?」
「正月合戦?」

いつの間に着替えたのか、まるでどこぞの殿様のようなコスプレをしたリボーンは金屏風を背景に言い放った。聞き慣れない単語ばかりのそれに、ツナが説明を求めたが、ちょうどその時対戦相手がやって来た。

「ディーノさん!……と、その部下の皆さん!」

金髪の青年ディーノと、ツナの言葉を借りると彼の部下の人達がゾロゾロと現れた。初めましてと挨拶を交わす由良たちにここじゃあれだから、と河川敷に移動することになった。
移動中にどういうものかリボーンから説明を受けた。どうやらボンゴレ式ファミリー対抗正月合戦とは、ファミリーの代表がそれぞれ正月にちなんだ種目を競い合い、総得点の高い方が勝ち、豪華賞品を貰えるらしい。ちなみに負けた場合は1億円を払わなければならない。

「私ら中学生なんだけど…」
「ま、まぁまぁ!ほら、赤ちゃんの言うことなんだから気にしちゃダメだよ!」

由良がファミリーに入ったことを知らないくるみはなんとか誤魔化そうとするが、リボーンの雰囲気がそれを許さなかった。

「次は羽根つきだ。2対2でやるぞ。1回だけの一発勝負だからな。」

河川敷に到着し始まった正月合戦。1回戦はおみくじで、引いたおみくじの結果で得点が決まるものだった。自信満々で任せろと名乗り出た了平が箱から大量のおみくじを掴み取り、勝ったも同然と思ったのも束の間、全てマイナス点になる凶や大凶ばかり引き当て、一気に引き離されてしまった。
何とか挽回すべく、スポーツ万能の山本を選んだツナ。しかし次の種目の羽根つきは2対2、もう1人選ばなければならなかった。出来ることなら山本と同じ運動能力が高い獄寺をと思ったが、彼らの相性を考えてやめ、どうしようとなった時、山本が声を上げた。

「じゃあさ、川崎に頼んでもいいか?」
「えっ?私?」

驚くくるみは目を丸くするが、山本はおう!と答え、以前の体育祭でくるみの運動能力の高さを引き合いに出した。それを聞き、そういえばと思い出したツナは嫌じゃなければ頼むよと声をかけ、くるみは戸惑いながらも分かったと頷いた。

「試合開始だ。」

ホイッスルの音と共に試合開始の合図が出され、くるみがサーブを打つ。

「えいっ…!」

バドミントンのサーブのように打ち上げた羽根は運悪くディーノ側から選抜された元テニスプロのマイケルに向かい、そのままテニスで鍛えられたスマッシュを決められてしまった。そこに反応したのは山本で、羽根つきの板をバッドのように構え、弾丸のように一直線にスピードを出しながら向かってくる羽根をカーンと打ち返した。が、それは相手側の更に遥か後ろ、川の向こう岸まで飛んでいき、アウトとなり、負けてしまった。
その後も様々な種目でツナたちは負けてしまい、点差は開きまくり、もはや勝つのは絶望的な状況となってしまった。

「考えてみたらちょっとシビアすぎるな。」
「!」
「大人対子供だ。ハンデをやってもいーぜ。」

絶望し、泣きわめくツナを不憫に思ったのか、ディーノの鶴の一声で今までの点数が全てチャラになり、最後の種目、餅つきでリボーンに美味しいあんころ餅を食べさせられたら勝ちということになった。

「誰かあんこの作り方、知ってる?」
「任せて!昔教わったことがあるから!」
「頼もしいです!」
「くるみちゃん、まず何をしたらいいかな?」
「まずはね…」

餅つきは男性陣に任せ、由良達は作り方を知っているくるみの指示のもと、あんこ作りを始めた。

「遅くなってごめんなさい。私も手伝うわ。」
「あ、ビアンキさん!」
「ビアンキさんがいれば百人力ですね!」

そんな彼女たちのもとに、振袖に身を包んだ少し年上の女性がやって来た。京子とハルは知っている人のようで、由良と知っているが知らないふりをしているくるみは首を傾げる。

「リボーンの恋人のビアンキよ。よろしく。」
「あ、神崎由良です。」
「川崎くるみです…」

流れるように名乗られ、戸惑いながらこちらも名乗り、ビアンキの手も借りてあんこ作りを再開した。が、ビアンキが作る物はなんでもポイズンクッキングになってしまう為、案の定あんこは毒々しい紫色の劇物となり、何故か蒸発するような音を立てていた。それを出された審査員のリボーンは食べることなく眠ってしまい、代わりにと食べることになってしまったツナとディーノが逃げたことにより、今回の合戦は勝敗がつかないまま終わった。

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