リボーン複数主 | ナノ


▼ 標的18

とある日の放課後。全ての授業も当番も滞りなく終え、くるみは1人暖かな陽の射す廊下を歩いていた。
季節はすっかり秋になり、窓越しに見える空は夏と比べて高く感じる。こんな風に天気のいい日は友達と遊びに行きたりしたかったのだが、例に漏れず幼なじみに呼び出されているので泣く泣く応接室に向かっている最中だ。

「ちゃおっス、くるみ。」
「わっ!ビックリしたぁ。えっと、リボーンくんだったよね?何か用かな?」

行くのヤダなぁなんて思って歩いていれば、下の方から己の名前を呼ぶ声がした。突然聞こえた声に驚くも、下を見ればこの場に似つかわしくない赤ん坊がいた。用件を尋ねれば中庭に行くようにとのことだったので、ひとまず行ってみることに。

「ん?川崎?」
「や、山本くん…!?」

中庭に行けば、何故か山本と獄寺もいて、くるみに気づいた山本が声をかけてきた。どうしてここにいるのか聞けばくるみと同じようにリボーンに呼ばれたからとのこと。

「獄寺君に山本!川崎さんまで!?」

一体どういうことかと話していれば、ツナが呼び出した張本人であるリボーンを連れてやってきた。驚くツナにリボーンに呼び出されたことを伝えると、何やらコソコソと話している。前世で知識を蓄えていたくるみは何処か既視感のあるこの光景に必死に記憶を辿るも、コレというものが出てこない。

「ガハハハハハ!ランボさん登場!」

そんな時、近くの教室の窓からアフロ頭に牛の角をつけ、牛柄の全身タイツのような服を着た子供がやってきた。近くにいた獄寺とやいのやいのと言い合っているその子供、ランボを見て、くるみは何か思い出せそうな気がしていた。
確か、この話は原作にもアニメにもあったような…
くるみが悶々と悩んでいるうちに話は進み、リボーンが3人を呼び出したのはこのランボの保育係を決めるためだということが判明した。獄寺にちょっかいを出して返り討ちにあい、泣き出してしまったランボを笑わせられれば合格とのことだ。

「ちなみにこれはくるみの入ファミリー試験も兼ねてるからな。頑張って合格しろよ。」
「えっ?う、うん…?」

話をしっかり聞いていなかったくるみはリボーンにいきなり名前を出され空返事で返したが、頭の中はなんの話だろうと疑問符でいっぱいだ。
トップバッターは獄寺だったが、泣かせてしまったお詫びとして仲直りの握手をしようとした獄寺にランボが手榴弾を手渡したことによりキレてまた泣かせてしまったため不合格となった。次手の山本は得意の野球で泣き止ませようとしたが、野球に全力を注ぐ山本は野球の動作に入ると手加減ができない体質らしく、キャッチボールのために投げたボールは豪速球と化し、ランボの顔に直撃してしまい再び泣いてしまった。

「次はくるみだぞ。」
「う、うん…」
「沢田?」

リボーンに言われランボに近づこうとした時、前方から由良が現れた。ツナが驚いたようにどうしてここに?と聞けば、ランボの泣き声が聞こえてきたようで、気になって来てみたとのことだった。リボーンが呼び出した訳では無いと分かると安堵したツナはうるさくしてごめんと謝るが、由良は気にしてないからと首を振る。
完全にタイミングを逃してしまったくるみだが、ランボは未だ泣き止まないので、ひとまず近寄ってみた。

「だ、大丈夫?」
「うわぁぁぁ!」
「………………。」

泣くことに夢中のランボはくるみの声も聞こえていないようで泣き続けていた。幼なじみがあんななせいで子供と触れ合ったことがまともになかったくるみは、子供のあやし方も子供が興味を持ちそうなことも分からず、こちらが泣きそうだった。

「どうしたの?転んじゃった?」

そんな時、優しく声をかけランボをそっと持ち上げる人物が現れた。先程までツナと話していたはずの由良だ。立ったまま、赤子をあやす様にポンポンと一定のリズムでランボの背を叩き、落ち着いた声で大丈夫大丈夫と声をかける由良は穏やかで、まるで母親のような雰囲気も感じられる。ランボも次第に落ち着いたのか、泣き止み、ぐすぐすと鼻を鳴らしている。

「もう大丈夫だね。泣き止んで偉いね。」
「ん…ランボさっ強いから、泣かない、もんねっ…」
「そっか。強いんだね、ランボくんは。」

地面に降ろされたランボはまだしゃくりあげてはいるが、涙も止まり、しっかり会話もできていた。ランボが強がって泣いたことを認めなくても由良は否定せず、頷いてランボを褒めてあげている。

「由良ちゃん、ありがとう。どうしたらいいのか分かんなかったから。」
「川崎さん…気にしないでよ、こういうの慣れてるだけだし。」

頃合いを見て由良に話しかけたくるみ。ランボを気遣って少し小声気味だ。

「お前、いいヤツだからランボさんの部下にしてやるもんねー!名前は?」
「由良だよ。」
「由良!あららー?そこのお前は誰だもんね?」
「あ、私はくるみだよ。よろしくね、ランボくん。」

完全復活したランボはいつもの調子を取り戻し、2人に絡んでいく。初めて接する子供に戸惑うくるみに慣れた様子でランボの話に相槌を打つ由良。2人に自慢げに話すランボは先程と打って変わって笑っていた。

「まさか、保育係ってあの2人ー!?」
「なっ…!アイツらが10代目の右腕ッスか!?」
「先越されちまったなー。」
「いいや、くるみは入ファミリー試験には合格したが、保育係の適正テストは不合格だぞ。どっちも合格したのは由良の方だ。」

そんな光景を見ていたツナたちは最後のリボーンの言葉に引っ掛かりを覚えた。
そもそもリボーンが最初に呼び出したのは獄寺、山本、くるみの3人だけで、ランボの保育係をツナの部下である3人の中から決めるということだった。それがいつの間にか由良が数に加えられており、しかも本人の与り知らぬところで合格してしまっていた。

「ちょっと待てよリボーン!!」
「ちゃおっス、神崎由良。」
「………………………沢田の知り合いの子?」

ツナの静止も虚しくリボーンは堂々と由良に声をかけに行く。さすがの由良もランボよりも小さい子供がランボよりも流暢に話すという事実を受け入れられず、追いかけてきたツナに関係性を尋ねた。その質問にツナではなくリボーンがツナの家庭教師だと答え、流れるようにツナのファミリーに入れと有無を言わせない雰囲気を出しながら言ってきた。

「ファミリー…?」
「私も勧誘されて、一応入ってるんだ。この子が考えたごっこ遊びみたいで、沢田くんがボスなんだって。」

首を傾げる由良にくるみが掻い摘んで説明すれば理解したように何度か頷いた。沢田がボスというのはいい人選のように感じるな、と思って入ると言おうとした。

「死ね!リボーン!!」

突然可愛らしく話していたランボがそんな物騒な言葉と手にしていた物騒なもの、手榴弾をリボーンに向けて投げた。え、と戸惑ううちにリボーンは手で払うだけでランボに手榴弾を返し、ランボはそのまま宙に舞い、爆発してしまった。

「わぁああああああ!」
「えぇ…」

再び泣き出したランボだったが、それまでの出来事があまりにもごっこ遊びから逸脱しすぎていて理解が追いつかない。花火と言うよりも本当に爆発だったと先程の光景を思い出して戦慄する由良。

「何やってるんですかー!?」

状況を理解するより先に、またもや新たな人物がやってきた。部活の交流試合にやってきていたハルである。彼女が新体操部に所属していたことに驚くツナたちだったが、ランボをあやすハルには聞こえていないようだった。

「たとえツナさんでも、ランボちゃんをいじめたらハルが許しません!!」

ランボを抱きかかえてツナたちに怒るハル。そのハルの剣幕が凄まじかったのか、ランボは泣き止むことなくボリュームのある頭に手を突っ込んだかと思えば子供の身には大きすぎるバズーカを取りだし、あまつさえ自分に向けて打った。

「なっ…!?」
「まさか…」

事情を知らない由良は無意識に声を上げ、バズーカが何か予想していたくるみは少し期待混じりに声を零した。
もくもくと立ち込める煙の中から出てきたのは高身長のパーマのかかった黒髪をもつ牛柄のシャツを着た青年と、その青年を抱えるハルの姿だった。

「お久しぶりです。親愛なる若きハルさん。」

重さに耐えきれず青年を落としてしまったハルに、落とされた衝撃で痛みを訴える青年だったが直ぐに持ち直しハルに声をかけた。が、ハルに平手打ちをくらい全体的にエロいと言われてしまった。傷つくランボはフラフラと覚束無い足取りで歩き、その先にいた由良とくるみに気づいた瞬間パアッと表情を変え、2人の手を握った。

「えっ…」
「あの…?」
「お久しぶりです若き由良さん、くるみさん!泣き虫だったランボです!」

戸惑う2人とは対照的に嬉しそうに破顔させて話す大人ランボ。くるみは正体を知っていたが、それでもこんな対応をされるとは思っておらず、酷く困惑していた。

「………………。」

その光景を見ていた山本は、胸に何かモヤモヤしたものが引っかかるような感覚を覚え、首を傾げた。分からないものは気にしないようにする性格だが、これは気にしなければならないような気がして、言いようのない不快感がある。
ふと、目線を下げた時に目に入った物を手に取った。

「なあアンタ、これアンタのか?」
「あ、はい。投げてもらえれば受け取ります。」

拾い上げた角を見せればそう言われ、それじゃあと先程ランボを泣かせた原因の豪速球をまたもや発揮し、今度は運悪く青年の額に角の尖った部分が刺さってしまい、泣かせてしまった。

「わ、わりぃ!!」

慌てて駆け寄り謝る山本はいつの間にか消えていた胸のいやなモヤモヤに気づけなかった。

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