リボーン複数主 | ナノ


▼ 標的172

予期せぬ不自然な地震により、分断させられてしまった由良達は、目の前に壁ができた時に生じた振動によって倒れた体を起こした。

「っうぅ…」
「くそっ!よりによってこんな時に地震とはよ!」
「完全に引き離されたね…」

比較的ゆっくり起き上がった了平や由良と比べ、悪態を吐きつついち早く立ち上がった獄寺は2人が何かを言うより早く、目の前に出来た壁を何度も叩いた。しかし壁はびくともせず、動く気配がないと分かったのか、獄寺は開かねえ!と吐き捨てた。

「これではすぐに山本と川崎と合流できそうにないな…」
「ですね…」

獄寺の苛立った言葉と現状を冷静に把握した了平はぼやいてこの後どうするかしばし考えこんだ。了平の言葉に頷いた由良は再度壁の方に目を向けるが、どれだけ見ても壁に変化は見られない。
後で会おうと言ったくるみは由良が止める声も聞かずに何の躊躇もなく山本の方へ向かっていった。あのタイミングなら、ひょっとすると、助けることもできたかもしれないのに、彼女はそうせず、共に行動する事を選んだ。それはつまり、由良は大まかにしか把握できていない今後の展開に関わっているのだろう。
この後の展開はどんなものだっただろうか。くるみから教えてもらった僅かな情報を思い出そうとするが、ちっとも出てこず、逆にこのまま分断されたことでくるみまでも怪我を負い、大変な状況になってしまうのではないか、という考えがちらついてしまい、どくりと心臓が嫌な音を立てた。

「白くて丸い装置の場所に向かいましょう。私達の目的は同じなので、きっと合流できると思います。」

考えを払拭するように首を振った由良が声をかければ、了平も頷いた。

「あの2人もきっと俺達と同じように白い丸い装置を目指すはずだ。」
「………………そう、だな…」
「そうと決まれば先に進むぞ。向こうの扉だったはずだ。」

渋々頷いた獄寺を確認し、了平が先導して一行は振り返り、その先の扉を目指した。すると、頃合いを見計らったかのようにその扉が開いた。

「!開いた!」

思わず走り出し、滑り込むようにして扉の先に入る。しかし室内には自分達の目的である白い丸い装置はなかった。

「なぁおい。今の地震…一体何なんだ?」
「!?」

ピタリ、と先に進もうとしていた足は止まり、突如遭遇してしまった敵の姿に由良は息を呑んだ。口振からして、相手も状況を理解していない様子だったが、それよりも、3人、特に獄寺は目の前にいる相手に見覚えがあり、驚愕から目を大きく開いた。そして気づいたのは相手も同じだったようで、部屋に入ってきたのが味方ではなく獄寺達だと分かると顔色を変えた。

「電光のγ!」
「!アイツが…」

獄寺が山本と未来に飛ばされた直後、予期せぬ戦闘によって苦い思いをさせられた相手、γがその部屋にいた。実際に見たことはなかった了平、名前だけ聞いていた由良は獄寺の様子から本物だと分かり、警戒する。

「何か騒がしいと思えば、お前らが来てたのか…何しに来てんだ?」
「のやろー、生きてやがったのか。」
「待て、タコ頭。」

余裕のある笑みを浮かべながら尋ねたγだが、その表情とは裏腹に、その目はここに現れた獄寺達を逃がさないとばかりに訴えかけている。それに気づいた獄寺は今にも戦おうとせんばかりに喰ってかかるが、了平が止めた。

「っるせ!止めんじゃねえ!コイツにはカリがある!!」
「!待って獄寺そうじゃない!」
「あ!?」

了平が止めた意味を察した由良も同じように獄寺に待ったをかけた。しかし頭に血が昇っているのか、獄寺は凄み気付いていない様子だった。

「おかしいと思わんか!ここは白い装置のはずだ!」
「!言われてみりゃあ…んだ?ここは…」

冷静さを取り戻し、室内を見渡した後自身の端末を確認した獄寺の様子に、ホッと息を吐いた由良。そして同じく目だけを動かし見える範囲で室内を確認し、次いで端末を確認する。地図には自分達が目指していた部屋にいると出ているが、実際目に入るのはコンテナが等間隔に室内に配置された室内。そこに白い装置は見当たらない。

「地図と睨めっこして…基地を壊しにでも来たってところか?」
「!」

3人が話し合っていると、静かに聞いていたらしいγが声をかけてきた。その内容は当たっており、言い当てられたことで皆咄嗟に言葉が出ず、口を噤んでしまった。
しかしγはこちらの目的が分かったにも関わらず攻撃を仕掛けることなく、驚いてんのはお前らだけじゃないと自分も由良達がいた展示室とは逆方向の司令室に向かっていたと言ってのけた。

「何!?」
「つまり、どういうこと…?」

γの話や先程までの彼の様子から、その内容は嘘ではないと分かった由良達だが、逆に疑問が残る。

「どうやら、この基地のおかしな構造は、こん時の為にあったみてーだな。」
「おかしな構造?」
「て、てめー何言ってやがんだ!!」
「獄寺っ…!」

喧嘩腰の獄寺を宥めつつ、何か知っている素振りを見せたγにどういうことだと目を向ければ、彼はフッと鼻で笑った。しかし続けてまがりなりにも客だから、とこちらの疑問に答えてくれた。
どうやらこの基地は、カモフラージュされているが、縦横高さ、全て成功形に区切ることが出来、ほぼ全ての区域を立方体で分割できるらしい。そして各階には同じく立方体の形に空いた何もない空間があり、立体のパズルのようになっているとのことだった。

「ピースを上下左右にずらしていけば、思い通りの場所に思い通りの部屋を移動させることも可能だな。」
「何だと!ではあの黒い部屋は空洞だったのか!」
「つまり、さっきの地震は部屋を移動させる為で、分断も敵の仕業だったってこと!?」
「!空洞の隙間に生えたカビも関係してんのか!?」

γの説明に驚くと共に納得した3人。獄寺がここに来る前、黒い部屋が多いフロアで地図を確認した時に黒い部屋の隙間にカビが生えていたことに気付いた。気になって言及したものの、γからは明確な回答は返ってこず、彼は何か考え込んでいる様子だった。

「この決闘(バトル)には感謝する。これであの方に、報いられるってもんだ。」

かと思えば、先程までの飄々とした様子が一変し、殺気を全面に出し、明らかな敵意を向けてこちらを睨みつけた。纏う雰囲気と、表情が変わったγに、由良達も迎え撃つべく構えた。

「やはり黙って行かせてはくれないか…」
「予想できてましたけど…」
「黙って行く気もねえしな!」
「待てタコ頭、神崎。」
「うるせっ。」
「?なんです、かっ…!?」
「う!!」

しかし獄寺と由良は何故か味方である了平の匣兵器によって縛り上げられてしまった。2人とも突然のことに目を白黒させていたが、状況を理解すると何とか拘束を解こうと身じろぎする。しかし体を縛り上げる縄は死ぬ気の炎で強化されており、緩む気配はない。

「お前達中学生(ガキ)にはハンデがあって然るべきだが、俺が6弔花に複数でかかっては男がすたる。ここは任せておけ。」

了平が由良達を拘束した時から薄々気付いてはいたが、やはり了平が1人で戦うつもりらしい。しかし2人とも素直に分かったと頷くことはできなかった。何せ相手はγなのだ。

「無茶ですよ!」
「だったら俺にサシでやらせやがれ!」
「ならん。成長したとは言え、まだお前の勝てる相手ではない。」
「先輩!」
「ほう、まるで自分なら俺に勝てるとでも言いたげだな。晴の守護者、笹川了平。」

制止する由良の声や自分も戦わせろと喚く獄寺を無視した了平は、了平の言葉を聞き不服そうに零したγの言葉にのみ反応を示した。

「言っておくが、今の俺には雲雀恭弥を2人引っ張ってこようが勝てねえぜ。お前らのリングと命はここに置いていってもらう。」
「っ…先輩!!」

まるで覚悟を決めた戦士のような重いγの言葉に何かあると感じ取った由良が咄嗟に叫んだ。しかしそれは了平も同じだった。

「大した自信だな。何を根拠に言っておる。」
「女神が…微笑んだのさ。」

両者言葉を交わしながらも、すぐにでも戦えるように指に嵌めたリングに死ぬ気の炎をボウッと灯した。

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