リボーン複数主 | ナノ


▼ 標的170

ミルフィオーレの1人、ホワイトスペルのバイシャナの匣兵器、嵐蛇(セルべ・テンペスタ)の嵐属性の炎が吹き出しているウロコに攻撃を仕掛けたことで触れてしまった了平の匣兵器、漢我流の体が嵐属性の特徴である分解によって破壊され、倒れてしまったことで一気に劣勢に陥った了平。バイシャナは勝利を確信したからか、余裕のある笑みを見せ、ミルフィオーレ内での晴属性の立場について説法を説いた。

「ミルフィオーレには『晴は引いて照らすが徳なり』という格言がある。晴の匣は活性などというおよそ攻撃的でない能力のために先頭に立って戦うなという意味よ。晴では嵐にかは勝てぬ。」

どんなものにも、相性がある。ゲームで例えると分かりやすいだろう。全てのキャラクターに属性が振り分けられ、それぞれ特定の属性に対しては有利に攻撃が働く。逆に不利になった場合は攻撃もうまく入らず、また相手からの攻撃に対する防御力も下がる。死ぬ気の炎の中で、晴と嵐はどうやら晴が不利になるような相性らしい。

「まずいぜ。」
「さがれ芝生!お前の匣は相性がわりーんだ!!」

バイシャナの了平の晴の匣では自分には勝てないという意味の言葉に、山本と獄寺が武器を構え、猟兵に代わって応戦しようと備える。獄寺がさがるように叫ぶが、了平は動かない。いや、動いたは動いたのだが、それはさがるためではなく漢我流に合わせてしゃがんでいた体を起こすためだった。

「あれ?」
「何を勘違いしている。何年経とうが俺はボクサーなのだ。」

バイシャナの言葉を受けて、山本や獄寺のように武器を取ることなく疑問を抱いた由良は首を傾げた。
了平はどこからか取り出した包帯を両手の拳に巻き付けていく。その姿は10年経っても変わらない、ボクシングを愛し、全力で挑む彼の姿だ。

「トレーナーをリングに送り出すボクサーがどこにいる?ハナから我流で倒すつもりなど毛頭ない。」
「活性って特徴さ…」

断言した了平はキュ、と巻き付けた包帯を止め、拳を構え断言する。纏う雰囲気は厳格で、歴戦の猛者を思わせるものを感じさせた。
それを目にしながら、由良は思ったままの疑問を零した。
”晴の活性って特徴、笹川先輩とめちゃくちゃ相性良くない?”
その疑問に頷いたのは由良の言葉を聞き取っていたくるみだけだったが、きっとそれはこの後の彼の戦いで判明するだろうと、視線を了平へと向けた。

「第一ミルフィオーレの格言など、俺には無駄な説法だ。」
「なぬ?」
「ボンゴレにはボンゴレの、守護者の使命があるんでなぁ!!」

少し遅れて、自分達の判断が誤っていたのだと山本と獄寺は気付かされた。
了平の叫びと共に感じたゾクリとした背筋が粟立つ感覚。相性は、あくまでも目安にしかならない。ゲームならばバフやデバフが影響し、勝敗を決める大きな判断材料となるが、現実の相性は生身の人間には必要のないものだった。

「お前達、忘れるな。」

現に、立ち上がり、拳を構え、静かにこちらに話す了平は、相性が悪かろうと相手に真っ向からぶつかり、その相性の悪さを覆さんとする気概があった。

「リング争奪戦で体現し、初代ファミリーより脈々と受け継がれてきた俺たちのその使命を。」

了平の忘れるなという言葉と共に続けられた言葉に、ゴクリ、と誰かが唾を飲み込んだ。同時に、皆リボーンや己の師から教えられた、自分が受け継いだ守護者の使命を思い出す。自分が何故この守護者となったのか。受け継いだからこそ伴い、背負うべき守護者としての使命。それを了平は、この戦いで自分達に見せようとしている。
そっと、自分が嵌めているリングに触れた由良、半分になったまま嵌まっているリングに視線を落としたくるみは、しっかりと己の目に了平の姿を焼き付けようと強い意志を持った目で真っ直ぐ前を向いた。

「いくぞ我流!」

了平の呼びかけに、倒れていたはずの漢我流が立ち上がる。そして大きな雄叫びをあげ、その大きく開いた口から晴の炎を吹き出した。同時にキュオオという音を立て、漢我流の腹が光り出す。皆それに気づいていたが、何が起きているのか、起こるのか、分からずに戸惑うばかりだ。

「射出。」

その中で、了平の短い言葉が聞こえ、その言葉と同時に腹の袋で光っていたものが了平目がけて飛び出していく。漢我流が現れた時と同じように凄まじいスピードで了平の拳に向かったそれは、あまりにも速かったからか、ガキィッと音を立てて装着されたが、同時に了平のジャケットを吹き飛ばした。

「我が匣、漢我流は二段式の支援(サポート)型匣。」

拳に装着されたものから光が徐々に消えていき、了平の拳に向かうために噴き出されていた晴の炎も徐々に小さくなっていく。

「そして、ボンゴレ晴の守護者、笹川了平。その使命は…」

一度言葉を切った了平はそこでカッと閉じていた目を開いた。

「ファミリーを襲う逆境を自らの肉体で砕き、明るく照らす日輪!!」

拳を突き合わせ、叫んだ了平。その両の拳には、先程まで晴の炎やそれ自体が光を帯びていて視認できなかったが、10年前、自分達と同じようにヴァリアーと戦い手にした晴のリングと同じ模様が施されたグローブが嵌められていた。

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