リボーン複数主 | ナノ


▼ 標的169

ターバン男のこちらの死を望む言葉を受けて、何もしないと言うわけにもいかず、各々武器を構え、来る攻撃に備えた。その中で、獄寺と山本は何故味方であるはずのミルフィオーレの仲間とその匣兵器を喰らったのかと疑問を零した。了平が猛者だと評する男、ニゲラと共にこの場で迎え撃たれていたら、敵ながら、楽に勝てていたかもしれないというのに。
しかし返ってきたのはこちらをバカにするような高笑いと、相手を見下すような言葉。どうやらターバン男にとってニゲラは味方、仲間ではないらしい。ターバン男は白(ホワイト)スペル、ニゲラは黒(ブラック)スペル。ターバン男の考えは、ホワイトスペルは優れた側、ブラックスペルは古く腐った劣っている側というものらしい。見下している相手だからこそ、死んだところでどうということはないということだった。

「劣る者が優るる者に搾取されるは世の理。古く黴臭い貴様らボンゴレも、我らの餌にすぎぬ。」
「んだと!」
「は?」

その話の流れから、ターバン男は古くから続いているボンゴレのこともバカにしてきた。男の言葉は、まるでボンゴレがあの男が与するミルフィオーレよりも劣っているとでも言うかのようなもので、咄嗟に獄寺と由良の口から怒気を含んだ声が漏れた。山本、くるみも黙ってはいるが、男の言葉には静かに怒りを覚えていた。

「どうやら、ミルフィオーレ内部も相当いざこざっているようだな…」

そんな中、一番最初に動き出したのは了平だった。背負っていたラルを近くの壁にもたれかけ、やる気満々という顔で振り返る。

「なっ!お前戦う気かよ!ここは俺にやらせろ!!」
「神崎、川崎、ラル・ミルチを頼む。」

獄寺が静止する声を上げるが聞いていないようで、自分が戦う間ラルを頼むと由良とくるみに声をかけた。2人は顔を見合わせ、獄寺のように止めることなく頷いた。

「おい!」
「悪いなタコ頭(ヘッド)。もう遅い。」
「!!」

無視されたことに憤り声を荒げた獄寺に短く返した了平の手には既に開いた匣と、眩く光る晴の炎の光。それを認めるより先に獄寺と山本の間を凄まじい勢いで何かが飛び出し、突風が吹く。一直線にターバン男のツチノコ、嵐蛇(セルベ・テンペスタ)に向かっていったソレは、頭に直撃した。図体が大きい分、突然の衝撃に耐えきれなかった嵐蛇(セルべ・テンペスタ)が背後に倒れ込み壁に激突するのに対し、攻撃を仕掛けた方はクルクルと数度空中で回転し、ダァンッと土煙と共に大きな音を立てて着地した。同時に了平が並び立つように前に出る。

「あれが、先輩の…」
「アニマルタイプの匣兵器…」
「すごい迫力…」

土煙が晴れていき、その姿が顕になっていく。初めて目にする了平のアニマルタイプの匣兵器に、獄寺、山本、そして知っていたもののくるみもその気迫に思わず言葉が零れる。後輩らの言葉に答えるように了平はそうだ、と頷いた。

「こいつこそが、我が道を貫く漢の匣兵器…極限無比なその名を!!漢我流!!」

了平の言葉に合わせるかのように土煙が完全に晴れ、その姿を現した。
茶色のふわふわとした体毛に覆われた二足立ちの動物の姿。尖った片耳、短い前脚、体を支えるために太くなっている後脚にも所々に包帯が巻かれている。そして全身にちらほら見える古傷の跡。太く長い尻尾の先には晴の炎がきらりと揺らめいている。
鋭い眼光を持つカンガルーが了平の隣にどん、と佇んでいた。
了平の名前を聞き、そして姿を目にした山本がイカスな!と嬉しそうに反応を示す。獄寺、由良は了平のネーミングセンスが思ったよりも普通なことに驚いていた。その隣で名前の漢字も知っているくるみは何も言う事ができずにそっと目を逸らした。

「貴様の相手はこの俺だ!バイシャナ!!」
「ほほう、ボンゴレの晴の守護者の匣兵器は飛んで跳ねるカンガルーか。」

いちいち鼻につく言い方するヤツだな…!
威勢よく宣言した了平に対し、ターバン男、バイシャナは怯む事なく、むしろ了平の匣兵器であるカンガルーをバカにするかのような発言をした。空飛ぶ絨毯に乗り、こちらを見下ろす位置にいることも関係してか、余計にこちらを見下しているように感じられ、由良心の内で悪態を吐く。

「限りなく哀れなり。汝の匣兵器で嵐蛇(セルべ・テンペスタ)を倒そうなどと千年早し。」
「何!?」

バイシャナの相手を見下すような言葉は尚も止まらず、その言葉を挑発と捉えた了平は言い返そうと反応を示すが、了平が言う前にバイシャナからまだ分からぬのか、と落とされる。どう言うことか、と疑問に思う間もなく、バイシャナは続けて先程のカンガルーの攻撃を嵐蛇(セルべ・テンペスタ)はわざと受けたのだと言い、匣兵器を見てみろと皆の視線を了平の匣兵器、漢我流に誘導した。

「ガアアアアアッ!」
「!我流!」

同時に、漢我流の全身が嵐の炎に包まれ、苦しむ悲鳴が聞こえた。了平がすぐに声をかけるが、漢我流は耐えきれなかったのかその場にばたりと倒れてしまった。駆け寄った了平が漢我流に大丈夫かと声を掛けるが、返ってくるのは苦しみに悶え呻く声と姿だけだった。

「くるみ、あれどういうこと?」
「わ、私もそこまで細かくは…」

突如漢我流を襲った嵐の炎。それまでバイシャナは漢我流に攻撃を仕掛けた様子もなかった。一体どういう仕組みなのか、由良はくるみに小声で聞いたが返ってきたのは分からないという回答だった。くるみも細かく覚えていなかったので、由良に答えつつも一体どういうことだろうかと目を白黒させていた。
そんな2人の疑問に答えるように、バイシャナが説明を始めた。どうやら漢我流が開匣と同時に飛び出した時に攻撃した嵐蛇(セルべ・テンペスタ)のウロコには嵐の炎が吹き出していたようで、触れるだけで嵐属性の特徴である”分解”によって体が破壊されるらしい。つまり漢我流は最初の攻撃でウロコに触れてしまい、逆に分解によって体が破壊させていたのだ。

「汝のカンガルーはもう動けまい。」

勝利を確信したバイシャナが了平と倒れたままの漢我流を見下ろし、ほくそ笑んだ。

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