リボーン複数主 | ナノ


▼ 標的168

作戦の大きな目的である主要施設、白くて丸い装置の破壊のため、先に進む一行は、敵を鉢合わせる事なく順調に目的地に近づいていた。端末にインプットされていたルート内のダクトを通り、目的地付近の廊下に出たところで、意識を失っているラルを背負った了平がフーッと息を吐いた。

「ダクトは細くてかなわんな。」
「お疲れっス。次に横切る展示室ってのは広いっスよ。」

体格が良いため、ラルを傷つけないように狭いダクトを進むのはなかなか骨が折れるようで、ぼやいた了平に山本が労いの言葉をかけた。山本の言葉に己の端末で現在地とマップを照らし合わせていると、ちょうど横切ろうとしていた展示室の方向から人の気配を感じ、途端その場に緊張が走る。
山本を先頭に、皆音を立てず、展示室に近づき、入り口付近の壁に張り付いて様子を伺う。どうやら向こうもこちらに気づいているようで、気づかれているのなら隠れていても意味がないと、各々武器を手にし、展示室に飛び込んだ。

「はがぁっ!」
「!?」

しかし、彼らの前に現れたのは何者かに傷つけられ、全身の至る所から血を吹き出して倒れたミルフィオーレの男の姿。その者の刈り上げられた頭から顔にかけて入れられている刺青を見た了平が、倒れたのは鬼熊使いのニゲラ・ベアバンクルだと言い当てるが、そのニゲラは既に事切れてしまっていた。
敵地のはずなのに、自分たち以外にもミルフィオーレを討たんとする者がいるのか、はたまた何かトラブルでもあったのか。いずれにせよ、ニゲラを倒したのは一体誰なのか、という疑問は早々に解消されることとなる。

「待っておったぞ。」
「!」

考える間も無く聞こえてきた別の声。それは頭上から聞こえてきたため、視線を上に上げると宙に浮いた絨毯に座してこちらを見下ろす、頭にターバンを巻いた男がいた。男が座している絨毯の四隅には嵐の炎が灯っており、その炎によって絨毯が浮いているのだろう。そして男の首にはまるで首飾りのように匣が連なったものがかけられており、その色は暗い赤色で、恐らく男の匣兵器だろうことは容易に想像できた。

「我、汝らの血と肉を所望す。」

淡々と、しかしはっきりと告げられた男の言葉、そしてつい先程自分たちの目の前で息絶えたミルフィオーレの屈強な男を思い出し、由良とくるみはゴクリと固唾を飲んだ。
状況を把握しきれず、突然現れたターバン男に動揺しているのは皆同じだ。何故ミルフィオーレの人間が死んでしまっているのか。そして仲間であるはずのターバン男は何故こんなにも落ち着いているのか、疑問が尽きない中、ターバン男の背後にあるパネルの奥からゴキュッ、ボギッという気味の悪い大きな音がした。
明らかに何かいるというその音に、一体何かとパネルを注視していると、上から何かが落ちてくる。

「なっ…まさかあの爪は…!」
「く、熊の手…!」

遠くからでも、落ちた物が何か、そのシルエットは窺えた。長く太い毛に覆われ、先端は鋭く太い爪がついた手。誰かが熊の手だと断言したことで、ぼんやりと輪郭しか分からなかったそれも、はっきりと細部まで把握することができた。

「あんな、大きな手ってことは、熊も相当大きいんじゃ…」
「ていうか、熊ってことは、つまりあの人の、匣兵器ってこと…?」

今は消えてしまったが、直前まで熊の手には死ぬ気の炎が灯っていた。この状況下でただの熊がいるとは考えにくい。そのため由良は先程亡くなってしまったニゲラの匣兵器ではないかと推測した。
しかしその熊も恐らく既にやられてしまったのだろうが、くるみが気づいたように熊の手は非常に大きく、それであれば熊自体も大きいはずだった。その熊を最も簡単に倒してしまうほどの匣兵器とはどのようなものなのか。そう思ったのも束の間、パネルの向こうで何かが動き、パネルを壊していく。
ピシリ、ピシリと音を立ててヒビが入り、徐々に壊れていくパネルは、やがてバキッという一際大きな音を立てて完全に破壊され、倒れた。と同時に、何か大きなものが地面を叩きつけた。

「っ!」

衝撃で立ち込める土煙と、地面からくる大きな振動を堪えていると、その巨大な物の正体が明らかになっていく。

「大蛇!?」
「あの炎は…匣兵器だ!!」
「あれが、あの熊を…!」

土煙が晴れ、姿を現したのは嵐の炎を体に纏った巨大な蛇。その大きさは人間を丸ごと飲み込んでも余裕がある程の大きさだった。
そしてその蛇はやはりと言うべきか、仲間であるはずのニゲラの匣兵器である熊を喰らったらしく、満足げな様子で舌を出し入れしている。どうやらこの大蛇、嵐蛇(セルベ・テンペスタ)は他の匣兵器を食すことで強くなるらしい。ターバン男の説明を聞き、そんなことがあり得るのか、と皆が驚く中、獄寺だけは何故かそわそわと落ち着かない様子で、了平が気づきどうしたのかと尋ねた。

「どうしたじゃねえよ…!気づかねぇのか!?あのフォルムはただの大蛇なんかじゃねぇ!俺の遭遇したい生物ベスト8!日本が誇る幻の聖獣…ツチノコだ!!」
「いや状況!」
「え、もしかしなくても獄寺くんこの状況で感動してる…?」

いやに興奮した様子で熱弁する獄寺に、思わず叫んだ由良と、困惑し半信半疑ながらも窺い見るくるみ。しかし獄寺に2人の言葉は届いておらず、獄寺の様子にそういえば、と思い出したかのようにツチノコがこの時代の3年前に発見されたと言う情報を了平が伝え、それどころではない様子だった。

「やはり最新の匣兵器か…」

そして了平は獄寺の様子と、自分が伝えたツチノコの発見時期から、ターバン男の持つ嵐蛇(セルベ・テンペスタ)が最近作られた匣兵器だと悟った。ターバン男はその言葉に特に反応を示さず、先程と同じボンゴレの死を望むと言う言葉を静かに告げた。

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