リボーン複数主 | ナノ


▼ 標的166

ツナを見送った後、ここに留まっていては敵に見つかる可能性があるとし、すぐに移動しようとくるみ達も動き出した。しかし不調のラルはすぐに動く事が出来ず、座り込んだままだ。

「ラル・ミルチは誰かが運ぶ必要があるな。」
「………すまない。」
「じゃあ私が背負います!少しの間だけど、ラル・ミルチさんは、私の先生だし…!」
「くるみ…?」

力を使い過ぎたラルを休ませながら進む為に、誰かが背負って行く事になったところで、この時代に飛ばされてからずっとラルから師事を受けていたくるみが手を挙げる。その表情はどこか強張っており、隣にいる由良はくるみの思わぬ行動に驚き目を丸くした。

「断る。」
「えっ…」
「お前におぶられた状態で敵とかち合って、制御出来ない銃を乱発されたらたまらん。」
「!そ、そんな事しませんっ!」
「どうだかな…」
「ひ、ヒドイ…!」

しかしくるみの提案を断ったのは他でもないラル本人だった。ラルに断られ、更にその理由にガン!とショックを受けたくるみは反論するが、疑われたままで、聞き入れてもらえない。
ラルの真意は不明だが、このままではラルが折れることは無いだろうと結局了平がラルを背負う事となり、話は落ち着いた。ラルが頑なに自分に任せなかったことにくるみは不服そうで、拗ねたように頬を少し膨らませ、唇を尖らせていた。

「えいっ」
「ひゃっ…!あ、由良ちゃんっ…」
「あ、すごいくるみのほっぺめっちゃ気持ちいい。」
「すっごい唐突だね!?」

普段なら、こんな風に拗ねたりしないはずのくるみが、ここまで不貞腐れる事に違和感を感じ、更に言うならば、彼女の少し膨らんだ頬が自身の弟達が不機嫌になった時と同じものだったから、由良はなんとなく同じテンション感でくるみの頬に指を突き刺した。突然の事に驚いたくるみは戸惑いつつも声を上げるが、由良は気にする事なく彼女のすべすべな肌触りの良く程よい弾力のある頬の感触に感動を覚えていた。
すごい、弟達と同じだ…!
ゆっくりと、だが一定の間隔で頬を指で押され、くるみは耐え切れなくなり由良から距離を取り、そのまま前を歩く獄寺と山本の列に混ざった。

「あっ…」

名残惜しそうな声を上げる由良に対し、酷く警戒したくるみはつい先程まで触られていた左頬を手で隠すように抑えながらじとっとした目で由良を睨んだ。その言動すらも、弟達と同じものだから、由良は謝るよりも先にくすりと吹き出してしまった。対するくるみは全く面白くは無いのでじとりと睨んだまま恨めしそうに由良の名前を呼ぶ。

「ごめんごめん。あんまりにも、弟達に言動が似てたもんだからつい…」
「笑いながら謝られても許してあげないもんっ。」
「お前ら遊んでんじゃねーよ!」
「遊んでないよ!獄寺くんひどい!」

笑いながらも謝罪をするが、くるみは許してくれず、しかし彼女が続けるより早く避難先として巻き込まれた獄寺が注意する。獄寺の言葉に遊ばれていたのは自分の方なのに、と引っかかったくるみは心外だと言わんばかりに獄寺に食ってかかるように反論する。そのまま口論に発展しようとする2人を宥めようと、山本が口を開いたが声を発する前にすぐ側で由良の声が聞こえ、止まった。

「ごめんね、気が利かなくって。」
「っ神崎…」
「山本が何か言いたそうにしてるの気づいてたけど、あの状況だったら友達の私の方が適任かなって思って。まあ一番はなまえだけど…」

くるみをいつもの調子に戻そうとしたかったのは、何も由良だけではない。山本も彼女をずっと見ていたから気にしていた。それは移動を始めてから由良もすぐに気づいていた。本来なら、くるみと山本の距離が縮まるだろうと山本に譲っていた役目だったが、くるみの様子から、きっと自分の方がいいだろうと判断し、行動に移したのだ。一番適任とされるのは、今はいない自分の大切な友人である彼女だが、自分で発した名前に少し苦しくなり、内心苦笑する。
くるみは自分の不安や悩みを言葉にする事を躊躇う性格だ。もし山本が話を聞こうとすれば、獄寺や了平がいるこの状況では何も言えず、逆効果になるだろうと考えて、由良は実行に移したのだ。山本に譲る事はせずに。それを山本は気づいていたのか、ケロリと気にしてないぜと返してくるものだから、逆に由良が驚いてしまった。
少しは気落ちするかと思ってたけど、思ったよりもくるみの事見てたんだ…
くるみを好きだと告白し、それ以前から行動でくるみを優先していた山本だが、由良はそこまで彼がくるみをしっかり理解しているとは思っていなかった。自分にくるみの弱い部分をさらけ出してほしいとし、動いているものかと思っていたのだが、その考えは改めるべきだと気づいた由良は、しかし山本を認めると同時に自分よりも彼女を知っているかのような山本に少し腹が立った。

「くるみのほっぺね、すごい気持ち良かった。」
「えっ…」
「ま、くるみのほっぺに触れるのは私かなまえくらいだろうけどね〜。」
「…………。」

ちょっとした仕返しのつもりで意地の悪い事を言ってみれば、明らかに動揺した山本の動きが一瞬止まり、次いでぎこちなくなった。
これくらい許してよね。
山本を動揺させた由良はその様子を見て満足気に笑った。

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