リボーン複数主 | ナノ


▼ 標的165

けたたましく鳴る警告音に包まれた室内で、ツナ達は敵に気づかれたのだと慌てふためいた。しかしすぐにラルから警備システムを急いで破壊するよう指示があり、部屋の奥に駆け出した。そして進んだ先の警備システムをなんとか破壊し、自分達が動きやすくするための第一段階はクリアできた。そのまま主要施設の破壊に移ろうと山本が先行し動こうとしたが、獄寺から待ったがかかる。どうやら先程途中で終わってしまったラルが話さなかったアルコバレーノの謎について聞き出したいようで、山本の肩に手を置いて山本が逃げられないようにしていた。

「なんでお前が知ってんだよ。」
「ちょっ…!獄寺くん今はそれどころじゃ…」
「約束でさ。」

ラルが話そうとしなかった、しかしその内容は想像出来ない程残酷で、ひどく重いアルコバレーノの謎について、いくらラルを心配しているからと言って、敵に勘付かれた以上今は悠長に話をしている暇はない。それに、ラルが話そうとしなかったのは、話したくなかったからということも理由に含まれているのではないかと考えたくるみは、少し慌てて獄寺と山本を引き離そうとしたが、それよりも早く山本が短く答えた。

「修業が終わった時、小僧が教えてくれたんだ。」
「なっ!」
「リボーンが!」
「こいつはたまげたな…俺だって師匠には聞けずじまいだったのに…」

山本から聞いた内容に予想していなかった人物、リボーンの名前が出てきたことに驚いたツナ達は驚き、声を上げるが、だからと言って、山本はリボーンとの約束でこの作戦が終わるまでは話せないのだと続けた。それに獄寺はリボーンが自分よりも先に山本に教えたことに悔しがり、しかしリボーンが言うのなら、と顔を顰めながら引き下がった。その様子にホッと、安堵の息を零したくるみを横目で見ていた由良は、自分も知りたいという気持ちをグッと堪え、じゃあ早く行こうと次の行動に移すため声をかけた。

「お前たちだけで行け。」

しかしそれに返ってきたのはラルによる戦線離脱の言葉。進もうとしていた一行は踏み出しかけた足を止め、ラルに視線を向けた。彼女は自分達とは違い、壁に寄りかかるようにして地面に座り込んでいた。体調が悪い中、ジンジャー・ブレッドとの戦いで力を使い過ぎてしまったラルは、言葉にはしないものの、休養が必要だった。しかし作戦は敵に気づかれたからこそ迅速に遂行しなければならない。そのため、自分は後から行くからと心配するツナ達を突っぱねた。

「いいから行け。足手まといになるのはごめんだ…」
「ダメだ!!」
「ダメです!!」

しかしラルの言葉に頷いた者は誰1人としておらず、全員がラルと共に行く道を選んだ。元々ラルは体調が悪かったこともあり、獄寺も想定内だと当然のように言い、ツナはそういった予想等はとっぱらい、ただ仲間が誰1人欠けることなく一緒に作戦を成功させて帰るんだ、と力強く言い切り、その姿に、ラルは言葉が出なかった。

「!メインルートのゲートの封鎖が始まった…!」
「シミュレーションしていた敵の行動パターンの一つだな。」

警告音が止み、次いで進もうとしていたメインルートの要所要所にあるゲートが次々と封鎖され始めたことに気づいた由良が短く声を上げれば、続けて了平が冷静に零す。メインルートのゲートが封鎖された場合、本来ならばツナ達が移動しやすいよう、ラル・ミルチが囮役をする予定だったが、と言葉を止めたところで、皆の視線はくるみに大丈夫かと声をかけられているラルに向く。座り込んでいる彼女の様子を見て、とてもその役目を負うことは出来そうにない。

「あ、あの…俺がその役やります。」
「ツナ!」
「10代目!」

ラルの代わりをどうするのか、話し合う前に自分がと名乗りを上げたのはツナだった。元々ラルが囮役として選ばれたのは機動力が必要だったから。ラルが動けない以上、ラル以外のメンバーで機動力が一番高いのはツナだからと、自ら理由をつけて説得するツナに、獄寺は危険すぎると反論する。しかしツナは獄寺の言葉を押し切り、後で落ち合おうと獄寺にラルを託す言葉をかけた。尊敬するツナにそこまで言われてしまえば、獄寺もこれ以上反対することはできないと頭を悔しそうに掻きむしり、自分を納得させた。

「何かあったら無線で呼んでください!テレパシーでも!!”右腕”がすぐに馳せ参じます!!」
「あ、ありがと…イテテ!」
「テレパシーて…」

ツナの肩を強く掴み言い聞かせる獄寺に、ツナは素直にお礼を述べ、その横で由良は呆れたように言葉を零した。しかし、気持ちは獄寺と同じように、危険な場所にツナを1人で向かわせるこの状況に、もどかしさを感じていた。その気持ちを押し殺し、あまり口を挟むことなく静観する由良を他所に、ツナは了平から端末にインプットされてあるルートに沿って進み、B10Fで敵をくい止めるよう説明を受け頷いた。
無事だと、分かってはいるけれど…
ツナの代わりに自分がとはとてもではないが言えなかった由良は、グッと拳を強く握るしかできなかった。そんな彼女の手を、そっと小さな温もりが包み込む。

「くるみ…」
「さっきのお返しっ。」
「ありがと…」

ラルがジンジャー・ブレッドと戦う際、震えていたくるみの手を握った由良と全く同じことを、今度はくるみが由良にしていた。自分もツナやラルを心配し、不安な気持ちは変わらないはずなのに、それよりも由良のことを優先し、悟らせないように接するくるみの優しさに触れ、不安や焦りといった心が落ち着いてくる。

「じゃあいってくる!!」

そうしている間に、ツナは一言残して端末のルート通りの道へ駆けて行った。山本や獄寺が声をかける中、由良は何も言えず、ただ黙って小さくなっていくツナの背中を見送ることしかできなかった。

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