リボーン複数主 | ナノ


▼ 標的162

人気の無い、早朝の並盛町を駆けていく中、ツナ達は昨夜パーティー前にビアンキやジャンニーニ、リボーンらと作戦決行前の最終確認と情報共有をしたことを思い出していた。
ビアンキとフゥ太が危険を承知で敵アジトが並盛ショッピングモールにあることを掴み、今は生死すら不明の恐らく骸だろうヒバリの元にアジトの図面が渡り、そのお陰でアジトの正確な位置やアジト内のおおよその見取り図も完成した。その事で、この作戦でアジト内の随所にあるダクトを使うことが安全がと言うことも分かった。
そしてジャンニーニが新たに作成したリングの反応を敵に知らせないようにするための装備、オートマモンチェーンリングカバーと言う自動でリングを使わない時にフタが閉じて力を封じるものと、各個人間でやり取りが出来るように盗聴や雑音の対策万全の無線もそれぞれに渡された。昨夜の時点では作戦に参加する予定のなかった由良の分も揃っていたのだから、準備万端だ。
さらにリボーンの相棒、レオンも人数分の死ぬ気の炎に耐性のある糸を生成し、リボーンによって服が用意された。これも由良の分も揃っており、リボーンの用意周到さ、そしてまるで未来でも見えているかのような対応に末恐ろしいものを感じた。

「こっちよ。」
「!ビアンキ!」

敵アジトに通ずるダクト近くのショッピングモール地下駐車場を駆けていけば、そのダクト前にはビアンキが見送りに来ていた。危険な所だと重々承知のはずなのに、それでも京子達のことは安心して任せろというビアンキの激励に後押しされたように感じ、力強く頷いた。

「由良、くるみ。」
「!」
「えっ…」
「貴女達も、もしなまえがこちらに来る事があれば私が守るから、安心しなさい。」

今まではずっと意地を張って聞く耳を持たなかった獄寺がビアンキと話をするという姿勢を見せている、言わば家族の時間を邪魔しないようにと横切ろうとした由良とくるみを呼び止めたのはビアンキその人で、獄寺が先に行く中ビアンキに言われた言葉に2人は揃って目を大きく見開いた。そんな2人の目に映るのは、こちらを安心させるようなビアンキの柔らかい笑み。
彼女の言葉の通り、それだけで逸る心が落ち着いていき、安心してきた。そんな2人の口角が自然と上がる。

「分かりました!」
「なまえちゃんの事、お願いします!」

いってきます!と元気よく声にして様子を見ていた山本が待つダクトに向かって走っていく後ろ姿をいってらっしゃいと見送ったビアンキは、ダクトが閉まるまで、その場から動かなかった。
そんなビアンキに見送られた一行は狭いダクトを潜り抜け、敵に気づかれてしまい予定していなかった場所に落ち、更にアジトに侵入されたと気づいた敵の1人とかち合うも、ツナの新たな技、X BURNER(イクスバーナー)によって難なく乗り切った。敵に勘づかれるという予定外の事が起こったものの、ツナ達は慌てる事なくジャンニーニから受け取っていた端末に入っている地図を頼りに、自分達が自由に動けるよう最初に破壊する予定の警備システムがある地下8階に辿り着いた。
しかし目的地までは図面を見る限りまだ先にあり、全員敵に見つからないよう慎重に行くべきだと結論づけ、場馴れしているラル・ミルチを先頭に、警備システムのあるセキュリティルームに向かった。

「基地内の敵の数が想定していたよりも大幅に少ないな。ヒバリの囮は効果絶大なようだな。」

驚きと感嘆を併せたように声を零したラル・ミルチの言葉通り、警備システムに着実に近づいていた一行は敵に見つかることも敵を目にすることも一切なく、順調過ぎるくらいに進んでいた。漸く見つけた敵も1人だけで、すぐにラル・ミルチが気づいたことで身を物陰に隠しやり過ごせた。
皆の想像以上に、敵はヒバリの囮と罠に嵌ってくれていたらしい。しかしこれだけ敵の数が減っているということはつまり、それだけヒバリへの負担は大きくなる。ラル・ミルチの言葉を受けてヒバリを案じたツナは心配し、顔を曇らせた。

「心配いらん!未だかつて、アイツが死んでいる所は見た事がないからな!」
「どんな理屈だ!」
「逆にストレス発散してんじゃない?」
「確かに!恭弥くん群れてる人達の所に行くのは嫌がるけど、その人達ボッコボコにするのは楽しそうだし…」
「それもそれでどうかと思うけど。」

了平のよく分からない励ましや、由良、くるみの言葉に先程まで心配のあまり強ばっていた表情も和らいでいくツナ。了平の言葉は分からないが、由良やくるみの言った内容には確かにと納得出来る部分もあり、逆に想像出来すぎて乾いた笑いが零れた。

「お前らどこでも遊ぶんじゃない!早く図面を確認しろ!」
「スマン…」
「すみません…」
「ごめんなさい。」

そんな折、傍で聞いていたラル・ミルチの叱責が飛び、皆素直に謝り図面を見て自分たちがいる位置を確認する。そして図面の通りに敵との鉢合わせを避けながら進んでいけば、警備システムがある部屋の前まで辿り着いた。
索敵機能の根幹とも呼べるはずの警備システムは、セキュリティがしっかりとしているからなのか、部屋付近には誰もいなかった。

「この奥に警備システムがあるんスよね?」
「どうする?」
「俺が先行する。合図をしたら来い。」

開いていた扉の隙間から見えにくい中を伺いながら小声で山本と了平が伺うように言えば、先頭にいたラル・ミルチが名乗りを上げた。そのまま彼女は止める間もなく警戒しながら室内に入り、室内を確認して問題ないと判断し合図を送った。

「!待て!!」

しかし、室内に踏み入れようとする前にラル・ミルチの鋭い声がかかり、踏みとどまらせる。室内の様子が分からないツナ達は困惑し、何があったのかと問うが、返答はなかった。

「そこか!!」

その代わりに、再びラル・ミルチの鋭い声が聞こえ、次いで大きな爆発が立て続けに起こる。敵の襲撃を受けたのか、と思わず飛び出していくツナ達はすぐさまラル・ミルチに駆け寄った。彼女は掠っただけだと負傷した腕を庇っている。

「ランダムに増え続ける標的の規則性を見破り、間一髪のカウンターをくらわせるとは…さすが、アルコバレーノのなりそこない。」
「!」

そんな彼らの頭上から、突如声が降ってきた。見上げると、そこにいたのはまるで魔法使いと思わせるようなトンガリ帽子を被った少年がふわりと浮いた状態で佇んでいた。彼がパチンと指を鳴らした事で室内に灯りが点き、少年の姿をツナ達も認識する。
皆その風貌に魔法使いか、と驚きの声を上げるが、ラル・ミルチは相手を知っているようで、相手の名前を言い当てた。彼はジンジャー・ブレッドというらしく、今はミルフィオーレ第8部隊隊長をしているとの事だった。

「しかし驚いたな。まさかこんな所まで敵の侵入を許すとはね。」

全く驚いたようには見えないが、思わず零したかのように呟いたジンジャー・ブレッドはそのまま上にツナ達の存在を知らせる義務があると続けた。

「まあ先に殺してしまうのも悪くないけどね。君のコロネロみたいにさ♪」
「!」

さらりと恐ろしい事を言ってのけるジンジャー・ブレッドの最後の言葉は、まるでラル・ミルチに向けて言われたもののようで、含みを感じさせた。

prev / next

[ back to top ]



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -