リボーン複数主 | ナノ


▼ 標的160

決戦前日の独特の雰囲気は、ボンゴレだけでなく、ヒバリが率いる風紀財団の地下アジトでも同様だった。と言っても、こちらはパーティーだとはしゃぐボンゴレと違い、幾分か落ち着いていており、ヒバリや了平、ラル・ミルチや草壁が決戦前日の最終確認や、当日の作戦、それぞれの行動について酒を飲み交わしながら話していた。
話す中で、了平とヒバリがいれば話が合わず何度か言い合い(厳密に言えば了平がヒバリに突っかかるだけだが)になることは数度起こり、その度草壁が了平を抑え止めていた。

「盛り上がってるな。」

ラル・ミルチが己の体調を顧みず、作戦に参加すると言い、心配する了平とは対照的に死にたければ死ねばいいと冷たく言い放つヒバリに対し、突っかかる了平を止める草壁という図が出来上がった頃、甚平に着替えたリボーンが遅れてやってきた。しかし騒がしいのはツナ達で慣れているのか、止めることもせずに自分を呼んだ草壁に明日の突入作戦のシミュレーション結果を聞いてくる。それに了平も落ち着いたのか体勢を戻し、シミュレーションについて説明する草壁の話に耳を傾ける。

「成功率、わずか0.0024%。」

そして草壁から出たのは絶望的な数値。
流石にこの結果をツナ達に伝えれば士気に関わるとし、黙っておくよう伝えるラル・ミルチ。了平も頷き、今更ショックを与える必要はないと言い、草壁も同意する。

「ってより、無意味な数字だな。」

しかし、その直後にリボーンからの言葉に3人は驚き息を呑む。そんな3人を放って、リボーンは言葉を続ける。

「完成されたプロなら戦闘力や可能性を数値化することに意味があるだろう。だが、伸び盛りのあいつらを計算に当てはめるなんて馬鹿げてると思うぞ。数値化できねーところに、あいつらの強さはあるからな。」

自信に満ちた表情で、はっきりと断言したリボーンに言葉を失う面々。ヒバリのみ、聞いているのかいないのか、静かにお猪口を煽る。

「んじゃ、俺はそろそろ行くぞ。あっちで激励パーチーがあるからな。」

散々振り回したリボーンは言うだけ言って軽い調子で出て行った。
自分がいなくなった後の室内は確かに、と納得したように先程の緊張感溢れる空気が和らいだのを肌で感じ、フッと軽く笑ったリボーンは、このアジトに来てからずっと感じている見知った気配の人物がいる場所へと足を進めていく。

「ちゃおっス。」
「ひっ!ちゃ、ちゃおっス…?り、リボーンくん…!?」
「久しぶりだな、なまえ。」
「ひ、久しぶり…?」

目当ての部屋に早々に辿り着き、音もなく襖を開けたリボーンは、室内で忙しなく動く人物に声をかけた。全く気づいていなかった相手、なまえはひどく驚き声のする方へ振り向くと、予想外のリボーンの登場にさらに驚いた。リボーンはそんな彼女の様子を気にすることなく軽く挨拶をすれば、戸惑いながらも返ってくる。

「やっぱりヒバリが匿ってたんだな。」
「えっ…?」

ぴょいっとなまえが作業をしている台所の椅子に飛び乗ったリボーンは戸惑い、訳が分からないと言いたげな表情のなまえを真っ直ぐ見上げる。

「群れるのが嫌いなヒバリなら自分のテリトリーに他人を呼ぶことは滅多にないことは分かるが、戦闘狂と言われるほど戦うことを好むアイツが、ほぼ同じ時間にツナとの戦いを切り上げてここに来るのは逆に不自然だ。ツナはまだお前の事に気づいてはいねーが、変なタイミングで戦いを切り上げるヒバリに違和感は感じてたぞ。」
「……………そ、そうだったんだ…?」
「ついでに今このアジトに来ているラル・ミルチって奴も気づいてたぞ。」
「う、うん…」

未だ戸惑っている様子の彼女に律儀に己の推測や事実を説明するも、やはり理解が追いついていない様子のなまえは生返事で頷いた。

「ツナ達のことはヒバリから聞いたのか?」
「え、っと…うん。聞き流そうとしたら、すぐにバレちゃって…」
「そうか。」

いくら理解が追いついていないとはいえ、ここが自分の知る時代の場所ではないことは知っているはずのなまえがヒバリ以外の知り合いに会ってもすぐに落ち着いた様子から、ヒバリから粗方の事情は聞いているだろうと推測し聞いたリボーンは頷いたなまえに内心溜め息を吐いた。どうやら自分が思っている以上にヒバリは彼女に執着しているらしい。
もはや恋愛の域を超えているな、と呆れているリボーンとは反対に、なまえは非常に焦っていた。
何も誤魔化さずに素直に頷いちゃったー!!
ヒバリは元から隠すつもりもない、というか隠すとなまえの逃げる口実に繋がるので常にオープンにしていたのだが、それはリボーンの考えと反するものだ。きっと今も余計なことを喋ってないか、と考えているのだろう、と勝手に思い違いをしているなまえはドキドキと焦りや緊張で脈打つ心臓を必死に抑えながらどうしようかと解決策を考えるも、ちっともいい考えが思いつかず、頭を抱えたくなった。

「まだあいつらは残ってるから、焼くのはもう少し待ったほうがいいぞ。」
「えっ…?」
「じゃあな。」
「あっ…」

詰められるんじゃないかというなまえの心配をよそに、ぴょんっと椅子から飛び降りたリボーンは詰めるどころか見つからないような助言を残してそのまま去っていった。この短時間で何を言われるのかとビクビク怯えていたなまえは拍子抜けし、大きく息を吐いた。

「ちょっと、休憩しよう…」

気持ちを落ち着かせるためにも、そして、ラルだけでなく了平に気づかれないようにするためにも、リボーンの助言に従い、本日の夕飯であるヒバリリクエストのハンバーグを焼くのは後にして、つい先ほどまでリボーンがいた椅子に腰掛けた。

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