リボーン複数主 | ナノ


▼ 標的159

ミルフィオーレファミリー日本支部突入が決まってから4日後。
いよいよ、翌日に作戦決行の日が迫った中、ボンゴレの地下アジトでは殴り込み前日ということもありどこかいつもより雰囲気が異なっていた。京子やハルといった、作戦決行を知らない面々はビアンキらに言われるままに豪勢な夕飯を作ろうと腕を奮っており、作戦決行を明日に控えたツナ達はいよいよということで気合が入っている。

「由良ちゃんっ!」
「くるみ。」

そんな中、作戦のためにここ数日修業に明け暮れていたくるみは、クロームの看病をしている由良がいる医務室を訪れていた。少し声を落としながらも数日前の悩んでいた姿は何処へやら、元気よく入ってきたくるみに、由良は軽く手を挙げて歓迎する。

「クロームちゃんの様子はどう?」
「この前よりも随分落ち着いてきたよ。もう少ししたら目を覚ますと思う。」
「そっか。よかった…」

医務室に来る度に確認するクロームの様子は、昨日までと比べて随分落ち着いており、由良が伝えた通り、もうすぐしらた目が覚める程度には回復していた。本来であれば、1人で失われた内臓を補い、回復していたクロームだが、今回は由良の力を借りるというイレギュラーが起こっていることもあり、少し心配していたくるみは順調に回復していることにホッと息を吐いた。
そんなくるみに、由良がいよいよだね、と声を掛ける。それにくるみもうんと頷いた。

「修業は順調?」
「うーん、どうだろう…」
「あぁごめん、聞き方間違えた。」

由良の質問に歯切れ悪く答えたくるみに、そういえばそうだった、と彼女の性格を思い出し一言断りを入れ、あらためて口を開く。

「解決策は見つかった?」
「!うん!それなら大丈夫!」
「ならよかった。」

自己評価がすこぶる低く、自分に厳しいくるみに、修業は順調か聞いたところで、彼女のハードルを考えると答えはどうしても濁される。そのため、医務室に入ってきた段階で分かってはいたが、新しい武器を使うことになりずっと悩んでいた彼女に、その悩みはなくなったのか聞いた方が、彼女の修業の成果は分かりやすい。現に、にこりと笑って元気よく答えたくるみは嬉しそうにしており、順調なのだろうということが窺えた。

「そういう由良ちゃんだって、ずっと修業してたんでしょ?」
「うん。できる範囲で、だけど。まあなんとか、イメージはついたかなって感じ。」
「そっか!」

知りたいのはお互い様のようで、くるみも由良がこの部屋でクロームの幻覚を補いながらも雪の炎を使った修業を続けていたことを知っていた。そしてそのことについて問えば、彼女にしては珍しく少し自信のあるような回答を得られ、自分の事のように嬉しくなったくるみは笑顔で頷いた。

「あ、そういえば、オオカミさんの名前決まった?」
「あぁ…うん、まあ…」
「えっ!本当!?教えて教えて!!」

少しして、そういえばと思い出したのは4日前、初めて自分の匣アニマルと出会った頃のこと。ミーティングルームに飛ばされたくるみと異なり、戦闘真っ最中の黒曜に飛ばされ、初めての匣アニマルと息を合わせて闘った由良だが、その匣アニマルにまだ名前をつけていなかった。流石に数日経ったのだから、決めているだろうと思い聞いてみれば歯切れ悪くも肯定の答えが返ってきた。すかさず知りたいとずいと身を乗り出し聞いてみれば、暫く無言が続く、

「………………ロン。」
「ロン?」

少し言いにくそうに、小さくも聞こえてきたその言葉に一瞬目をぱちくりと丸くさせたくるみだが、ぎこちなく頷く由良を見てすぐにぱあっと嬉しそうに顔を綻ばせる。

「すっごくいい名前だね!ロンちゃん!」
「あ、うん。ありがと…」

自分よりも嬉しそうにはしゃぐくるみに、少し気恥ずかしい思いをしながらも小さく笑う由良。2人はそれから他愛のない話をしてそろそろ行くね、と言ってくるみが部屋を出たことで別れた。明日はいよいよ作戦決行ということだったが、2人の会話の中になまえの話題が出ることはなかった。

「くるみ?」
「!武くん…!」

結局、話せなかった…
医務室を出て、考え込みながら少し歩いたところで、1人でいた山本と遭遇する。よっ!と軽く返した山本にどうしたのか聞けば、そろそろ夕食だからと呼びにきてくれたらしい。お礼を言って、2人でダイニングルームまでの道を歩く。

「いよいよだな。」
「うん、そうだね…」

少しの沈黙の後、山本から声をかけられ、静かに頷いた。先程由良と同じやりとりをしていたのに、先程と違いひどく落ち着いている自分に心の内で驚きながら、修業はどうかと尋ねてくる山本にまあまあかな、と答えていくくるみ。しかしまたも由良に対しての答えと違うことに驚いた。
どうしてだろう…

「みょうじも、取り戻せるな。」
「!………うん。」

疑問に思っていると、山本から投げかけられた言葉にさらに驚き、ゆっくり頷いた。先程、由良と話す事のできなかったなまえの話。

「どうなるか、分からないけど…漸く、なまえちゃんを殺した原因のミルフィオーレを相手できるんだって、思ったら、ちょっとテンション上がっちゃったっ。」

苦笑を交えて話すくるみに、山本は何も言わず黙って聞いていた。

「過去のなまえちゃんのことについて、何か知ってるかは分からない。教えてくれるとも限らない。けど、この作戦が成功しないと、なまえちゃんの事を知っているかどうかも分からないままだから、頑張るねっ!」
「そっか!俺も頑張るぜ!」
「うんっ!」

数日前と違い、前向きな言葉を言って、意気込んだくるみ。笑顔で話した彼女に対して、自分もと同じように笑顔で頷いた山本に、大きく頷いたくるみはみんなが待っているから早く行こうと言う山本の後を追って少し急いだ。

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