リボーン複数主 | ナノ


▼ 標的158

暗い空間が広がっている。
歴史的建造物の残骸か、コンクリートというよりも大理石のような柱がいくつも並ぶ回廊は、暗いからか、それとも瓦礫が散乱しているからか、寂れ、どこか物悲しさを感じさせた。そんな中を歩く少女の前に、何かの結晶が集まってくる。それらは形作ろうとしたものの、すぐに砕けた。
その様子に砕けた残りの結晶が風に導かれるようにどこかへ飛んでいく。それを追いかけると、気づけば少女の目の前にそびえ立つ大きな歯車のような円形の機械があった。

「!」

驚く少女を尻目に機械が動き出し、円形の蓋部分が開く。そしてあるものを機械の中に発見した少女は口を開く。

「何、これ…なんで、ここに、いるの…?」

疑問を呟きながら伸ばした手。しかしそれは機械に届くことなく誰かに弾かれた。

「近づくな!」
「!」

少女は弾かれたと同時に後ろに倒れ込むも、これまで誰もいなかった空間に人が現れたことに驚き、顔を上げる。見れば、赤髪の少年が立っていた。少女と同じ歳の頃のように思える。

「誰…?」

ヘッドホンを首にかけて眼鏡をした少年は少女の問いかけに答えることはせず、少女を弾いた手を上に持っていく。その手の動きに合わせて目を動かしたからか、気づいた時には目の前にいたのは少年ではなく、同じ赤毛の眼鏡をかけた青年に変化していた。

「!」
「ボス…」

ガバリ、と由良が飛び起きるのと、由良の傍に寝ていたクロームが呟いたのはほぼ同時だった。

「由良!」
「由良姉、どうしたの?」
「あ…」

飛び起きた由良に驚いたビアンキとフゥ太が駆け寄り問いかけるが、なんと答えるべきか分からず、言葉が詰まる。

「なんか、変な夢、見ちゃって…あんまり覚えてないんですけど…」

なんだったんだろう、今の夢…
結局うまい言い訳も思いつかずに、忘れたという体で誤魔化した。由良の言葉に未だ心配そうに、しかしどこかホッとした様子の2人を横目に、由良は1人思案する。
夢と言いつつも、妙にリアリティのあるものに感じた。しかし見ていたのはきっと自分とクロームだけだろうし、説明するにも不明点が多すぎて出来ない。
でも、たぶんアレって入江正一、だよね?
ずっと昔、前世で流し見していたアニメにチラッと出てきた覚えのある顔と似ていた青年を思い出す。敵であるミルフィオーレファミリーのボスは白蘭という真っ白な人間ということはくるみから聞いていたので違うと結論づけて、入江正一の風貌は把握している訳では無いが、なんとなく彼がそうなのだろうと自分で完結した。

「それよりも、すみません。寝てしまうなんて思ってなくて…」
「気にしないでよ。由良姉、これまでずっと気を張ってたでしょ?」
「朝から今まで、休んでなかったんだから、疲れるのは当然よ。」
「…………。」

自分が今の今まで寝ていた事に漸く気づき、ショックを受けた由良は2人の言葉に困ったように笑って返した。そしてそのまま2人から視線を逸らすように目をクロームに向ける。
眠っている彼女が起きる様子はなさそうだ。

「由良、もう少し休んでいたら?」
「そうしなよ。僕達が様子を見てるから。」

そんな由良を咎めることなく労わるように言葉をかける2人に、静かにそれは出来ないと首を振る。
2人が言葉をかけたのは、由良が寝ている間もクロームの容体が安定していたからだろう。本来なら、由良はこの場にいないはずなのでそうすべきなのだろう。しかし、ただでさえみんなより遅れていると感じている由良は、休んでいる間も惜しかった。
クロームが寝ている間も、できる事をと考えていた由良は死ぬ気の炎をリングに灯し、可能な範囲で修業していた。恐らく眠ってしまったのはそのせいだろうが、分かっていても、由良は止めるつもりなどなかった。
必ず強くなって、やっつけてやる…!
由良の瞳の中に、小さく、しかし非常に強い覚悟を感じ取った2人はそれ以上何かを言うことなく、顔を一度見合わせた後分かったと頷いて医務室を出た。

「!あ、ども!」
「武兄!」
「リボーン!」
「ちゃおっス。」

ビアンキとフゥ太が医務室から出たその時、たまたま由良とクロームの様子を見に来ていた山本とリボーンに出会した。思わぬ想い人との遭遇に嬉しそうに声を上げ、抱きつくビアンキの横で、山本とフゥ太が何故ここにいるのかについて話していた。

「由良姉はクロームさんの傍にいながら、死ぬ気の炎のトレーニングをしているみたい。」
「へぇ…」

クロームの容体は安定していると説明したフゥ太が続けて伝えれば、山本は感心したように声を上げる。クロームの内蔵を幻覚で補うため力を貸しながら、死ぬ気の炎もとなると、相当負担となるはずだ。それでも、少しでも強くなろうとする姿に、自分も頑張らなければ、と気持ちが高まってくる。

「山本、そろそろ行くぞ。」
「あ、おう!」

ふと、一瞬過ぎったものに、目を瞬かせているとビアンキから解放されたリボーンから声がかかり、我に返る。そのままビアンキとフゥ太に別れを告げ、次の目的地に向かった。

「なあ小僧、ひとつ聞いてもいいか?」
「なんだ。」
「くるみの新しい武器についてなんだけど…」
「そのことか。」

向かう道すがら、山本から出てきた問いは先程のくるみの事だが、中でも彼女の悩みでもあった新しい武器の事だった。リボーンも予想していたようで、軽く返してから恐らく、と言葉を続けた。

「未来のくるみがなるべく体の負担がかからないよう考慮した結果だろう。くるみの武器は、XANXUSが使っていた7代目の武器を参考に作られたもので、死ぬ気弾が使われていた。本来なら微弱な炎を使ってもその何倍もの威力に変わるようになっているはすだ。未来のくるみはそこに着目したんだろう。」
「どういう事だ?」
「くるみは、死ぬ気の炎を際限なく最大出力で出すと体に大きな負荷がかかる厄介な体質だ。だがそれだと戦いでは役に立たねぇ、お荷物でしかない。それはアイツも理解していたはずだ。たからこそ、炎の出力を抑え、体に負荷なく戦えるようあの銃にしたんだ。」
「!じゃあくるみが一番やらなきゃいけない事って…!」

リボーンのこれまでの説明を聞いた山本が何かに気づいたように顔を上げ、リボーンを見遣る。リボーンは山本に目を向ける事はせず、ああと頷いた。

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