リボーン複数主 | ナノ


▼ 標的157

所変わってボンゴレ地下アジトでは、山本がリボーンを連れて移動していた。
先程まで修業に専念していたのだが、ツナのいるトレーニングルームから轟音が聞こえ、他の者の様子を見に行く体で中断していたのだ。ツナの様子は見終わったので、次は近くにいるはずのくるみの様子を見に行くことにした。

「確か此処だな…」

教えられていた修業場所であるトレーニングルームに着いた山本は呟き、扉の前に立った。自動ドアのセンサーが感知し、そのままプシューと音を立てて開いたその先に進み、目を瞬かせた。

「っ…」

ドっと、大きな音を立てているのはくるみの銃口から。しかし以前まで彼女が使っていた銃とは音が異なる。加えて、よく見れば形も違っていた。
そしてその銃口から出ている弾はただの弾丸ではなくまるでビームのような光線。くるみはそのビームのような弾を左右それぞれの銃から小刻みに放ち、まるでツナのグローブのように使って宙を移動していた。しかしその表情は苦悶に満ちており、銃を持つ手も震えている。

「っくるみっ!」

思わず山本が叫ぶ。
しかし今までリボーンの伝手による改良された銃の最小化された発砲音に慣れていたくるみは、新しい武器の大きな音に耳がやられ、周りの音が聞こえていなかった。

「っ!たけ…!」
「くるみ!」

ツナを真似て、身体の向きを変えながらバランスを整えていたくるみはそうすることで幾分か余裕が生まれ、そして視界に山本を捉えてしまった。僅かコンマ数秒の余所見ですら、今のくるみにとっては命取りになる。
バランスを崩したくるみは体が傾き落ちかけたが、なんとか軌道修正しようと一発地面に向けて撃つ。その反動で体は天井に飛ばされる。すぐにぶつかる前に天井に向けても銃を撃とうとしたが、計算を見誤った。

「っ!」
「くるみっ!」

ガッ!と鈍い音を立てて天井にぶつかり、銃を離してしまったくるみは、度重なる大きな発砲音を至近距離で聞いていたせいか、三半規管が機能せず、そのまま地面に落下する。慌てて山本が呼びかけ駆け出した。
落ち、る…!
天井にぶつかった衝撃が強かったせいか、それともこの数時間の間で死ぬ気の炎を使い過ぎたせいか、はたまた銃を手放してしまったせいか、力が入らずただ落下する感覚を味わっていたくるみは地面に衝突するだろうことだけは分かっていた。そして分かっていたからこそまるで受け入れたように目をギュッと瞑る。

「っ………ギリギリッ、セーッフ!!」
「………………たけし、くん…?」

落下するかと思っていたが、どうやらその予想は外れたらしい。想像していたよりも随分軽い衝撃に、不思議に思い、恐る恐る目を開けた。そんなくるみが目にしたのは、少し焦った様子で、しかし笑顔で息を吐いた山本の姿。
目を丸くして見つめていたが、至近距離にある山本の顔に漸く状況を把握し、ボッと顔が赤くなる。

「ご、ごめんね!ありがとう!」
「ん!よかった!」

サッと飛び退いて、自分を受け止めてくれたらしい山本に言えば、先程とは違い、いつも通りの明るい笑顔で返された。恥ずかしくて直視出来なかったくるみは、まだ赤くなった顔を逸らしてどうしてここに?と問いかければ、皆の様子見だと足下から返ってきた。

「!リボーンくん!」
「ちゃおっス、くるみ。」

見ればそこにいたのは山本と一緒に様子を見に来ていたリボーンだった。驚くくるみにいつものように挨拶を返したリボーンはつ、とくるみが落とした見た事がない新しい銃に視線を向ける。

「新しい武器か?」
「あ、うん…ユキちゃんと一緒に未来の私が用意してたらしくて、さっきまで使い方をラルさんに教わってたの。」

くるみの返答になるほどな、と零したリボーンは、今はいないラルの姿を思い出す。指導者としては一目置いている彼女ならば、きっと問題ないだろうと小さく頷いた。

「苦戦してるみてーだが、モノに出来そうか?」
「うーん…たぶん?」

リボーンの問いに苦笑して返したくるみは、歯切れ悪く答えるしかできなかった。
ラルに銃の使い方を教わったくるみだが、今までのものと威力が増しているせいか、体が武器に釣り合っていなかった。このまま使い続けると、5日後どころか、今後にも支障が出るとされ、ラルとは只管体を鍛えることを優先した。そんなラルが、体の不調を理由に(明言はしなかったが)自主練をするよう言い部屋を後にしたことで、逸る気持ちを抑えられなかったくるみは、ツナやXANXUSの動きを思い出しながら銃を使ってみていたのだ。
しかし結果はラルが指摘したように暴発に近い威力に耐えきれず、まともに扱えるようになるのはまだ先の状態だった。その事実はくるみも痛感しており、立ち直りかけた心が再び焦り出す。

「出来ることするって、決めたのに…」
「そっか!なら頑張ろーぜ!」
「!武、くん…」

ポツリと呟いたくるみの言葉が聞こえていた山本が明るく言ってのける。驚き目を丸くしたくるみが見れば、ニカッと笑って返された。

「何も分からない訳じゃないんなら、やれる事をやるだけだろ?何かあったら俺も手伝うしさ!」
「……………。」

笑顔で話す山本に、くるみは暫く呆然としていたが、やがてハッと我に返り、ゆっくり頷いた。
そうだ。限られた時間の中でも出来ること、やれる事は全部やるって決めたんだから…。
グッと震える両の手で拳を作り、キツく握る。そして、覚悟を決めたような瞳で真っ直ぐ山本を見上げた後、山本と同じようにニッと笑った。

「ありがとう武くん!もうちょっと頑張ってみる!リボーンくんも、様子見お疲れ様!」
「おう!」
「じゃーな。」

くるみの笑顔と言葉に頷いた山本の肩に、地面にいたリボーンが飛び乗ってそれぞれ言葉をかけていく。これ以上は邪魔になるという配慮から、山本はそのままトレーニングルームを後にした。

prev / next

[ back to top ]



×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -