リボーン複数主 | ナノ


▼ 標的156

ツナとの修業を終え、自身のアジトに戻ってきたヒバリは、今も台所で己の為にせっせと食事を用意しているなまえに会いに行こうとしたが、敷地内に草壁のものでも、なまえのものでも無い気配を感じ、不機嫌な顔を隠すことなく振り返る。

「ちょっ、困ります!」
「ええい!どかんか!!」

途端騒がしくなる廊下に、眉間の皺が更に増えていく。暫く経たないうちにスパンと部屋の襖が勢いよく開き、騒がしい声の主がヒバリに何か言いたげな視線を寄越していた。

「ヒバリ!頼みがある。」
「嫌だ。」
「まだ何も言っておらぬでは無いか!」
「言わなくても分かる。聞く意味が無いから断ったんだ。」
「何ィ!?」

元よりそこまで高くない沸点を持つ相手、笹川了平が止める草壁を押しのけやってきたと思ったら、不機嫌なヒバリを前に頼みがあると言ってきた。しかし室内に入ってきた了平の後ろ、草壁がいる位置に草壁と了平以外に小さな気配が2つある事を感じ取っていたヒバリは了平が言わんとしていることを察し、断った。当然素直で真っ直ぐな性格の了平は、何も聞かずに断ったヒバリに良い気はせず、憤慨する。

「ならば拳と匣を交えるまで!!」
「僕は構わないよ。」

両の拳を構え、高らかに言い放った了平に、ヒバリは静かに同意する。一触即発の状態で止めるものは何もない!と言い切った了平に、横から待ったの声がかかる。

「先程から私が止めてます。くだらない理由で守護者同士がバトルなど、やめてください!」
「どこが下らぬ理由なのだ!俺は屋敷に入れるのにチビ達が入れないとはどういうことだ!?」

曲がった事が嫌いな了平らしい言い分だが、相手はヒバリだ。ヒバリを指差し抗議する了平の言い分に同意することなく嫌そうな顔を見せる。
そしてある気配を自身の背後で察し、不自然に思われないようにチラリと目を向けた。
一見すると、なんの変哲もない他の部屋と同様の襖だが、その奥にいる人物が誰なのか分かっているのはこの場でヒバリと草壁だけ。今は開いていないが、恐らく了平の大声に何かあったと気づいたのだろう、だんだんとこちらに近づいてくる。

「本当は君だって入れたくないんだ。君を見てると闘争心が萎える。」
「なんだと!?極限にプンスカだぞ!!」

了平に話しながら部屋の奥、襖の方へ歩いていくヒバリ。了平はその行動の意図に気づいていないようで、まだ腹を立てている。
しかし草壁はヒバリの行動が何を示しているのか察し、妥協案を提示する。

「分かりました。分かりましたから。私が向こうで子供達の相手をします。それで勘弁してください。」
「しょうがない。では1ラウンドだけだ。」
「僕は構わないよ。」
「ダメです!話し合いをしてください!!」

妥協案とはなんだったのか。草壁の案に同意したはずの了平とヒバリだが、特に了平はどうしても拳を交えたい様子で仕方ないと言いつつ吝かではないような表情で拳を再度構えた。ヒバリも軽く返しているが、その実後ろの気配の正体が気になって仕方がないため、後は任せたと言わんばかりに草壁を見る。子供達を宥め、なんとか了承を得た草壁はランボ、イーピンを抱き上げ、まだ戦おうとする了平を引きずってボンゴレのアジトに向かった。
引きずられる中了平はぎゃいのぎゃいのと叫んでいたが、草壁はヒバリを優先する男なので離すことはしなかった。

「(なまえさんとの逢瀬を邪魔してはどんな目に遭うか…)」

想像し、ぶるりと震えた草壁はボンゴレのアジトに向かう足を早めた。

「ただいま。偉かったね、なまえ。」
「あ、恭弥さん。おかえりなさい…今のって…笹川先輩、ですか?」
「うん。でも、君が気にする事はないよ。」
「あ、はい…」

一方で、部屋に1人残されたヒバリはずっと気にしていた自分の背後にあった襖を開け、その前で手を不自然に出して固まっているなまえを認め、頬を緩めた。なまえは驚き呆然としつつ、ヒバリの言葉に頷いた。
なまえがここにいる理由は、了平の声が台所まで聞こえ気になったからと、単純に、そろそろヒバリが戻る頃だろうと用意していた夕飯が出来上がった為だ。調理以外にも洗濯や掃除といった家事をしていたなまえは、少し早く家事が終わり、食事の用意が出来上がるとヒバリを出迎える為に入口付近の廊下に出ていくのだ。今ここにいる理由も、恐らくそちらの方が大きいだろう。

「それより、今日の夕飯は?」
「あ、今日は少しスタミナ付けられるハンバーグにしてみました!量が多いかもしれないんですが…」
「いいよ。お腹空いた。」

チラリ、と不安げに見上げてきたなまえを安心させるように伝えれば、ホッと息を吐いて返される。よかった、と胸を撫で下ろしたなまえはパタパタと小走りで最後の用意の為にヒバリより少し早く食卓に向かった。
そんな彼女の後ろ姿を見つめるヒバリの目が甘く優しげに緩められている事実は、ヒバリの肩に止まった黄色い小さな鳥しか知らない。

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