リボーン複数主 | ナノ


▼ 標的152

ひとまずクロームの容態は問題ないと分かり、そしてツナの一言で5日後ミルフィオーレファミリーを襲撃することも決まった。ツナの言葉で改めてやる気を見せた獄寺、山本は大きく頷いて先に部屋を出たツナを追ったが、くるみはそれに続く事が出来なかった。

「くるみ。」
「!恭弥くん。」

10年後のヒバリに呼び止められたからだ。
振り返り、不思議そうに見上げるくるみは、初めて10年後のヒバリと会ったにも関わらず、非常に落ち着いているように見える。
それもそうか、と未来の彼女から言われた言葉を思い出したヒバリはこの後の予定を頭の中で組み立ながら、胸ポケットに入れていた手紙を差し出した。
差し出されたくるみはきょとりと首を傾げる。

「何これ?」
「知らない。この時代の君から預かったんだよ、過去の君に渡せって。」
「えっ!?」

ヒバリからの思わぬ言葉に驚き声を上げるくるみ。対するヒバリは涼しい顔で、早く受け取れと急かすように黙って見つめている。
しかしそれに気づいていても衝撃が強すぎて反応出来なかったくるみは戸惑い、呆然としていた。
何故未来のヒバリがこんな物を渡してくるのか。未来の自分が未来の事を知っている事を理解しているのか、分からなかったからだ。
しかしヒバリは薄情なもので、未来のくるみや目の前にいるくるみが例え未来の事を知っていたとしても、さして興味は無いのだ。手紙を渡された時にきっと知っているのだろうとは思っていたが、だからと言って詮索したい訳では無いし、己の推測通りだったと確認するだけだった。

「お、驚かないの?」
「興味無い。」
「………恭弥くんに聞いた私がバカだったよ…」

もう少し幼なじみにも興味を持つべきだと思う。
内心腹立たしく思いながら差し出された手紙をぶつくさ言いながら受け取ったくるみは頬を膨らませる。
え、私達って幼なじみだよね?もうちょっと興味持たれても良くない?
不満を心の中で唱えたが、ヒバリは特に気に留めることもなく黙って出て行こうとする。

「ま、待って!」
「……………何。」

あれ?
律儀にも振り返り、不機嫌な様子を隠しもせずに問うてきたヒバリに違和感を覚える。
過去のヒバリも知り尽くしているという訳ではないし、くるみとて己の気分で動くヒバリに積極的に絡む訳ではなかった。しかし、長年幼なじみという事で幼い頃から関わっていたためか、機嫌が悪い時のヒバリも幾つかパターンがある事は知っていたし、今対峙しているヒバリの不機嫌さはその内の1つである事も、経験からこれはただ機嫌が悪いと言うだけでは無いことも理解していた。
これは、もしかして。
アタリをつけたくるみはずいっと身を乗り出し、ヒバリに近づいた。

「恭弥くん、私に何か隠し事してない?」
「してない。」
「絶対してるでしょ!私に隠し事!絶対言ってもいいヤツで!!」
「……………はぁ…」

傍から見ればいつも通りのヒバリに見えるが、くるみからすれば、明らかに何か隠そうとしている素振りを見せている。これは押せばいけるかもしれない、と判断したくるみが更に詰め寄り問いただすが、予想は外れ、一つ大きく溜め息を吐いた後、無言で部屋を出ようとした。
勿論それを逃すくるみではない。待って!と再度声をかけ、引き止めるが、ヒバリは止まらない。しかしヒバリを止めようとするのはくるみだけではなかった。

「っ………くるみ。」
「ユキちゃん!」

ダンっと大きな音を立てて跳躍したウサギがヒバリの行く手を阻むように、その小さな体をヒバリの足元に近づけ、体重をかけた。驚きと同時に、健気にも己の力になろうとするウサギの姿に心打たれたくるみは嬉しさも混じえて声を上げる。
対するヒバリは足止めをするウサギに一瞬止まったものの、すぐにくるみのものとアタリをつけ、低い声で名前を呼ぶ。しかしくるみは怯むことなく回り込み、再度ヒバリを止めようとする。

「教えて!」
「嫌だ。」
「っ………恭弥くんのケチ!なまえちゃんに言いつけてやる!!」

断固として拒否する姿勢を見せるヒバリに、思わず叫んでしまったくるみ。しかしその時くるみは見逃さなかった。ヒバリになまえの名前を言った時、微かだが、ピクリと反応を示したことに。
絶対何か知ってる…!
そう思い、更に問い詰めようとしたくるみだが、その前にぶわりと室内に広がる重圧。

「っ!」
「くるみ、君がすべき事は僕に詰め寄る事ではなくて、強くなる事じゃないの。」
「っ…それと、これとは、別だと思う、けど…」
「僕より強くなったら、考えてあげる。」
「それ絶対教えてくれないじゃんか…!」

ヒバリの殺気とも言えるそれは怒気だ。それを真正面から受けたくるみは流石に怯み、ヒバリの足下にいたウサギも驚き、くるみの元へ戻ってしまった。
自由になったヒバリはスタスタと歩き出し、くるみへ忠告する。最後のくるみの言葉は右から左に聞き流し、とうとうヒバリは部屋を出て行き、己のアジトへ戻って行った。

「くるみ姉…」
「あ!ごめんね!ビックリさせちゃったね!」
「ううん。」

しんと静まり返った室内で、フゥ太から声をかけられ、漸くくるみはハッと我に返り、こちらを案じるように見つめるフゥ太やビアンキ、草壁らの視線に気づいた。心配をかけまいと、ニコリと笑うが、フゥ太達の心配しているような表情は変わらない。そんな彼らに気にするなと言うように、言葉を続ける。

「由良ちゃんと話してね、なまえちゃんを助ける為にも、まずは強くならなきゃって分かったから…て事で、修業してくるね!」
「あっ…」

打倒、恭弥くん!と空元気で叫びながら部屋を出たくるみ。そんな彼女を追いかける者はおらず、彼女から笑顔が消え、戸惑いと、悲しみと、やるせなさと、様々な感情が入り交じり、形容し難い表情に変わった事は、静かに着いてきていたウサギしか知りえなかった。

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