リボーン複数主 | ナノ


▼ 標的151

草壁に促され、ミーティングルームでツナが待機していると、くるみが慌ててやってきた。

「くるみちゃん!」
「!ツナくん!クロームちゃんの容態が急変したって聞いて…大丈夫、だった?」
「あ、えっと…」

くるみに問われたツナは口ごもり、気まずそうに目を逸らした。その様子を見ていたくるみはそっか、と悲しげに声を落として俯いた。そのままツナが座る席から一つ空けて着席した。それから獄寺や山本、了平など、くるみと同じようにリボーンからクロームの状態を聞いた面々がミーティングルームに集まってくる。しかし全員言葉は少なく、重苦しい雰囲気が漂う。

「うぷっ…ユキちゃん、大人しくしてて…!」

そんな中、空気を読まないものが1人、いや、1羽。くるみの匣アニマルだ。
クロームが無事だということを主であるくるみが分かっているからか、深刻な雰囲気にそぐわずくるみに甘えるようにして自分の体をすり寄せながら押し付ける。

「おい!さっきからずっと気になっていたが、なんだそのウサギは!」
「匣アニマルか…」
「くるみ姉の匣アニマルはウサギなんだね。」
「ご、ごめんね!いい子にしてるように言い聞かせてるんだけど、緊張してるみたいで…」

当然、視界の端とはいえちょろちょろと動くウサギに気にならないはずもなく、痺れを切らした獄寺が苛立って問い詰める。それに返したのはくるみではなく確信を持って呟いたラルで、合わせるようにフゥ太が確認の意味も込めてくるみに話しかける。
頷いたくるみは申し訳なさそうに謝るが、その間もウサギは我関せずと言わんばかりに机の上で寝そべり、かと思えばくるみの肩に飛び乗ったり、膝に飛び乗ったりと好き放題だ。

「匣に戻したらどうかしら?」
「それが、戻そうとすると凄く嫌がって、暴れちゃって…」

ビアンキの助言通り従おうと考えたものの、をチラつかせた途端ダダダッと全力ダッシュで部屋の四方八方を駆け回る姿を思い出し、ちょうど良いタイミングで戻せるまで待つことにしたくるみは再度謝り、項垂れた。
主の気持ちとは裏腹に、こてりと首を傾げて鼻をひくひくさせているウサギはくるみを見上げている。
そんな様子を横で見ていた山本がなあ、と声をかけた。

「そのウサギ、くるみに構ってほしいんじゃねーか?すごい懐いてるみたいだし。」
「えっ…?」

びくりと肩を跳ねさせ見上げたくるみは次いで言われた山本の言葉に驚き声を零す。最初は理解できなかったが、ゆっくりと今は膝の上にいるウサギを見下ろすと、ウサギはこちらを期待に満ちたキラキラとした目で見上げている。まるで山本の言った構ってほしいという言葉を表すかのような素振りに遊んであげられないからね、と心の中で呟いて、すり寄せてくるふわふわの体をそっと撫でる。
すると、気持ちよさそうに目を閉じ、力を抜いて体をくるみに預けるようにして横になった。同時に満足したのかそのまま動かなくなった。

「ありがとう!武くん!」
「おう!」

おとなしくなったことにホッと息をついたくるみが山本に礼を伝えたところで、ミーティングルームのドアが開き、草壁が入ってきた。

「クローム髑髏は一命を取り留めました。」
「本当!?よかったー!!」

草壁の一言でひとまず安心したツナ達はホッと安堵し、空気も和らげた。そんな中、リボーンがどうやって持ち直したのか問うと、草壁がボンゴレリングです、と答えた。次いでヒバリがどうやってボンゴレリングの力を使ったのかを説明する。
曰く、ヒバリはボンゴレリングそのものの力を引き出し、己の力で生きることを促したことで、クロームは自分の幻覚で失われた内臓を補っているらしい。その際、クロームだけでは不安定だったため、由良の力も借りたとのこと。
そんなことが可能なのか、と驚く面々に対し、しかし今の2人の力では幻覚を保つだけでやっとな状態で、生命維持をしながらの戦闘は難しいと続けて説明すれば、皆5日後のことが頭に過り、黙り込む。

「5日後に2人が戦えない状況というのは、痛いな。」
「心配するな。2人の不足分は俺が補う。」
「わ、私も!由良ちゃんと同じ守護者の役割受け持ってるんだもん。私も頑張る!」

沈黙の後、了平が呟いた言葉にすぐさま返したのはラルだった。それに少し遅れる形で、くるみも名乗りを上げる。だが、最初に名乗りを上げたラルに厳しい言葉がリボーンから掛けられる。

「そんなこと任せられるわけねーだろ、ラル。お前今座ってんのもしんどそうじゃねーか。」
「!!」
「リボーンッ!」
「何を言っている!!」

リボーンの衝撃的な言葉に驚いた面々。しかしその中でツナだけは事情を知っていたのか、咎めるように声を上げ、ラルは誤魔化そうとするが、リボーンの目は誤魔化せない。顔を見れば体調ぐらい分かると言って、ラルの体は非7³線(ノン・トゥリニセッテ)を浴びすぎてボロボロなんだろ?と確信めいた表情で断定して問いかける。
ノン・トゥリニセッテという聞き慣れない言葉に戸惑うツナ達をよそに、ラルとリボーンの会話はヒートアップしていく。

「黙れ!過去から来たお前に何がわかる!」
「俺だって、地上に充満している非7³線(ノン・トゥリニセッテ)を肌で感じたんだ。お前のやろうとしてることの無謀さぐらい分かるぞ。」
「だが非7³を放出しているのはミルフィオーレだ!!奴らを倒さなければこの世界は正常には戻らない!!」
「えーと、それについてですが…」

冷静に淡々とラルに説いていくリボーンに対し、何がトリガーになったのか、激情し、声を荒げるラルの剣幕に圧倒され、誰も口を挟めない中、恐る恐るといった様子でジャンニーニが声を上げる。そして続けたのは先程から何度も聞いている非7³線が地上に漂っている原因に関して。しっかりとした原因は特定できず、そしてミルフィオーレとの因果関係も証明できるものがない状態ということだった。それに続けて草壁も風紀財団でもまだ同様に原因を掴めていないと言うがラルは納得せず、奴らの仕業だ!!と断言する。

「コロネロもバイパーもスカルも…奴らに殺されたんだ!!ぐっ!うっ…」
「ラル・ミルチ!!」
「大丈夫ですか!」

しかしその興奮による体の酷使が影響してか、急に呻き声をあげてその場に倒れてしまう。近くにいたビアンキと草壁がすぐに駆け寄るが、自分は平気だと言い、立てる!と叫ぶ。ラルの必死な様子を見て、同じく駆け寄ろうとしたツナが思わず足を止める。そんなツナに了平が静かに声を掛ける。
それは、5日後の作戦決行の判断について。由良やクロームだけでなく、ラルまでもこの状態ならば、戦力は心許ない。その状態でツナがなんと言うのかは見当がつく。作戦中止は自分が上に伝えにいく、と。

「ただの貧血だ!!」
「無理するな、ラル…」

了平の言葉を聞いていたのか、ラルがなおも虚勢を張る姿に、了平も苦言を呈す。

「やりましょう…」
「!」

しかし、ツナが言ったのは、作戦決行の言葉。驚き皆がツナに目を向ける中、ツナは自分が思ったことをポツリポツリと話していく。

「敵のアジトに行けば、過去に戻ることだけなくって、敵の手がかりも何か掴めると思うんです。それにその、ノン・トゥリニセッテのことも分かるかもしれないし…でも、どっちもゆっくりしてると手遅れになっちゃう気がして…」

一度言葉を区切ったツナは一拍置いて、それに、と続ける。

「やっぱり俺、こんな状況(とこ)に、一秒でも長くいて欲しくないんだ。並盛の仲間はもちろんだし、クロームやラル・ミルチだって…こんな状況(とこ)、全然似合わないよ!!」

そう言い切ったツナの言葉に自分も含まれていたことに気づいたラルは驚き、呆気にとられた様子だった。しかしすぐにハッと我に返り、気恥ずかしそうに慌て出すツナに素直になれずガキが、と零した。その言葉を聞いていたくるみは小さく口角を上げて、それまでウサギを撫でていた手を止め、ポンポンと優しく叩く。気づいたウサギはむくりと起き上がり、ピョンと地面に飛び降りた。それに合わせてくるみが立ち上がると同時に、ツナも手袋を嵌め、とにかくと死ぬ気丸を飲み込んだ。

「5日しか時間がない。一刻も無駄にはできないぞ。」
「はい!!」
「だな!!」
「うん!!」

超死ぬ気モードになったツナの言葉に気合を入れ直すかのように、獄寺、山本、くるみが頷いた。

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