リボーン複数主 | ナノ


▼ 標的150

リボーンからクロームの容態が急変したと報せを受け、ツナを置いて一足早くクロームがいる医務室に辿り着いた由良は目の前に広がる光景に目を見開いた。

「がはっ!」
「クローム!!」
「!」

苦しそうに咳き込んだクロームの口から大量に吐き出された血液が横になっているクロームの顔や布団に飛び散り、赤く染める。遅れてやってきたツナの声に我に帰った由良は、先に駆け寄ったツナに倣い、自分もクロームのベッド脇に駆けつける。
その先で見えたのは、不自然に、まるで穴が空いたように凹んだクロームの腹。以前、リング争奪戦で三叉槍をマーモンに壊された時、骸の幻覚で保っていた内臓が無くなり瀕死の状態に陥った時と同じ現象だった。
由良が分析していると、それに被せるようにビアンキも同じことをツナに伝えていた。

「バカパイナップル…!」

あんなに元気だったのに。何やってんのよ…!
ボソリと呟いた怒気が混じった声はツナには聞こえず、掻き消えた。
今朝自分やクロームと戦った時は匣アニマルに憑依していたとは言え、憎まれ口を叩いて非常にピンピンしていた。軽い調子で自分にオオカミの名前を決めてはどうかと言ってきたあの様子は、いくら力を使い切ったとはいえ、まだ無事だったはずだ。
それとも、あの時すでに無理してたってこと…?

「様…むく…」
「!クローム!!」
「しっかりしろクローム!!死んじゃだめだ!!」

考え込んでいると、か細くも、しかしはっきりと由良とツナの耳にクロームの声が届いた。己の最も信じる人、骸の名前を呼んでいる姿は非常に痛々しいものだが、怯んでいる暇はないとクロームに近寄る。

「由良…ボ、ス…?」
「そーだ俺だよ!!しっかりするんだ!」
「ここにいる!ここにいるからね!クローム!!」

うっすらと目を開けたクロームが、ぼんやりと由良とツナの名前を呼ぶ。目を開けたことに気づいた2人はそれぞれクロームの手を片方ずつ握り、必死に呼びかける。
2人の温もりを感じたのか、クロームは辛いだろうにあったかいと嬉そうに目を閉じ、微笑んだ。

「骸…様を…」
「!骸!?」
「骸が、どーしたんだ?」
「がふっ!!」
「クローム!!」

少し落ち着いたのか、何かを伝えようとするクロームだが、内臓の破壊は止まらず、吐血し、朦朧とするクローム。突如聞こえてきた骸の名前に2人は引っかかるも、それどころではなくなり、クロームを再度必死に呼びかける。

「!槍、が…!」

だが、それは意味を成さず、クロームは吐血し続け、虫の息状態となってしまった。そして由良の位置から見えた、クロームの鞄の中に入っていた三叉槍の槍が何もしていないにも関わらず、パリンと砕けた。

「クローム!!」
「ああ!!」
「そんな…!」

槍が砕けたと同時に、一際大きく吐血したクロームは、吐血した反動で跳ね上がった体を重力に従って落とす。しかしこれまでとは違い、呼吸はヒューヒューとか細いものに変わり、目も虚となっており、持って数分の命であることは明白だった。
悲壮感漂う室内に、ガラッとドアが開く音が響く。見れば、スーツ姿のヒバリが立っており、驚き声を上げるツナを邪魔だと押し退け、クロームを抱き上げた。

「死んでもらっては困る。」
「ヒバ、リ…」
「神崎由良。君の力を使う時だよ。」
「えっ…」

クロームに向けていた瞳、言葉が今度は自分に向けられたことに驚いた由良は戸惑い、声を零す。そんな由良など知ったことかと、ヒバリはクロームをベッドに戻し、クロームが嵌めている霧のボンゴレリングに目をやる。

「クローム髑髏。君はこのまま死ぬつもりかい。」
「なっ…!ちょっと、クロームは…!」
「死にたくなければ、そのリングの力を使うんだ。グロ・キシニアと戦った時のようにね。」
「!それ、って…」

無礼極まりないヒバリの言葉に物申そうとした由良だが、次いで聞こえた言葉にハッとする。そして思い出すのは、今朝自分も共に戦ったグロ・キシニアとの戦いで、ボンゴレリングに炎を灯し、骸、犬、千種の高度な有幻覚を使ったクロームの姿。あの時は骸の力も使っていたが、憑依したフクロウの大きさから考えると、クロームの力の方が比率は大きいだろう。

「クローム!あの時の感覚、思い出して!気持ち悪いのと戦った時、骸たちの有幻覚を出した時と同じ感覚で、自分の内臓を生み出してみて!」

そうと分かれば話は早いと、由良がクロームに呼びかけ、指示を出す。だが、すでに虫の息で意識が朦朧としている状態のクロームは呼吸をすることに精一杯なのか、僅かに手が動くものの、リングに炎を灯すことができずにいる。
このままでは、クロームが死んでしまう。一体どうすれば…!

「神崎由良。」
「!」

焦る由良に声をかけたのはヒバリで、驚き見上げれば、彼は静かに自分を見下ろしている。

「君の幻術なら、彼女の炎と幻術を補えるはずだよ。」
「!分かった。」

言われた言葉は常ならば信じられるものではなかったが、いろんな意味で正直なヒバリの言葉だからか、すんなりと受け入れることができた。
由良が一度握っていたクロームの左手を離し、回り込んでリングが嵌まっている右手を握り、自分がリングに炎を灯す時と同じように力を込める。そしてクロームの内臓を生み出すため、目を閉じ、集中する。

「あった、かい…」

由良が暫くそうしていると、クロームからポツリと小さな言葉が聞こえてきた。集中していた由良は気づいていなかったが、様子を見守っていたヒバリはすぐに気づいた。クロームの右手、霧のリングから藍色の純度の高い炎が溢れ出していたことに。
それに一つ息を吐き出したヒバリは、ツナを会議室に連れて行き、戻ってきた草壁にクロームが一命を取り留めたことを伝えた。

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