リボーン複数主 | ナノ


▼ 標的13

9月と言えば秋、秋と言えばスポーツ。そう連想したのか、並盛中では本日体育祭が行われる。天気は雲一つ無い快晴で、陽射しだけだと暑いが、涼しい秋風が時折吹くので夏ほど酷くはない。由良はなまえ、くるみとクラスが違うので今日は別行動だ。登校も今日は1人で、いつもより少し遅めに学校に着いた。

「沢田?」
「あ、神崎さん…」

そんな彼女の前に少しふらついて歩くツナがいた。おはようと挨拶をするついでにどうしたのか聞けば、どうやら昨日急遽決まった棒倒し総大将の特訓をした時に誤って川に落ちてしまったことから朝から微熱があり、少しダルいとの事だった。念の為に休むべきだろうと言えば、みんなのテンションがハイになっていて言うタイミングを逃し、学校に来てしまったらしい。なんともツナらしいというかなんというか。

「だから保健室で休ませてもらおうと思って…」
「なら、私もついて行くよ。ふらついてて危ないし。」
「あ、ありがとう…!」

ツナのふらつく足取りに合わせ、少しゆっくり目に歩いた。途中倒れそうになるツナを支えつつ保健室前に着き、ツナの代わりにドアを開けた。

「失礼します。あの、朝から微熱があるみたいでふらついてるので休ませてほしいんですが…」
「それは大変だ!どれどれ…」

ぴたり、自身の胸に何かが触れている感触がする。脳が思考を停止しているかのように固まっていたが、なんとか首を動かし、下を見た。

「わあっ!?」
「神崎さん!」

女らしさもへったくれもない悲鳴を上げながら瞬時に身を引き、手から距離をとった。その際ツナを置き去りにしてしまったが、動揺していてそれどころではない。

「せ、セクハラ…!!」
「神崎さん大丈夫!?」

傍に駆け寄ってきたツナの腕を震える手で掴み、涙目で呟く由良にいつもの冷静さは見られない。すっとツナの後ろに隠れる由良は完全に怯えた様子で風邪で休もうとしていたツナもそれどころではなくなってしまった。

「何やってんだよアンタ!っつーかなんでDr.シャマルがここに!?」
「おいボンゴレ邪魔すんなよ。その子風邪引いてんだろ?」
「風邪引いてんのは俺!神崎さんは付き添いだよ!」
「はあ?」

じゃー休ませねぇからとっとと出ていけ、と手を犬でも払うように振るのは今月から並盛中の養護教諭になったDr.シャマルだ。しかし彼は男は診ないという謎のポリシーがあり、更に先程のように女性に対してボディタッチが過ぎるという問題ばかりの医者なのだ。彼も今後の物語には必要不可欠な存在ではあるのだが、アニメを少ししか見ていなかった由良が知る訳もなく、得体の知れないDr.シャマルに完全に怯えていた。

「そんなに恐がらないでよ。オジサン何にも怖いことしないからさ〜。」
「ひっ!」
「ちょっ、やめろって!」

にこやかに、というよりもニヤニヤとした表情で近づいてくるシャマルに悲鳴を上げ、体を強ばらせる由良を守るようにツナが声を上げる。このままでは埒が明かないと、ふらつくはずの体を無視して半ば強引に由良の手を引いて保健室を逃げるようにして出た。

「神崎さん大丈夫?」
「う、うん。ごめん、沢田。折角保健室行けたのに、休めなくなって…」
「あー…アイツがいる間はたぶん保健室使わせてもらえないだろうし、いいよ。少し良くなった気もするし。」

本当は悪化してほしかったけど。心の中で願ったツナは弱々しくでも、と言い募る由良に気にしないでと笑って返した。以前シャマルが手を出していたビアンキはポイズンクッキングだったり回し蹴りだったりと、かなり過激な対応をしていたからきっと由良も殴ったりするのだろうと勝手に思っていたツナは、彼女の反応に少なからず戸惑っていた。だが、たまに母親がニュースで出る痴漢の話題を怖いと言って反応していたり、痴漢に遭った被害者の精神的苦痛に関する内容を耳にしたりしていたので、これが本来の反応なのだと納得もしていた。
由良は前世で痴漢に遭った事もセクハラを受けた事も無かった。だからこういった経験は初めてで、本当に頭が真っ白になり、前の非力な自分に戻ってしまった。冷静になれば、薙刀の練習で鍛えたことの応用で殴ったりできたが、あの時はそれどころではなかったのだ。

「あの、沢田。これ、一応飲んどいて。」
「えっ…」
「市販のだけど、風邪薬。ちょうど持ってたから、使って。」
「あ、うん。ありがとう。って、ホントに大丈夫なの?」
「うん。なんとか、ね…ごめん、先行ってるね。」

少し青くなった顔を無理矢理笑わせ、ツナに薬を渡した途端顔を見ずにスタスタと歩いていった。向かうのはなまえがいる教室だ。

「あれ?由良?………わっ!?」
「なまえ…」

教室に入る前に廊下でバッタリ遭遇したなまえに勢いよく抱きついた。驚きつついつもと様子の違う由良に何かを察したなまえはゆっくり頭や背中を撫でた。それはグラウンドに集合をかける放送が鳴るまで続いた。

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