リボーン複数主 | ナノ


▼ 標的12

応接室から無事に避難できたツナたちは現在屋上にいた。着いてすぐに気絶していた獄寺と山本も目を覚まし、ツナから事の顛末を聞いたところでツナたちを応接室に向かわせた張本人である赤ん坊があっけらかんとヒバリに会わせるためにやったと言ってきたのだ。

「危険な賭けだったけどな。打撲と擦り傷で済んだのはラッキーだったぞ。」

フッと笑ったリボーンはそれに、とくるみを見る。

「川崎くるみにも、興味があったからな。」
「はあ!?」
「私?」

ヒバリの件よりもこの赤ん坊がくるみに興味を持っていたことの方が驚いた。ツナはもちろん、今まで会ったこともなかったのに目をつけられていたことにくるみも吃驚して赤ん坊を見る。

「改めて、俺の名はリボーンだ。よろしくな。」
「あ、えっと、川崎くるみです。よろしく…」

なんて事ないように言う赤ん坊、リボーンに流され己も名乗ったくるみ。すぐにそれどころではないと我に返るが、リボーンの只者ではない雰囲気に気圧され既に心が折れそうになる。

「なんで川崎さんに…まさか川崎さんまで巻き込むつもりか!?」
「ああ、そうだぞ。」
「なあ!?」
「考え直して下さいリボーンさん!コイツに10代目のファミリーが務まるはずありません!!」

よく見た設定だなあなんて、現実逃避をし始めるくるみ。なんとしてでも幼なじみから3人を離さないとという思いでいたから初めて会ったはずのリボーンに対して誰とも言わず、普通に接してしまった。恐らく以前から目はつけられていただろうけど、あの時もっと周りを見るべきだったと後悔してしまう。知っていたとしても、赤ん坊が流暢に話したり銃を扱っていたり人を引きずるほどの腕力があるなど規格外すぎるのにあの時は必死すぎて何も反応出来なかった。

「川崎もマフィアごっこに入んのか?」
「えっ!?ど、うだろう、や、山本くんは、どう思うかな?」

くるみが山本を運んだことで、必然的に近くに座ることとなった2人はリボーンに抗議するツナや獄寺を見ながら話していた。くるみは自分で聞いたのに答えてほしくないとドキドキしながら考えていた。これで良くないとでも言われたら立ち直れない、だがしかし、彼女の中のファン精神が山本は絶対に良いと言ってくれると叫んでいる。公式は本人なのでなんでも受け入れられるが、心の中では解釈一致!!とスタンディングオベーションが起きていた。

「川崎がいたら楽しそうだな!でもたまに危ない遊びもあるからケガだけはすんなよ。」
「う、うん!ありがとう…!」

良いと言ってくれるだけでなくこちらの心配までしてくれた…!思わぬファンサに感情が高まり、頬に熱が集まったおかげか顔は真っ赤に染っている。暑くなっちゃった!などと言って両手を顔に当てて熱を下げようとするくるみ。山本は気づいているのかいないのか、いや絶対気づいていないだろう様子でからりと笑いながらよく赤くなるな!とくるみを見ていた。恥ずかしいと目をぎゅっと瞑っているくるみは気づいていなかった。山本がニコニコ笑いながらずっと彼女を見ていたということを。

「おい勝手にイチャついてんな。」
「「っ!?」」
「な、何言って…!」
「そうだぜ小僧!俺も川崎もただ話してただけだ!それより、もう話は終わったのか?」
「ああ。あまりにもうるせーから殴っといた。」

急に聞こえた声に焦る山本とくるみだったが、山本が無理やり話題を変えたおかげで茶化されずに済んだ。しかしリボーンの答えに彼の後ろを見れば恐らく腹を殴られたのだろうツナと獄寺が腹部を押えて蹲っていた。

「ば、バイオレンス…」
「さて、うるせーヤツらも黙らせたところで、本題だぞ。くるみ、お前にはツナが率いるボンゴレファミリーに入ってもらう。」

くるみの前に現れたリボーンは赤ん坊とは思えない重々しい雰囲気で言った。しかもその言葉は勧誘のための疑問形ではなく、まるでもう決まっているかのような断定されたもので、少し戸惑った。

「それって、さっき山本くんが言ってたマフィアごっこの?」
「ごっこじゃーぞ、本物のマフィアだ。」

山本に対しては否定も何もしなかったリボーンは、何故かくるみにはきっぱりと反論した。そんな彼を見て少し考え込む。
正直、この世界で彼の幼なじみとなってから、彼と共に訓練するようになってから、この展開を考えなかったわけじゃない。きっと本気でやれば自分は負けるが、それでもこの3人よりは強いだろうし、幼なじみの影響か、喧嘩もそれなりにしてきて人を殴ることもそこまで苦ではない。薄情ではあるけれど、こんな自分なのだからきっと誘われるだろうと思っていた。でも、だからといって怖くない訳じゃない。先の事を知っているからこそ、これから起こるであろう闘いに自分は向き合えるのか、分からなかった。
ぽん、と自分の肩に手を置かれる感覚がした。見ると、山本と目が合う。途端顔に熱が集中してしまう。

「無理すんなよ、川崎。」

無意識に肩に力を入れていたらしい、山本の言葉を聞いて脱力するように力が抜けていく。そしてようやく覚悟は決まったとでも言うようにリボーンの名前を呼んだ。

「これから、よろしくね。」

くるみの答えにリボーンはフッと笑い、ツナは絶叫し、獄寺は怒り、山本はまたからからと笑っていた。
まだ、怖い気持ちはある。けれど、顔を上げ山本に視線を向ける。それでも、彼の隣で笑っていたいと願うようになったから。自分勝手だと言われてしまうかもしれないが、それがくるみの本心だった。だからこそ、頑張ろうと心の中で気合を入れ、3人に向けてもう一度、自己紹介をした。

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