リボーン複数主 | ナノ


▼ 標的147

気持ちを切り替え、修業を開始するべく立ち上がったくるみ、由良。主人が立ち上がったからか、2人の匣アニマルであるウサギとオオカミも先程までのリラックスモードから一転、ウサギはくるみの腕から離れ、オオカミも立ち上がり、どちらも戦う準備をしているようだった。
全員準備が万端な状態になったところで、由良があ、と声を上げる。

「どうしたの?」
「これ…」

由良の声に釣られて目を丸くしたくるみが問い掛ければ、見せられたのは先程まで自分が持っていた小さな箱。くるみや由良の匣アニマルが入っていた匣とは違う模様のそれは、由良も先ほど見たばかりの未来の自分達が作らせたものだ。
ウサギやオオカミが入っていた匣とは違い、雪だるまが全面に入れられ、その周りを舞うように小さな雪の結晶が散らされた2つの匣。通常、匣アニマルは1人につき1つ、がくるみの知る情報だ。犬と燕を持つ山本も、ミルフィオーレ突入時はまだ燕の匣しか持っていなかった。とすると、この匣は一体なんの目的で作られたのか、原作を知るくるみでも、見当がつかなかった。
考えあぐねているくるみの前で、それぞれの匣を持ち上げ、ひっくり返したりしながら観察していた由良がまたあ、と声を上げ、くるみを見やる。

「どっちがどっちのか、分かったかも。」
「えっ!?」
「ほらこれ、よく見て。」

驚くくるみにそう言って、説明するために見えやすいように角度を変えて匣を見せる由良。それに合わせて覗き込んだくるみの目に、匣の模様が映る。暫く見つめて何も変わりがないように見えたが、チラリと見えた模様にあ!と声を上げる。

「これ、もしかして…薙刀と、2丁銃?」
「うん。もしかしなくても薙刀が私で、拳銃がくるみだと思う。」

だからはい、と渡された匣をまじまじと見る。
雪だるまと雪の結晶の模様ばかりの中で、一面だけ、雪だるまの背後に描かれているデフォルメされた模様。くるみのものは2丁の黒い拳銃が交差するように、由良のものは薙刀の刃の部分を上に、立てかけるように斜めに描かれていた。
片方だけわかりやすくするのではなく、匣アニマルの方もわかりやすくしてほしかった。

「もう片方も同じように模様入れてくれればよかったのに…」
「そうだね…」

自分と同じことを考えていた由良のぼやきに同意したくるみは徐にリングに炎を灯す。見ていた由良も同じように炎を灯し、2人ともほぼ同時に匣に炎を注入した。

「!これって…」

パカッと開いた匣から出てきた炎の塊。炎が消え、何が入っていたのか視認した2人は目を見開き、声を零す。

「新しい銃だ!」
「試合用の、薙刀…?」

くるみのものは匣から飛び出した時二つに分かれ、両手に収まるように、由良のものは両手に収まるように小さくなったかと思えば、そのままスルスルと伸びていった。結果、くるみの手には黒光りする銃が、由良の手には黒曜での戦いの時に使っていたものと同じ薙刀が握られていた。
もう一つの匣は武器を入れていたものだと分かったところで、出てきた武器を使いこなすためにも、お互い頷き合い、距離を取って向かい合った。

「準備はいい?」
「もっちろん!いつでもいいよ!」

くるみの答えを聞いた由良はニッと強気に笑い、リングの炎を薙刀の刃に移動させ、くるみめがけて駆け出した。
この時代に来る前から、くるみやヒバリとの手合わせで薙刀だけでなく、骸やクロームのように幻術との合わせ技も出来るようになってきた由良。炎を使っての戦闘は黒曜でのグロ・キシニアとの戦いでのみにはなるが、必死に戦いながらも骸の戦い方を見ていたからどうすべきか分かっていた。

「ふっ…!」
「っ!」

短く息を吐き出すと同時に薙刀を横に払う。当然避けられるが、すかさず地面を凍らせ、また蓮の蔦を使ってくるみの動きを封じる。どちらも高度な幻術だ。
足を氷で固められ、身動きが取れないよう蔦で腕も拘束されたくるみだが、彼女とて、成長していない訳では無い。一つ大きく息を吸うと腕に力を込め、銃口の向きを地面に変え、1発撃ち込んだ。

「!きゃっ…!」
「!くるみ!!」

しかしその1発は、くるみや由良が思っていたものとは異なっていた。
普段、くるみが撃つのは一般的な弾丸で、ここに至るまで使用していたのはリボルバー式の都度弾丸を入れる必要のあるタイプのものだった。だが、今撃ったものは普通の弾丸ではなく、まるでレーザーのように一直線に伸びていくものだった。
通常の弾丸と同じものだと考えていたくるみはこれまでと違う、桁違いの威力の強さとレーザーのような形状に驚き悲鳴を上げ、バランスを崩し尻もちをついた。
驚いたのはくるみだけでなく、由良も同じで、バランスを崩したくるみを心配して幻術を消し、駆け寄った。

「大丈夫!?」
「う、うん…ちょっとビックリしちゃっただけ…」

立てるかと由良が手を差し伸べる。それに対し困ったように、照れ臭そうにへへ、と笑うくるみだが、由良に伸ばした手は威力が強過ぎたからか、それとも別の理由か、震えている。

「うわっ!ひぃっ!」
「!ツナくん!」
「!ツナ!」

そんな中、由良の後方で短い声が聞こえた。見れば、ツナが入口付近におり、くるみと由良の匣アニマルに絡まれていた。後半聞こえた悲鳴のようなものは、恐らく由良のオオカミが近づいたからだろう。まるで見定めるかのようにツナの匂いを嗅ぎ、オオカミが近づく度ツナの顔が青くなる。またウサギも警戒しているのか、ジリジリとツナに近づき様子を伺っている。

「ちょっと、ツナは味方だから警戒しなくていいって…!」
「ツナくん困ってるから離れてあげて…!」

青い顔で怯え、困惑しているツナを見て慌てて駆け寄り、それぞれの匣アニマルを回収する。匣に入れようかとも考えたが、その考えを見透かすようにどちらもお行儀良く澄ました表情でいるため、呆れて咎めるように半目になって一瞥した。

「ツナ、ごめんね。」
「えっ!?あっ、いや!全然大丈夫!!」
「ならいいんだけど…」
「そういえば、ツナくんどうしてここに?私達に何か用事?」
「あ!」

ツナと由良、どちらも謝り続ける未来が見えたくるみが話題を変えるようにツナに尋ねれば、今思い出したと言わんばかりに声を上げたツナ。突然大きな声を出され驚いたのは由良とくるみだけでなく、2人の匣アニマルも同様で、特に警戒心が強いウサギは驚いた衝動からか部屋の奥へと駆け出してしまった。

「ま、待ってユキちゃん!落ち着いて!」
「ユキちゃん?」
「ご、ごめん!」

慌てて追い掛けるくるみに咄嗟に謝るツナ。その横で、由良が不思議そうに首を傾げている。
それに気づいていても反応が出来なかったくるみはすぐに落ち着き、大人しく自分の腕に収まったウサギを抱き上げ戻ってきた。

「ごめんね!お待たせ!」
「あ、いや!俺が驚かせたのが悪いし…!」
「ていうか、ユキちゃんって何?」
「名前だよ?ウサギさんよりも、ユキちゃんの方が分かりやすいかなって思って…由良ちゃんのオオカミさんにはないの?」
「……………まあ、今度考えるわ。それよりツナ、どうかしたの?」

出会って1時間足らずではあるが、既に匣アニマルと仲良くなっているくるみに驚いた由良。フレンドリーに見えて人見知りのきらいがあるくるみだが、動物相手は平気らしい。新しい発見をしたと感じる由良はそんなくるみからオオカミの名前を聞かれたが、まだ考え中であったため話題をツナに逸らした。
横から感じる期待に満ちた眼や、ガッカリしたように下がる尻尾なんて見てないったら見てない。

「あ、今みんなの修業の様子を見て回ってて、2人はどんな感じかなって…」
「ああ…」
「ええと…」

ツナの言葉に、2人はどう返そうか悩み、顔を見合わせる。そんな2人にどうしたのかと言いたげにツナが戸惑いがちに見遣れば、先に気づいた由良が口を開く。

「様子見に来てくれたところ悪いんだけど、私らまだ始めたばかりで…」
「さっきも漸くこの子たち匣から出せて、今この時代の私達が残したっていう匣の武器を使ってみたところだったの。」
「あ…」

2人の返答を聞き、ツナは内心しまった、と焦る。この時代でラルやヒバリからこの時代の闘い方を教わっていたツナ達と違って、2人は今朝この時代に飛ばされたばかりで、更に2人の大切な友人であるなまえの死を聞いたばかり。そんな2人が順調だと答えられるはずがなかったのだ。
ちらりと見えた、この部屋に入った時にたまたま見てしまった、まるで暴発したかのようにコントロールできずに地面を抉るような威力で撃たれたくるみの弾丸の跡。声をかけようか躊躇していたところに2人の匣アニマルがやってきて声を上げてしまったのだが、あの時のくるみや由良の困惑とショックを受けた表情が思い浮かび、居た堪れなくなったツナはぐっと唇を噛んだ。

「お、俺っ、そろそろ行くよ!邪魔してごめん!!」
「あ…」
「ツナ!」

口早に言って、まるで逃げるようにして部屋を飛び出したツナを呼び止めようと声をかけた2人に振り返ることなくツナはそのまま駆けて行ってしまった。
ツナが部屋を後にして、すぐに修業を再開しようとしたくるみと由良だが、くるみは普段と全く違う己の武器に戸惑い、由良は先程のツナの様子が気がかりでどちらも修業に身が入らず、向かい合ったまま動けなかった。

「っ!」
「わっ!」

そんな2人に仕方がないと動いたのはそれぞれの匣アニマルで、ウサギはピョンとくるみの肩に飛び乗り、オオカミは頭をすり寄せるように由良の体に押し付けた。自分を案じての行動だと分かった2人はそれぞれの体を撫で、落ち着かせる。

「!ちょっと!」
「由良ちゃん!って、ユキちゃん!?」

そんな中、突如オオカミが撫でていた由良の制服の裾を噛んで引っ張っていく。振り払おうにも、思った以上の力に驚くまま引っ張られる由良。そして由良を追いかけようとしたくるみだが、すかさず肩から飛び降り、まるで道を塞ぐように前に出たウサギに足止めされ、気づけば由良はオオカミに引かれる形でツナと同じように部屋を後にした。

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