リボーン複数主 | ナノ


▼ 標的146

くるみの匣アニマルがウサギと判明し、異様な懐きぶりに戸惑ったものの、特に問題があった訳でもなく、由良の一声で漸く情報の擦り合わせを始める。
しかしその前に、自分に懐いているウサギを抱えたくるみが待ったをかける。どうしたのか由良が見れば、くるみが言葉を探すように視線を彷徨わせる。その時間はさほどかからず、意を決したようにあ、あの!と口を開いた。

「由良ちゃんの、オオカミさんも、見てみたい、かなぁ、なんて…」
「ああ。別にいいよ。ちょっと待ってね。」

何を言われるのかと身構えていれば、変な所で遠慮したくるみのお願いに内心拍子抜けしつつ、オオカミが入った模様の匣を取り出し、炎を注入する。ドシュッと音を立てて飛び出した炎の塊は、飛び出した勢いそのままに地面に向かって落ちていく。
やがて炎が消え、現れたのは、白と灰色の体毛の大きなオオカミ。

「わぁ…!」
「この子が、私の匣アニマル。」

感嘆の声を上げるくるみに、一言で説明する由良。オオカミは自分の事を話しているのだと分かっているのか、のそりと動き、座っている由良の近くまで移動し、そのまま伏せた。気づいた由良は近くにあったオオカミの頭を自然と撫でており、オオカミは気持ち良さそうに目を閉じ、顎を地面に付けて完全にリラックスモードに入っている。
自分の匣アニマルもそうだが、由良のオオカミも同じ様子だと思ったくるみはクスリと笑みを零す。それらのやり取りが落ち着いたところで、漸く状況把握のために互いにスマートフォンを持ちながら話し始める。

「ひとまず、今の状況(とくるみが知っている情報)を整理しよう。」
「うん。たぶんこんな感じだよね。」

由良が言葉にはしなかった部分も感じ取ったくるみは高速で指を動かし入力し終えたスマートフォンの画面を見せる。そこにはリボーンから受けた説明の内容と合わせて、くるみが知っている原作の内容も入っていた。念の為、2人の陰に隠れて画面が見えないように注意しながら確認する。
主に由良が情報を擦り合わせる為に確認していたが、それもひと通り終わったところでくるみがあのね、と声をかける。顔を上げれば、くるみは由良ではなく、由良が見ていた画面のある一点を見つめている。
なんとなく、くるみがどの箇所を見つめているのか分かり、同じ内容の部分に視線をやる。

「さっきね、武くんと話したの。なまえちゃんの事と、私達がすべきこと。」
「うん。」
「この時代のなまえちゃんが狙われた理由は、私達しか触れないボンゴレリングを敵が狙ったからだってことは、過去のなまえちゃんがもし敵の方に飛ばされていたとしても、大丈夫なんじゃないかって…」
「あ…」
「もちろんっ、私達が捕まったりして、とかも考えたけど、戦って抵抗したり、ボンゴレリングに触れなくしたりする手段がある私達よりも、抵抗も出来ない、武器も持たないなまえちゃんの方が、簡単に捕まえられるよねって、思って…」
「…………確かに。」

自信なく話すくるみの言い分に、由良は素直に同意した。
言われてみればそうだ。この時代のなまえがどうだったかは不明だが、過去のなまえは自分達のような戦うための武器も、護身用の武器も持たない。当然相手を殺すような武器なんてものも持っていないので、例え彼女がこの時代の敵の手に捕らわれたとしても、自分で自分を殺すことは不可能だ。
つまり、生け捕りと考えられている限り、なまえが死ぬ事はない。

「もちろんそれでも不安な気持ちはあるんだけど、可能性があるなら、例えそれがほぼ叶わないようなものでも、信じたいなって、思って…」

由良の考えを見透かしたように言ったくるみだが、自信が無くなっていたのか、段々覇気が無くなっていく。声と共に表情も不安そうに見せるものだから、由良は逆に希望が見えたような気がした。

「たしかに、何事も気持ちが大事って言うもんね!」
「由良ちゃん…!」
「まだ、完全に信じられるわけじゃないけど、ここで嘆いていても何も進めない。なまえが助かるかもしれないのに、何もしなければ、それすらも分からない。残酷な現実を知るのはまだ怖いけど、少し、頑張ってみない?」
「うん!」

くるみを安心させるためか、努めて明るく振る舞う由良。由良もくるみ同様、まだ不安な気持ちは残っている。しかしくるみのお陰で、なまえがまだ生きているかもしれないという考えに行き着いた。ほんの僅かでも由良は希望を持つことが出来た。それを気づかせてくれたくるみに、感謝の気持ちを伝えたい、一緒に前を向いて頑張っていきたいと伝えたいと思ったから、明るく振る舞うことが出来たのだ。
なまえのように、くるみを完全に安心させることは難しいだろうと少し諦めつつも、出来る限り、明るく努めた由良に答えるように、ぱあっと表情を明るくさせ、笑顔で頷いたくるみを見てホッと安堵する。

「それじゃあ、早速修業を始めようか!」
「そうだね!時間は有限って言うし!」

意気込んだ勢いそのままに、気合いが十分に入った由良とくるみは立ち上がり、頷き合った。

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