リボーン複数主 | ナノ


▼ 標的145

リボーンの案内でトレーニングルームに着いた一行は、これからの事について話し合うために部屋の中央に集まった。

「んじゃ、これから5日後までにお前達がすべきことを教えるぞ。」

リボーンの言葉に、くるみも由良も緊張からか無意識のうちにこくりと唾を飲み込む。

「その前に、ここに来るまでにお前達がどんなことをしていたのかを聞きたい。死ぬ気の炎を使えるようにしていたのは由良から聞いていたが、具体的にどんなことをしてたんだ?」

リボーンの問いに、2人とも目を丸くし、顔を見合わせる。2人の脳裏に真っ先に浮かんだのは、ここ最近ずっとヒバリの八つ当たりを受けていたこと。正直、ヒバリと強制的に手合わせをすることになってから早1ヶ月経っており、その内容がどれもこれも濃いものばかりで、その前の事などあまり覚えていない。とはいえ、元々の主旨は変わっていない。

「ここ最近はヒバリと殴り合いばっかりだったけど…」
「その前は、2人で手合わせしてたよ。どっちも課題があったから…」
「課題?」

リボーンの問いかけにも似た復唱に2人同時に頷いた。ヒバリとの強制的な手合わせでも露呈した、自分達のそれぞれの課題。それは、リング戦の頃から感じていたもので、2人だけで手合わせをする時も、ヒバリを交えた時も変わらず2人を悩ませた。

「私は、幻術の耐性が全くない。」
「私は、戦闘のスキルが圧倒的に足りてない。」
「なるほどな。」

言外に言ってみろ、と訴えるリボーンの目線にそれぞれ己の課題を打ち明ける。
くるみは幼なじみのヒバリと幼少の頃から手合わせ、基喧嘩のようなものをしたり巻き込まれたりと、多対一や、強者との戦闘には慣れてはいるものの、基本殴り合いだったり武器と言っても鉄パイプや小型ナイフのような物理的な物しか相手にしたことがない。そのため、骸やマーモン、クロームのような術士による幻術への耐性がなかった。
対する由良は黒曜の戦いや先のリング戦で骸やマーモン、クロームといった高度な術士の幻術を見破り、更に骸を師として一時だが、マーモンを凌ぐほどの幻術を駆使し、対抗することができた。しかし由良の幻術はまだまだ発展途上。未だ戦いで使うのは幼い頃から習っていた薙刀だが、由良はこれまで試合や練習以外で薙刀を使ったことはなく、また試合や練習といったルールが設けられていない喧嘩等以ての外。そのため、試合ではどうにかなるポテンシャルも喧嘩やマフィア関係の戦闘では役に立たなかった。
2人が口にした課題はリボーンも感じ取っていた部分でもあったため、納得できた。

「んじゃ、お前らはここでも同じようにその課題を克服できるように2人で手合わせだな。」
「分かった。」
「頑張るね!」

2人の返事を聞いたリボーンはじゃあなと言って山本が待つフロアに向かうべくトレーニングルームを出た。
その姿を見送った2人はどちらともなく顔を見合わせ、息を吐いた。気持ちを切り替え、いざ修業を始めようとなったところで、由良がくるみに声をかける。

「始める前に、ちょっと話したいんだけど、いい?」
「うん!私も渡したい物があったから、ちょっとお話したいなっ」

くるみの言葉にホッと息を吐いた由良はまずは現状を整理したいからと、リボーンから聞いていた情報とくるみが知っている内容を照らし合わせたいことを伝える。くるみも同じ考えだったようでもちろんと頷いたがその前に、と言葉を止め、この時代の了平から受け取っていた匣を差し出す。

「これ…」
「この時代の私達が作ってもらってたらしい雪属性の匣。残念だけど、どれがどっちのかは分からないし、渡された数が奇数だからどっちかは1つだけになっちゃうけど…」
「いや、それは違う。」
「えっ…」

申し訳なさそうに公平でないことを伝えたくるみが持つ匣の模様に見覚えがあった由良は、言葉を区切って制服のポケットにしまっていた1つの小さな箱を取り出した。

「それって…!」
「黒曜ランドに飛ばされてすぐの戦いで、急に飛んできてさ。骸に私の匣だからって言われて使ったんだ。」
「じゃあ、もう使い方とかも分かってた?」
「うん。未来の私達がどちらか片方に偏りがいくようにするとは思えないし、2つずつになると思うよ。」
「よかった…!」

由良が既に匣を持っていたとは思っていなかったくるみだが、互いに2つずつ所持することになると知り、不公平さがなくなってホッとする。
安心した様子のくるみにそういえば、と気になった疑問を投げかける。

「この匣からオオカミ出てきたんだけど、それって普通のことなの?」
「オオカミ!?そっか、由良ちゃんの匣アニマルってオオカミなんだ…」
「ボックスアニマル…?」

由良の質問に答えたわけではないものの、何か知っていそうなくるみの言葉に引っかかり、首を傾げる。それに対しくるみは頷き、詳細は覚えていないけれど、と前置いて匣の基本的な情報を教える。
動物と武器を収納する匣があり、それらを駆使して未来の戦いが行われていること。動物の方は匣アニマルと呼ばれ、登場人物達1人1人が所持しており、今後の物語にも深く関わっているということ。

「みんなそれぞれ違う動物なの?」
「基本はね。例えば武くんは犬と燕、ツナくんはライオン、獄寺くんは猫、みたいな感じで、みんな違う動物だよ。」
「へぇ…」

くるみの答えに声をこぼした由良は小さいながらもしっかり模様が彫られ、高い技術で作られただろう匣を持ち上げ、まじまじと眺める。
こんな小さい匣から、あんな大きい動物が出てくるなんて、不思議。
まるで夢物語の中に迷い込んだような心地で、自分が使ったものではあるものの、魔法のアイテムのようなものに思えた。
そんな由良の中に新しい疑問が浮かび上がる。

「そういえば、くるみの動物って何?」
「えっ?えっと…実はまだ出してなくて、ていうか、渡された時からどれが誰のか分からなかったから、変に触れなくて…」
「あ、そっか。」
「でも由良ちゃんと同じ模様の匣はこっちには1つだけだから、たぶんこっちが私のだと思うし、ちょっと出してみるね!」

疑問を投げかけた由良と同じように自分の匣アニマルが気になっていたらしいくるみは、ソワソワと落ち着きない様子で雪のリングを指に嵌め、由良に今は使わない匣を渡す。そして一度深呼吸をして、リングに炎を灯した。ボウッと音を立てて表れた炎をそのままに、由良がオオカミを出したという匣と同じ模様のものを手にし、穴に炎を流し込むイメージでリングをカチリとはめた。

「わっ…!」
「!おぉ…!」

ドシュッと音を立てて何かが飛び出し、そのままくるみの肩に止まる。突然片方の肩がずしりと重くなり、驚き声を上げたくるみの顔にもふりとしたものが当たる。くるみより一足早くその動物の姿を捉えた由良は自分のオオカミとは違うもふもふしたその姿に感嘆の声を上げた。

「ウサギ、だね…」
「あ、やっぱり?ってちょっとっ…な、なんでぎゅうぎゅう押し付けてくるの…!?」
「懐いてるからじゃない?」
「私達初対面なのに!?ぅぷっ…もうっ!ちょっと降りて!」

ピンと長く伸びた白い耳、同色の体毛を器用に丸め、くるみの肩から落ちないように居座っている白いウサギ。出た時からずっとくるみの顔に自分の顔を擦り寄せるそぶりを見せているため、くるみはまだ全身を見れているわけではないが、耳の長さからしてウサギだろうとアタリはつけていた。しかしあまりにも擦り寄る力が強く、このままではバランスを崩しかねないと危惧したくるみはなんとかウサギを抱え、自分の肩から降ろすことに成功した。
由良のオオカミと比べると小さいものの、それでもヒバリのハリネズミと比べると大きく体重もあるウサギ。前足の下に手を入れ、抱えていたが、不安そうな目で見つめられ、慌てて苦戦しながらも自分の体に引き寄せるように抱え直す。するとウサギも落ち着いたようで、再び自分の顔を擦り寄せるような動きを見せた。

「めっちゃ懐かれてんじゃん。」
「うん。なんでだろう…」
「でもくるみに似て器用そうだし、それだけ懐いてれば戦いやすいかもね。」
「!そうだねっ。」

ウサギの動きに感化されてか、自然とウサギの頭や体を撫でるくるみに、黒曜での戦いで一緒に戦ってくれたオオカミを思い返しながら伝える由良。動物ではあったものの、一緒に戦った時、まるでもう1人誰かと共闘しているかのような感覚だた。痒い所に手が届く、という訳ではないけれど、自分ではカバーしきれない範囲もあのオオカミがいればしっかりカバーできていた。その有り難みを実感しているからこそ、出てきたばかりにも関わらずこれだけくるみに懐き、変化しているはずの環境下でも順応した様子を見せるウサギを見て素直に思ったのだ。

「そろそろ状況整理しようか。」
「う、うん!ごめんねっ、なんか騒がしくしちゃって…」
「いいよ。気になってただろうし。」

未だウサギを撫でる手を止めるつもりはない様子のくるみにこれ以上はと判断した由良が声をかけ、我に返ったそぶりを見せるくるみと今度こそ、現状を一度整理するために向かい合った。

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