リボーン複数主 | ナノ


▼ 標的144

なまえの死から完全にとは言わないまでも、山本のお陰でなんとか立ち直れたくるみ。自分も由良と同じように、この時代の自分が使っていたという部屋を、荷物を置くついでに見に行こうと思い部屋を出た。

「っ!」
「っ!おぉ…川崎。」
「笹川先輩っ?」

自動ドアが開いた丁度その時、廊下側に立っていたらしい了平とぶつかりそうになり、慌てて立ち止まる。
ツナ達に5日後の作戦を伝えた後、飯食って寝る!と大声で叫んで部屋を出ていたはずの了平が何故ここにいるのか。疑問に思い、首を傾げるくるみに渡し忘れていたものがあってな、と言って了平が何かを差し出した。

「!これ…」

何かも分からず受け取ったくるみがよく見てみれば、それは受け取った両掌にすっぽり収まる程度の大きさの箱が3つあった。全て雪の結晶の模様が彫られているその箱は、この時代での戦いにおいて、必要不可欠なもの。

「この時代のお前達から預かっていた、雪属性の匣だ。」
「!私、達…?」
「ああ。」

じっと眺めていたくるみに短く伝えた了平の言葉の中に引っかかるものがあり、声に出せば、一つ頷いた了平が説明してくれた。
なんでも、この時代のくるみと由良は、人知れず、とある研究者に自分達の属性の匣の作成を依頼していたらしい。それはボンゴレ狩りが始まる数年前に出来上がったが、その時既にボンゴレリングを破壊した後だったため、ずっと倉庫に眠っていたとのこと。

「倉庫って、もしかしなくても…」
「ヴァリアーのアジトだ。」

やっぱり!
了平の説明の中に倉庫という言葉が出てきた時、ピンときたくるみは恐る恐る問えばその予想は当たっており、難しい問題に正解した時のようなスッキリとした心地を覚える。
この時代で早くも敵と闘った由良がここに来る直前、ヴァリアーからのメッセージの中におかしな言葉があった。ヴァリアーのアジトを倉庫化するなというものだったが、その時のくるみに心当たりはなかったが、未来の自分が絡んでいるとなると話は別だ。加えて了平の、なんでも3人のうちの1人がゲームでヴァリアーの面々に勝利したから置いていたという説明に頭を抱えたくなった。
それ絶対なまえちゃんだ…!
リング戦が終わった後、未だに理解が出来ない対ヴァリアーとのゲーム対決で、ヴァリアーの幹部全員を負かしたなまえを思い浮かべる。あの時連絡先を交換した記憶はないのだが、きっとあの後もことある毎にゲームで対戦するようになったのだろう。

「あと、この時代の川崎はザンザスに弟子入りしていたからな。」
「ん!?」
「おっと、長居してしまったな。俺は今度こそ極限に飯食って寝る!!ではな!」
「えっ、あっ、ちょっと待っ…!」

ついでと言うように衝撃的な言葉を言った了平は驚いて固まるくるみがフリーズから解放され、どう言うことかと聞こうとするより早く、早口に大きな声で叫んで風のように去っていった。
残されたくるみは引き留めようと伸ばした手を宙に浮かせながら、しかし脳は理解を阻むように正常に機能せず、疑問符で埋め尽くされる。

「くるみ。」
「っ!リボーンくん!」

そんなくるみの足下から可愛らしい声が自分の名前を呼んでいることに気づき、目を向ければボルサリーノを被ったリボーンがこちらを見上げていた。
大きくつぶらな瞳に見上げられ、少しどきりとしたくるみだが、どうしたの?と問いかけながら目線を合わせるためにしゃがみ込む。その様子を見たリボーンはフッと笑う。

「ひとまず大丈夫みてーだな。」
「あっ………うんっ!今の私達が強くなって、敵をやっつければ、きっと大丈夫って分かったから…だから、大丈夫っ!」
「そうか。」

リボーンがじっと見上げてきた真意が分かり、くるみは調子を戻したと伝えるためににこりと笑って元気よく伝えた。それを受けたリボーンは幾分か目元を緩め、安心したような空気を纏う。
リボーンの柔らかくなった空気に、先ほどまで取り乱してしまった手前少し気恥ずかしくなったくるみは無理やり話題を変えるべく、そうだ!と少し大きな声を出す。そしてそのまま自分も部屋に案内してもらおうと探していたのだと伝えれば、そうだろうと思っていたと返され、ついてこいと案内された。

「!くるみ…!」
「由良ちゃん!」

案内された先の部屋に入ろうと一歩踏み出したところで、先に部屋にいたらしい由良と鉢合わせた。向こうもくるみが部屋に入ってくるとは思っていなかったようで、驚いた様子で声をこぼしていた。一足早く我に返ったくるみが荷物を置きにきたのだと伝えれば、納得し、頷いた。

「くるみ、荷物を置いたらトレーニングルームに行くぞ。案内してやる。」
「ありがとう!リボーンくんっ!」
「あ、私もいいかな?」
「いいぞ。」
「ありがとう。」

目元が赤くなっているが、表情はどこかスッキリとしている由良に安心し、そして自分と同じように強くなろうとしている姿に嬉しくなったくるみは、先ほど了平から渡された匣をしっかり手に持ち、自分を待ってくれている由良とリボーンにお待たせ!と声をかけた。

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