リボーン複数主 | ナノ


▼ 標的140

守護者でありながらも、未来に飛ばされてからずっと蚊帳の外となっていたくるみの要望で、この時代で何が起きたのか、説明を受けた由良とくるみ。その中で、2人は己の命を賭けてでも守ろうとしていた大切な友人が亡くなっていた事を知り、驚きと困惑、戸惑いで目を見開き、言葉を発することが出来ずに、ただ黙ったまま次々と聞かされるリボーンの説明を、耳と頭に入れることに精一杯だった。

「状況的に、どちらもなまえの保護に向かうことはできなかった。くるみは山本の父親の件もあったし、由良はそもそも日本にまだいなかったんだからな。」

それでも、聞こえたリボーンの言葉に、静かに拳を握り締める。
脳裏にいつかの大丈夫だよと言って、こちらを安心させるような笑顔を浮かべたなまえが過ぎり、無意識に荒くなる息と、喉に込み上げてくるものをなんとか飲み下し堪えた。そんな2人に、リボーンは硬い声で続ける。

「だからと言って、お前達に自分を責めるなと言うつもりはねぇ。言ったところで、無理なことはよく分かるからな。だからこそ、自分を責めるだけで終わるのではなく、乗り越えるために強くなる必要がある。」

リボーンの言葉を受けた2人だが、反応を示すことはなく、俯いて黙ったままだった。
2人の様子を見たリボーンは流石にこれ以上は酷か、と判断し、纏う空気をそのままに、ツナに声をかけた。

「ミルフィオーレの奇襲は、お前が5日後に納得出来る戦力が確保出来るかをまず考えろ。」
「5日後に予想されるクロームの状態と、お前達の修業の仕上がり具合だな。」
「ああ。」
「そんな、急にそんなこと言われても…」

リボーンとラルの言葉に戸惑うツナだが、「ボスが情けない顔すんな」とリボーンにぴしゃりと言われ、口を噤む。そして不安そうな顔のまま、つい先程まで大切な友人の未来がどうなっているのかを聞き、ショックを受けている由良とくるみに目を向ける。
依然として俯いたままの2人はこの会話に参加する事は出来なさそうだが、作戦には参加する。成長度合いはさて置いて、この時代でこの時代の戦い方を特訓する猶予があった自分達と、今朝来たばかりの彼女達では状況が違いすぎるし、彼女達の方が酷だ。

「なーに!修業なら俺達でなんとかするって!!な!獄寺!」
「あ…ああ。任せてください!10代目!!」

様々な不安と2人への心配から考えがうまくまとまらずにいたツナに、山本の明るい声と次いで力強く応えようとする獄寺の声が入ってきた。見れば、山本は笑顔で、獄寺も安心させるようにこちらを笑顔で見ている。それでも2人はいつもの明るい笑顔ではなく、どこか不安も、心配も感じられる表情を浮かべていた。
そうだ。由良やくるみちゃんだけじゃなくて、俺達の修業だって、まだどうなるか分からないんだ。
いつもなら安心するはずの仲間の笑顔も、今この時ばかりはどうしても不安が拭えない。そうして顔を曇らせているツナに、リボーンから声がかかる。

「そんじゃ、お前らは先に修業始めてろ。ツナ、修業しながらしっかり考えとけよ。山本、お前は先に行ってろ。俺はまだ2人に話すことがあるからな。」
「………分かったぜ、小僧。」
「ちょっ、リボーン!」
「行くぞ、沢田。」
「えっ、あのっ、ちょっと…!」

リボーンの言葉にツナと同じようにくるみを心配そうに見ていた山本だが、俯いたままの彼女を気にしながらも、今は強くならなければ、と頷いた。ツナはまだ考えがまとまらないようで、戸惑いながらも待ったをかけるようにリボーンに向かって声を上げるが、ラルが遮り、そのまま引っ張っていった。それに続くように、遅れて獄寺、山本も静かに部屋を出ていった。
獄寺の家庭教師であるビアンキもリボーンを置いて部屋を出ていき、草壁と了平は今後について話しながら同じく部屋を後にし、残ったのは終始無言で俯いたままの由良、くるみと、リボーンだけとなった。
残ったリボーンが閉まっていくドアから2人に目を向け、硬い声で呼び掛ければ2人ともビクリと肩を跳ねさせ、ゆっくりと顔を上げる。その目には水の膜が張られてあり、今にも溢れそうなほどだが、どちらも意地からか、必死に堪えている。
厄介だな。
内心嘆息したリボーンだが、それは表には出さずに、淡々と話を進める。

「一通り説明はしたが、ここから話すのは今後の事だ。お前達にも5日後の作戦に参加するために、この時代の戦い方をマスターし、更に強くなってもらう。由良は一度戦っているが、向こうの方が圧倒的に数が多いからな。」

その前に、お前達が使っていた部屋を案内するからついてこい。
2人の答えも聞かずに、くるりと振り向いたリボーン。それにグスっと、鼻を啜って反応を返したのは、由良だった。

「分かった………くるみ、先行ってる。」

お互いに、1人になった方がいい。そう判断した由良の考えを察したリボーンは黙ったまま歩き出す。そして、同じく察したくるみは小さく頷いて、2人の後ろ姿を見送った。

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