リボーン複数主 | ナノ


▼ 標的11

わいわい賑やかな校舎をパタパタと早足で歩くのはくるみだ。手には自分の携帯が握られ、閉じ忘れたのかブルーライトで光る画面が手の動きに合わせてちらちら見える。
事の発端は昼休みも半ばを過ぎた頃のこと、いつものようになまえやクラスメイトと昼食を食べ、のんびりしていたところに突然メールの受信音が鳴ったのだ。それは幼なじみであり風紀委員長であるヒバリから特別に使用許可をもらっているくるみの物からであり、鳴った瞬間眉間に皺を寄せ思い切り嫌そうな顔をした。可愛い顔が台無しである。

「くるみちゃん、顔すごいよ。」
「うー………ごめんね、なまえちゃん。折角誘ってくれたのに、呼び出しかかっちゃった。」
「呼び出しって、ヒバリ、さんの?」
「うん。ちょっと行ってくるね。」

メールを確認すればすぐに応接室に来いとだけ書かれており、行かなければ不機嫌な彼に喧嘩を売られるので渋々向かうために教室を出た。今日はなまえが他の子も、と誘ってくれた昼休憩だったのですごく楽しみにしていたし、実際楽しかったのにそれを邪魔され非常に不愉快な気持ちになる。更に自分の為に交流の場を設けてくれたなまえにも申し訳ない気持ちがあり、今度埋め合わせをしようと考える。
なまえといえば、数日前少し様子がおかしかった。確かあの日は風紀委員会の応接室使用許可が得られた委員会議の日だった気がする。由良に確認すれば合流した時点で既に変だったようで、原因はわからずじまいだ。さっきもヒバリの話題の時少しぎこちない様子だった。ヒバリの名前を呼ぶ時も一拍置いていたが、他の人のようにヒバリが怖くてという訳でもなさそうだ。

「考えてもしょうがないか。」

ため息とともに呟いて、今は急いで応接室に向かうことだけを考えた。

「っ!!山本くん!?」

応接室に着くと扉が開いていたのでそのまま中に入ればいたのはヒバリだけでなく、隣のクラスで知り合ったツナ、獄寺、山本が気を失った状態でそれぞれ室内に横たわっていた。くるみの目に飛び込んだのはヒバリによって気絶させられた山本の姿で、思わず叫んでしまったが一向に目を覚ます気配はない。

「恭弥くん、これはどういうこと?」
「彼らが群れていたから噛み殺しただけだよ。いつもと変わらないでしょ。」
「そういう事じゃなくて…!!」

ただでさえ不機嫌だったくるみはやり場のない怒りに拳を握りしめて耐える。ヒバリはさも当たり前かのように答えるが、彼らは事情を知るくるみとは違い、この部屋が風紀委員会のテリトリーとなったことを知らなかったのだろう。何らかの理由で運悪く入ってしまい、たまたま在室していたヒバリに遭遇して殴られてしまったのだ。彼に多めに見ろと言うのは無理な話とは分かっているが、くるみにとって大切な人である山本が傷つけられたことで到底納得などできる話ではなかった。

「あー…いつつつつ…」
「!沢田くん!大丈夫!?」
「川崎さん!?どうしてここに…」

その時、比較的受けた攻撃が浅かったようで気絶していたと思ったツナが起き上がった。気づいたくるみがすぐ様駆け寄り怪我の具合を確認する。いきなり現れたくるみに驚きつつ状況を確認するために周りを見れば、近くで獄寺と山本が気絶していた。

「獄寺君!山本!な、なんで!?」
「起きないよ。2人にはそういう攻撃をしたからね。」
「えっ!?」

慌てるツナにさらりと答えるヒバリは平然としており、逆にその態度がツナの恐怖を更に募らせていく。そこに追い打ちをかけるようにゆっくりしていきなよ、救急車は呼んであげるからという言葉が落とされ顔を青くさせた。

「2人とももう気絶してるし、沢田くんだって反省してる。だからもういいでしよ、恭弥くん。」
「くるみの指図を受ける気はないよ。」

こういう時はテコでも動かないんだから…!
実際くるみの言うことを聞いた試しはほぼないが、今日くらい聞いてくれてもいいじゃないかとムッとしてしまう。

「んなー!?」
「っ!?もしかして…」

そんな時、何かに気づいたように声を上げたツナの視線の先を辿ると、ワイヤーで吊るされたゴンドラに乗った赤ん坊が銃を向けていた。見たことがありすぎる赤ん坊と銃に込められた弾丸の内容をすぐに察し、無意識に声に出していた。ズガンッと音を立てて放たれた弾丸はツナの額に命中し、パタリと倒れてしまう。

「うぉおおおお!!死ぬ気でお前を倒す!!」

と思ったら、パンツ一丁の姿で勇ましく叫びヒバリに突っ込んでいった。初めて見る死ぬ気モードのツナにファン精神から来る感動と、突然の出来事に頭の処理が追いつかずポカンと呆気に取られるくるみと違い、ギャグ?と聞きながらトンファーで容赦なく顎を殴るヒバリ。

「まだまだぁ!!」

衝撃で倒れるもすぐに持ち直したツナはそう叫んでヒバリに一撃入れ、更にどこから取り出したのか黄緑色のスリッパで頭を叩いた。それもたわけが!とのお言葉付きである。叩く時の音が非常に軽く、いっそ清々しさすら感じるほどだ。
心の中で賞賛を送りつつ、獄寺と山本を背負って出入口付近まで運ぶ。幼い頃からのヒバリとの訓練でこれくらい楽にできるようになってしまった。山本が気絶していて良かったと心底思う。

「ねぇ…殺していい?」
「っ!沢田くん逃げて!」

ヒバリから聞こえた本気の声に思わずツナに逃げるよう叫んだ。今まで数度、あの雰囲気を出させたことがあるが、どれもただでは済まなかった記憶しかない。いくら死ぬ気になっているからと言って時間制限のあるツナではやられてしまうのが関の山だ。

「そこまでだ。」

この場に似つかわしくない子供のような高い声が聞こえた。それもそのはず、ヒバリの背後の窓に命綱もつけずに腰掛けるスーツ姿の赤ん坊がやっぱつえーなお前と呑気に話していたのだ。空気を壊されたことで苛立ったヒバリは赤ん坊を攻撃しようとしたが、難なく防がれてしまう。途端嬉しそうに空気を変えるので本当にこの幼なじみは厄介だ。

「お開きだぞ。」
「!」

ジジ、と何かが燃える音が聞こえたと思えばドカン!と窓付近が爆発し、くるみは咄嗟に廊下に寝かせていた獄寺と山本を庇うようにして覆い被さる。音に比べて威力はそこまでなかったようで、爆風だけが襲ってきた。

「行くぞ。」
「えっ?ちょ、ちょっと待って…!」

いつの間に移動したのか座り込むくるみの傍にいた赤ん坊が一言声をかけ、獄寺をズルズルと引き摺って行ってしまった。慌てて山本を背負って後を追う。
ちらりと見た応接室の中は煙のせいでよく見えなかった。きっと無事だろうと思い、今は赤ん坊を追う方を優先しようと山本を背負い直した。

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