リボーン複数主 | ナノ


▼ 標的137

由良が10年後の姿の了平と再会するより少し前、並盛の地下ボンゴレアジトでは、ミーティングルームに集まっているツナ達が、先程受信した黒曜ランド周辺の強いリングの反応をなんとか解析し、クロームや由良がいるのかどうかを確かめるため、ジャンニーニの報告を待っていた。つい先程未来に飛ばされたくるみだが、飛ばされた先がどんなに自分達にとって危険で、恐ろしい状況なのか分かっていた。だからこそ、ここに飛ばされる直前まで一緒にいた大切な友人が、何も分からない状態で恐ろしい敵と戦っているかもしれないという事を知り、安否を願うと共に無事なのかどうかを心配するのは当然のことで、膝の上で組んだ手が微かに震えていた。
それを隣で見ていた山本は、くるみの心情に気づいていたが、くるみを安心させるために声をかけることも、その震える手を握ることもできなかった。
自分はとても臆病で、怖がりなのだとこの時代のくるみから聞いていたから、きっと隣にいる彼女は今、酷く怯え、恐怖しながらも、それでもなんとか己を保っている状態なのだ。ならば未来の彼女から聞いた自分が支えになるという言葉を信じれば、彼女を安心させることは容易いはずなのに、山本の中で、それは今ではないとぼんやりと、だがはっきりとした確信があり、そのせいで、行動が遅れた。

「やはりデータ不足ですね…レーダーに移った黒曜の反応が本物かどうか、計りかねます。」
「どうしよう…もしクロームと由良なら、こんなことしてる場合じゃ…」
「由良ちゃん…クロームちゃん…」

あらゆる手を尽くして解析し終えたジャンニーニだが、その結果は思わしくなく、データが不足しているため分からずじまいで終わってしまった。ジャンニーニの報告を受け、ツナが狼狽え、くるみもか細く友人らの名前を呟いた。
そのくるみの悲しく苦しげな表情に、いてもたってもいられなくなった山本は徐にくるみの手を掴む。

「!」
「っくるみっ…」

驚くくるみに言葉を掛けようと口を開いた時、突如室内にけたたましいブザーが鳴り響き、壁面のモニターにコンマ記号が所狭しと並ぶ。今度は一体なんだ、とツナ達が体を固くし警戒する中、ジャンニーニが緊急暗号通信ですと分析結果を伝える。それを受けたリボーンが何か思い当たることがあるのか、並んでいるコンマの意味を問うた。

「我々の隠語でコンマとは、切り落とした頭…つまり、殺しの暗号。暗殺部隊のコードです!」

そのジャンニーニの言葉を受け、ツナ達の頭に思い当たる面々が過ぎる。それはくるみも例外ではなく、少し前に戦っていたりゲームをしていたりと色々とあった彼らの姿を思い出し、まさかと思いつつもコードを送ってきた暗殺部隊の正体が気になり、身を乗り出す。
その間にも、リボーンがどうだ?と尋ね、ジャンニーニの解読待ちの状態が続く。しかし、さすがメカニックとでも言うべきか、解読はすぐに終わり、送られてきた画像データの暗号コードがボンゴレのものであり、さらにデジタル署名も一致したと伝える。

「っつーことはやっぱ…」
「ボンゴレ特殊暗殺部隊…!」
「ヴァリアー…」

ボンゴレの暗殺部隊と聞いて、思い当たるものは一つしか浮かばない。先程から頭の中で存在を主張する彼らをどこにも寄せられないまま、獄寺、ツナに続き、くるみがその名前を呟いた。その直後、再生します、と言ったジャンニーニがエンターキーを押す。

ぉお゛ぉおい!!!」
「!!」

高性能の機械を使ったためというべきか、再生が始まった途端響く殊更大きな声。機械越しにも関わらず、まるでスピーカーから爆音で音楽を流しているかのような振動、騒音に、ミーティングルームだけでなく、アジト全体の時が一瞬止まった。しかしこれは記録映像のようで、こちらの状況などお構いなしに、音量はそのままに話が続く。

「首の皮は繋がってるかぁ!?クソミソカスどもぉ!!」

パッと映し出された映像に、豪華な装飾の施された室内のこれまた豪華な装飾の高級そうなソファーに膝を立てて行儀悪く座り、勝ち気な笑みを浮かべたスクアーロが映る。声を聞いた時から予想はしていたが、相も変わらず長髪のその姿に獄寺は出やがったと零し、ツナは驚き、山本は嬉しそうにスクアーロの名を呼ぶ。くるみは突然の事に驚き未だ放心状態だった。
その向かい側に座るラルは苛立ちを隠す事なく青筋を浮かべながらボリュームを下げろ!と静かにジャンニーニに指示を出している。しかしそれに答えたジャンニーニのこれでも充分下げているという言葉は恐ろしくて聞こえなかった事にした。

「いいかぁ?クソガキどもぉ!!今はそこを動くんじゃねぇ!!外に新しいリングの反応があったとしてもだぁ!!」
「!黒曜ランドのことだな。」
「!由良ちゃん…」

続くスクアーロの言葉にいち早く理解したリボーン、それを聞いたくるみが漸く放心状態から戻り、友人の名前を案じるように呟いた。そんな彼女に、山本は掴んだままの手に少し力を込める。驚き目を丸くして顔を上げるくるみが何か言うより早く、モニターの方から別の声が聞こえてくる。

「じっとしてりゃわっかりやすい指示があるから、それまでいい子にしてろってことな!お子様達♪」
「ナイフ野郎!」

ティアラを被り、目元を隠した金髪の男、10年後のベルフェゴールがスクアーロの背後から現れ、すかさず彼と一戦交えた獄寺が反応する。ベルフェゴールの言った指示とは何か、と考える間も無く、画面内ではスクアーロの何しに来たという問いに対し暇だから茶々入れと答えたベルフェゴールが喧嘩を始め、それどころではなくなった。数秒前までは静かだったはずの映像は、今やナイフが刺さる音、物が壊れる大きな音が至る所で立ち、荒れていた。

「またこの世で会えるといいなぁ!!それまで生きてみろぉ!!」
「あ、ついでにそっちのクソ生意気な雪の守護者共に、俺らのアジト倉庫代わりにすんなって伝えとけよ。」

最後に不穏な言葉を残し、ブツッと映像が終了した。まるで嵐のような出来事に、ついていけないツナ達は数瞬遅れて状況を理解する。と言っても、ヴァリアーからよく分からない映像が送られてきて、勝手に切れたということだけだが。

「そういえば、あのベルフェゴールって人が言ってたの、どういう意味だったんだろう…」
「そーいえばそうだな。」
「雪の守護者っていやぁ、川崎。お前だろ。」
「わ、私もよく分かんないよ!?今の私に、ヴァリアーとの接点なんてないし…」

急に最後のベルフェゴールの発した意味深な言葉のせいで矛先が向けられたくるみは慌てふためくが、現時点で彼らと接点はほとんどなく、未来に飛ばされたばかりで事情を知らない彼女がこの時代の彼女とヴァリアーの関係性を知る由も無い。くるみの答えにそれもそうかと納得したツナ達は、次にベルフェゴールが言っていたわかりやすい指示というものについて考えていた。すると、ジャンニーニが少し嬉しそうに、部屋の入り口に視線を送りながら、「どうやらあの方のことのようですよ」とツナ達に促した。
その視線をたどり、ツナ達が振り返ると、そこには10年後であっても変わらない様子の見知った顔が、今し方安否を心配していた友人らを連れて立っていた。

「笹川了平、推参!!」
「あー…久しぶり?」
「芝生…!」
「お兄さん!」
「由良ちゃん!!」

元気よく叫んだ10年後のボンゴレ晴の守護者、了平と、その隣にいる由良、そして了平に抱えられ、意識を失っているが外傷はほとんど見当たらないクロームの姿に皆安堵し、立ち上がり駆け寄る。

「由良ちゃん!」
「くるみ。ごめん…」
「私の方こそ…!無事で良かった…」
「大袈裟だって…」

感極まって抱きついたくるみを受け止め、こちらの身を案じ、心底安心したように零すくるみに、小さく返す由良。その声に覇気はなく、てっきり怪我をしているのかと思ったが、何やら様子がおかしいと感じたくるみは、普段なら皺になるからと身なりを気にするはずの彼女が力の限りくるみの制服を握りしめていることも含めて、浮かない表情をしている由良を不思議に思い、首を傾げた。

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