リボーン複数主 | ナノ


▼ 標的132

由良とクロームが、10年後の黒曜ランドでグロ・キシニアと闘う少し前。並盛町地下にあるボンゴレアジトのミーティングルームでは、ヒバリからの共有事項、六道骸の情報についてヒバリの部下、草壁から詳細を聞くべく、ツナや山本、獄寺と共につい先程10年バズーカによって飛ばされたくるみも集まっていた。
先程までこの場にいるはずの由良が見当たらず、一瞬緊張が走ったものの、行先は恐らく黒曜の方だろうとアタリを付けた草壁の言葉を信じ、現在は落ち着いた。そんな中、リボーンがそれで、と声を発する。

「骸に動きがあったってどういう事だ?」
「骸はまだ復讐者(ヴィンディチェ)の牢獄に入ってるはずじゃ…」
「我々もそう思っています。」

リボーンの言葉にそうだ!と続けて聞いたツナに、草壁も頷いた。黒曜でツナを誘き寄せるために一般人も巻き込んだ並中生襲撃事件は、主犯の骸が捕らえられ幕を引いたが、その骸は約10年経った現在もまだ牢獄に囚われたままだった。
その骸が動き出したということで皆驚き、草壁も情報共有に来たのだろう。一体どういうことだと言外に問うてくるツナたちに対し、話し出す。

「5年前、城島、柿本、クロームは、復讐者(ヴィンディチェ)の牢獄へ骸救出に向かい失敗。その後3人は消息を断った……ただし半年ほど前、妙な噂が立った。」
「妙な噂?」

草壁の言葉に引っかかり、声を上げる山本の隣で、くるみは困惑しながらも黙って聞いていた。未来に飛ばされた直後に草壁の話を聞くことになったため、仕方ないと言えば仕方ないことなのだが、漸く思い出したのだ。
そういえば自分は実際の骸に会ったこともなかったし、結局並中生襲撃事件の主犯が骸だったということも由良以外から聞いたことがなかったな、と。
しかしここで骸って誰?と聞いて話の腰を折ることなど到底できず、黙っているしかなかった。

「骸が倒された、というものです。」
「!」

そんなくるみを他所に話は進んでいく。続けて答えた草壁の言葉に獄寺がピクリと反応を示し、ツナもどういうこと?と問いかけた。他の面々も声には出さずとも続きを促す。それに応えるべく、草壁はパソコンを操作し、全員のパソコンにあるデータを表示し、見るよう促した。

「発信元はミルフィオーレ。倒したのは第8部隊隊長、グロ・キシニア。数少ないAランクで、相当腕の立つ強者です。」

骸とつい最近戦ったばかりのツナ、獄寺、そしてリング争奪戦で骸の圧倒的な強さを見た山本は信じられないという表情で、パソコンに映し出されたグロ・キシニアの写真を見る。

「考えられるとすれば、何者かに憑依した骸と戦ったのでしょう。骸が大きなダメージを負ったことも考えられますが、少なくとも死んではいないはず。何故なら我々はその後…」

言葉を区切った草壁はスーツの内ポケットから1枚の写真を取り出し、ツナ達の前に見えるように置く。

「イタリアの空港である男と接触しているクローム髑髏を捉えたからです。」
「ク、クローム!生きてたんだ…!怪我はしてるみたいだけど…」

写真に写るのは遠目から撮られた空港にいるすれ違っている男女の姿。一見よくある風景のように見える写真だが、手前に写るキャリーケースを引いた女性は頭にスカーフのようなものを巻いてサングラスをつけているものの、クロームだと分かる。そしてクロームのすぐ後ろにいるこちらに顔が見えないように背をむけ、ポケットに手を入れたキャスケット帽を被った男に対し、何かを伝えるように口を開いているように見える。
腕を骨折したのか、首から布を下げているクロームがひとまず生きていることにホッとしたツナは、後に続けた自分の言葉にあれ?と違和感を覚え、首を傾げた。何にそう感じたのか、深く考えるより先に獄寺から続いた会話に意識が向かい、すぐに忘れてしまった。

「そうか。骸が死んじまってたらクロームは生きてられねーんだったな。」
「だが、今クロームは行方不明。ってことは、今回動き出したのはこの密会していた男の方だな。」
「!流石です…その通り、雲雀はこの男が骸の『何か』だとふんでいます。」

リボーンの鋭い指摘に感心、納得し、しかし末恐ろしさも感じた草壁は頷き、答えた。

「この男については身元不明で、少なくとも貴方達の知らない人物です。」

写真をしまった草壁は、そのまま今度は別の写真を取り出した。

「これとは別に、骸の手掛かりとして気にしている物がもう1つ、この写真に写っています。」
「あ!」

ペラリと、草壁が見せた写真に覚えがあったツナが声を上げる。以前、ヒバリの手がかりとして見せられたものと同じ、ヒバードが写ったものだった。

「それって、この前見せてもらったヒバードの…」
「はい。骸の手掛かりはこの写真の左端に写っています。」
「左端…?」

草壁の言葉に釣られて、ツナ達が写真の左端を注視する。手前にいるヒバードにピントが合わせられているため、ぼやけてはいるが、確かに背景の木の枝とは違う何かが写っている。

「これが骸!?」
「これも骸の何かです。雲雀はイタリア滞在中にこれの視線を何度か感じ、確信したらしいです。」

運良く我々のカメラに写りましてね、と続けた草壁に、漸く写り込んだ何かが分かった全員は、戸惑いを隠せず明らかに動揺したまま反応を示す。

「でもよ。」
「こいつぁ。」
「フクロウ、だよね…?」

戸惑う山本、獄寺の後に零したくるみの言葉にはいと首肯した草壁はそのフクロウについて話す。

「我々はこれに、骸を文字って名前を付けました。」
「名前…?」

続きを促すように問うたツナに、草壁はひとつ頷き、はっきりと答えた。

「ムクロウ、と。」

直後、ヴーッと何かの機械音が響く。突然鳴った音にビクついたくるみの前に座るラルが、隣にいるジャンニーニに何の音か問う。

「一瞬ですが、データにない強いリング反応が黒曜ランド周辺で感知しました。」
「黒曜ランド!?」

すぐに解析し終えたジャンニーニが答えると、ツナ達が驚き、声を上げた。そんなツナ達に付け加えるようにただし、とすぐにジャンニーニが続ける。

「この辺りは電波障害が酷く、誤表示の可能性も高いです。」
「もう一度、黒曜ランド周辺のデータを分析するんだ。」
「了解しました!」

難色を示しながら話したジャンニーニに、誤表示では無いかもしれないと考えたリボーンが指示を出す。それに対し忙しなくキーボードを叩き、分析をするジャンニーニの横で、ラルが新たな敵かもしれないと呟いた。

「違う。きっと仲間だ…」
「!」
「ツナくん…?」

思わず、といった様子で零したツナに目を向ける獄寺と、声をかけるくるみ。ツナはそれに気づいていないのか、パソコンの画面を見ながら、それでもどこか確信を持ったように続けた。

「ボンゴレリングを持った、クロームと由良かも…!!」
「!由良ちゃんも…」

ツナの言葉に驚き、同じく声を零したのはくるみだ。この時代に来て、行方が分からないと言われていた友人が自分と同じように未来に飛ばされ、その居場所も分かり、ホッとしながらも戦っていると知り、心配になった。
ヒバリとの強制的な手合わせで強くなったとは思うが、それでもやはり不安は拭えない。
くるみは震える手を胸の前で組み、祈るように前に映る画面を見つめた。

prev / next

[ back to top ]



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -