リボーン複数主 | ナノ


▼ 標的127

目に映る景色が突然変わり、対面する人物が先程までの友人ではなく、探している片方の友人に変わっていることで、否が応でも自分が未来に飛ばされたと察した由良は、ひとまず前にいるクロームと情報を共有しようと考える。

「クローム、状況知ってる?」
「少し…」

由良の問いに頷いたクロームは、入れ替わる直前に聞いた由良からの内容を分かる範囲で話す。だが、未来の自分が伝えた話の内容の無さに、聞いた由良は額に手を当て天を仰ぐ。
馬鹿だ、自分…え、何してんの?大事な部分何も話してないじゃん馬鹿なの?
いくら焦っていたとしても、肝心のどこに行こうとしていたのか、恐らくこの時代のアジトだろうが、その場所を伝えていなかったら過去の自分たちに分かるわけがない。未来の自分とて、過去の自分と同じように飛ばされるタイミングが分かっていなかっただろうから仕方のないことだとは思うが、それでも呆れてしまう。
そんな由良を心配そうにクロームが窺う。

「由良、大丈夫?」
「あー、うん…未来の自分の馬鹿さ加減に呆れてるだけだから気にしないで…」
「?うん…」

由良の発言にそんなことないのに、と思いながらクロームは不思議そうに頷いた。
そんなクロームの考えなど露知らず、自分を落ち着かせた由良は手を離し、顔も戻してこの後どうするか考える。
クロームに迎えに行くよう言われて来たと伝えた未来の自分しか知らないアジトの場所に、地下にあるというざっくりとした前情報しかない自分がクロームを連れて出ることはできない。無謀でしかないからだ。
しかし、この場に留まってもいられない。敵がいつ来るか分からないし、10年前よりも荒れ果てている黒曜ランドでは敵と戦うための要塞として成り立たない。いずれにせよ、しっかり衣食住が整った場所に移動しなければならない。
だけど、その場所がこの時代の環境を考えた時に思い浮かばない…

「!由良…!」
「!」

考え込んでいた由良に、クロームの鋭い声がかかる。気づいて顔を上げた由良の目に、白、赤、青が映るより先に、知らぬ声が聞こえてくる。

「まさか、再び相見えるのが10年前の姿とはな…」
「!!」
「っ…」

警戒する2人の前に、コツリと靴音を立てながら一人の男が現れる。赤髪のおかっぱ頭、細いフレームの眼鏡をかけた、薄笑いを浮かべている。

「だがこの情報がガセでなかったことは喜ばしい。あったあーった、本当にあった。」

もったいぶったように話す不気味な男に、各々武器を構える。対する男は余裕綽々とした態度だ。

「クローム髑髏、神崎由良、試食会場。」
「っ…」
「……は…」

男の言葉の意味を理解できずとも、警戒は緩めず無言で睨み付けるクロームと、なんとなく意味を察して不快さを隠さず由良は呟きながらも同じように睨んだ。


過去から入れ替わって来たくるみに事情を説明する前に、草壁の話していた六道骸の情報を共有するためにくるみを連れてミーティングルームに向かった一行。情報の共有ということで、自室にいるラルと、くるみ曰くまだ寝ているらしい由良を呼びにツナが行くこととなった。

「くるみ、ここに来る直前何してたんだ?」
「その怪我…まさか戦ってたのか…!?」

ツナが戻るまでの間、リボーン、山本が尋ねる。問われたくるみはえっと、と困ったように笑う。その顔には大きめの絆創膏が貼られてあり、制服のスカートから覗く足には包帯が巻かれていた。

「ここに来る直前は普通に登校している途中だったよ。この怪我は、戦っていたというか…恭弥くんの八つ当たりに巻き込まれたというか…」
「ヒバリの八つ当たり…?」

首を傾げる面々に苦笑しながらうんと頷いたくるみはなぜ怪我ばかりなのか、その経緯をかいつまんで説明した。
山本達が行方不明となってすぐに、今度はなまえが行方不明となったこと。どこからか情報を仕入れたヒバリが苛立って、何か知っていると当たりをつけて喧嘩を吹っ掛けてきたこと。それがここのところ毎日続き、容赦ないヒバリの攻撃で体中がボロボロになっていること。
事情を知った面々はひとまず過去に新たな敵が現れたわけではないという事にホッとし、次いでヒバリの横暴ぶりに厄介な事になったものだと頭を悩ませた。10年後の姿のビアンキ、フゥ太、そして今までの行動から察しているリボーンは、幼い子供のようなヒバリのやり方に少しの微笑ましさを感じつつ、なまえの事となると手に負えないのはいつもの事かと半ば諦めている。対する獄寺や山本はヒバリの横暴さに対し、獄寺はドン引きし、山本はくるみの怪我は大丈夫か、心配そうに聞いている。

「みんな!」
「ツナ!」
「10代目!」
「ツナくん!」

そんな中、ラルを引連れて戻ってきたツナが顔を青くして呼びかける。どうしたのか見つめるくるみ達に、ツナは震える口を開いて言葉を紡ぐ。

「由良が、いないんだ…!」
「!」

ツナの言葉に皆驚き、どういうことかと詰め寄る。しかしツナも分からないけど、と前置いて部屋を訪れたら既にもぬけの殻だったと告げる。

「あ!」
「どうしたの!?ジャンニーニ!」
「1時間程前に、ハッチが開けられた形跡があります!それも、神崎さんのデータです!」
「なんだって!?」

ツナの話にもしかして、と調べたジャンニーニが声を上げ、告げられた言葉にツナ達は絶句する。詳細を把握出来ていないくるみだが、由良が単独行動を取ったことは間違いなく、そして前世の知識から今の未来の並盛がとてつもなく危険な状態にあると分かっているため、ひゅっ、と息を呑む。
そんなくるみの周りでは、俺達も外に行かないとと慌てるツナや獄寺がいる。

「落ち着いて下さい。」

と、そこに入るのは今まで黙って成り行きを見ていた草壁の声。どういうことかと皆が目で訴える中、草壁は恐らく、と話し出す。

「神崎さんも、我々と同じように骸の動きに気づいたのかもしれません。」
「!骸の…?」

素早く反応したツナにはい、と短く答えた草壁は続ける。

「彼女はクローム髑髏とは違った方法で、骸と連絡を取ることが出来るのです。」
「!なんだって!?」
「アイツ、そんな事出来たのかよ…」

突然知らされた情報に驚き声を上げるツナ、獄寺らを横目に、リボーンがひとまず座って話そうと声をかけ、皆部屋の中央に集まった。

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