リボーン複数主 | ナノ


▼ 標的126

由良が未来に飛ばされる少し前、並盛の地下にある風紀財団のアジト内では、ある一室で長であるヒバリと、補佐の草壁が話していた。

「マークしていた男が動き出したと、イタリアから報告がありました。」
「ここへ来るのかい?」
「まだ分かりませんが、油断は禁物。この情報は沢田側にも提供すべきかと。」

広い和室の出入口に近い場所ですぐ動けるよう浅く座って報告する草壁に対し、ヒバリは座布団に座り、任せるよと一言伝える。そんなヒバリの元に、パタパタと羽を動かしてやってきたのは黄色く丸いフォルムが特徴の小鳥、ヒバードで、当たり前のようにヒバリの頭に着地し、身を沈めた。ヒバリは気にすることなく話を進める。

「確かアレがあったはずだ。」
「へい。ヒバードとの撮影に成功したものが1枚。」

草壁の答えに対し、ヒバリは無言のまま視線だけ草壁に向けた。草壁はそんなヒバリに一礼して部屋を後にしようと立ち上がり、体を反転させたところで気づいた。

「みょうじさん…」
「あ、草壁さん。えと、お茶持ってきたんですけど、飲みませんか…?」

ヒバードがやってきた方向と同じ、部屋の入口に立っていたのはお盆に急須と湯呑みを乗せて運んできたなまえだった。作れなかった分片付けだけでも、と言われ、先程まで食器洗い等を任せていたが、どうやら終わったらしい。片付けだけでなく食後のお茶の用意もしていた彼女のお盆に乗っている湯呑みはちょうど3つあり、草壁の分も用意していたことは明らかだった。

「申し訳ありません。自分はこれから出る予定でして…」
「あ、そうだったんですね…!すみません!」
「いえ。また機会があればその時は是非。」
「はい!」
「!……では、失礼します。」

背中から鋭い視線と微かな殺気を感じ、早口に伝えた草壁は一度ヒバリとなまえに一礼してから退室した。中学の先輩であり、ヒバリの右腕のような存在の草壁に敬語を使われ、先程のような対応をされることに未だ慣れずにいるなまえは慌てて小さく礼を返した。ヒバードに校歌を教えるため、応接室に行っても、基本ヒバリしかおらず、未来に来て漸く接点ができたことも関係しているだろう。そんな草壁が閉めた襖をぼんやりと眺めていると、後ろから声がかかる。

「なまえ、こっちにおいで。」
「ナマエ!オイデ!」
「あっ、はいっ…!すみません!」

カチャリ、と食器が跳ねる音を立て、慌てて慎重に持ち直し、ヒバリの元へ向かった。


同時刻、ボンゴレアジトでは、うまく誤魔化すことが出来なかったくるみが、まるで尋問を受けるような形でツナ達からの質問攻めに遭っていた。

「由良は本当に寝てるだけなの?」
「うん!そうだよ。」
「にしては遅くねーか?」
「うん。いくらなんでも、由良姉がここまで起きてこないのは珍しいよ。」
「そ、そんなことないよ!」

その内容は全て、今も寝ているらしい由良の事だった。少し寝ると伝えていたはずの由良だが、皆が朝食を食べ終えても起きてくる事はなかった。心配した京子、ハルが様子を見てこようとしたのを必死に止めたくるみを訝しんだ獄寺を筆頭に、くるみに何か知っているのか聞くが、くるみははぐらかし、なんとか誤魔化している状態だった。

「でも、もしかしたら具合悪いのかも…」
「そ、そういうんじゃないんだよ!?」
「おい川崎。何か隠してることがあるならさっさと白状しやがれ。」
「な、なんにも隠してなんかないよ!?」

必死に誤魔化すくるみの様子に、何も無いと信じる者は誰もおらず、皆言葉だけでなく目でも早く話せと訴えている。しかしくるみはそんな視線に気づいていないフリをして、引き攣る頬を動かし笑みを浮かべている。
どこまでも隠し通そうとするくるみの様子に、不安や心配から詰め寄ろうとするツナよりも先に、気づいた山本が守るように前に出る。

「まーまー、一旦落ち着こうぜ?」
「山本!」
「武くん…!」

驚いて目を丸くするツナやくるみの間に立ち、特にヒートアップしがちな獄寺を宥めるためか両手を前に出している。しかしその顔は笑っていて、テンポが途切れたからかそんな山本の顔を認めたツナ達は少し落ち着いた。そんな中、獄寺だけは1人落ち着いてられっか!と怒鳴っていたが、山本はまーまーと宥める。
上手く誤魔化せず困惑していたくるみは、助けるように前に出てくれた山本に驚きながらも、有難くも感じホッと息をついた。

「武くん…」
「失礼。」
「草壁さん!?」

そんなくるみが山本に声をかけると同時に、ダイニングの入口から別の声が聞こえてきた。くるみの声はその声の主、草壁に驚いたツナの声で気づかれず、掻き消えた。

「どうしたんだ?」
「お取り込み中のところ、申し訳ありません。共有したい情報があり、お伝えしに来ました。」
「情報?」

突然の訪問者に皆が不思議がる中、代表して首を傾げ声を発したツナ。草壁ははい、と頷いて、真剣な顔つきで口を開いた。

「六道骸が動き出した、という情報です。」
「えっ!?」
「六道、骸だと…!?」

草壁から出た思わぬ名前に、事情を知る面々の間で緊張が走る。声を上げたツナ、獄寺だけでなく、山本も息を呑み驚いている。

「情報共有なら、ラルも呼んだ方がいいな。ミーティングルームに移動するぞ。」
「そうだね。」

驚き固まるツナ達を他所に、リボーンが気を利かせて話し、くるみもそれに同意した。そのまま流れるようにダイニングに残っていた京子達、事情を話せないメンバーに声をかけに行く。
由良ちゃん、大丈夫だよね…
頭に過ぎった由良の姿に一瞬不安になるも、首を振って消し去る。その様子に気づいたのは山本で、声をかけようと近づいた時だった。

「くるみ!」
「へっ?あ、武くん!みんな!?」

ぼふんっという爆発音と共に辺りが煙に包まれる。咄嗟に声を荒らげる山本に聞こえたのは、先程まで聞いていた人物と同じ声だが、伝わる雰囲気、空気感が異なっている。
それを裏付けるように、煙が晴れた先にいたのは山本らがよく知る、この時代にいた頃より幼い、過去から飛ばされたくるみだった。

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