リボーン複数主 | ナノ


▼ 標的122

修業が始まり、3日が経過した。
進捗として順調かと聞かれればイマイチ、という具合だ。始めて3日、ツナはヒバリと休みなく殴り合った後、ラルによる超スパルタな特訓を行って体はクタクタの状態だが、成果はまだ出ていない。
山本はリボーンだけでなく、狙撃の腕が立つくるみの協力のもと、四方八方から飛んでくるペイント弾を避けるか当たらないように斬るかしなければならない修業を始めていたが、手加減なしの容赦ない2人の攻撃についていくだけで精一杯といったところだった。
獄寺はビアンキが3日あれば自身の匣兵器でもある蠍を20匹全て全滅でき、由良の協力のもと幻術の耐性をつける段階まで出来ると踏んでいたのだが、ビアンキへの確執が強いのか、それとも別の理由か、未だに3匹しか倒せていない状況だった。

「………………。」
「寝てるねぇ…」
「器用に箸持ったまま寝てるよ。」
「よっぽど疲れてたんだね。」
「修業始まって3日経ちますけど、毎日こんな感じですもんね…」

例え修業の成果が思わしくなくとも、体は皆酷使してクタクタなのだ。食事を食べ終え、挨拶をする前に机に突っ伏して眠ってしまったツナ、山本、少し離れたテーブルにいる獄寺の様子に驚く京子、ハルと、苦笑を零す由良とくるみ。
疲れているからと気を遣う京子、ハル、くるみ、由良とは対照的に、珍しく不機嫌さを隠さず顔を歪ませたビアンキへリボーンが上手くいっていないのかと声をかける。それに対し素直に頷いたビアンキは現在の実績と、やる気があるのかという点に言及する。聞いていた由良は別の意味で苦笑を零すが、彼女がなにか言う前にがたりと音が立つ。

「リボーンさんすみません。お先に失礼します。」
「ああ。」
「あ、隼人兄、京子姉達がお茶を…」

こちらに目を向けることなくリボーンに向けて伝えたのは獄寺で、フゥ太の話を最後まで聞く前に部屋を出てしまった。それに続いてビアンキも不機嫌なまま先にお風呂に行くと告げて出ていってしまった。

「由良。お前から見て獄寺はどーだ?」

京子、ハル、くるみが食後のお茶を用意している間、リボーンに声をかけられタイミングを失った由良は目を瞬かせ、少し考え込む。が、すぐに答えが出てきたためすらりと言葉を発した。

「間に合うと思うよ。現状がどうであれ。」

由良の言葉は、ツナのような超直感によるものではなく、ただ経験から出てきた言葉だった。
この時代で獄寺やビアンキと任務を共にし、行動する機会が多かった彼女は、ツナや山本に次いで、守護者の中で獄寺の変化や成長を見て、実感していた。その中でも異母姉であるビアンキとの確執については、詳細は分からないにしても解決していることを理解しているし、獄寺は反抗はするが必ず別のやり方を見つけ強くなると知っていたので、ビアンキの様に特段気に掛けてはいなかった。
第一に、この時代の様々な苦楽を共にし、時に乗り越え、時にぶつかり合って過ごしてきた獄寺ならまだしも、過去の獄寺は山本が指摘したらしい言葉のとおり、ツナ以外をまだ懐に入れらていない。今いる獄寺をどうにかできる存在はツナだけだ。しかしそれも、現状難しいだろう。そんな中、獄寺から見れば関係の浅い、しかも獄寺が敵視する年上の由良から何か言われて素直に従い、変えるとは到底思えない。
それはリボーンも同様に思っていたようで、1つ頷いた。

「そんじゃあ任せたぞ。」
「あんまり期待しないでね。これは獄寺自身の問題でもあるから。」

リボーンに苦笑を返した由良は今度こそくるみ達の手伝いに向かった。
京子達が用意したお茶は、結局寝てしまっていたツナ、山本には振る舞われず、くるみ、由良の計らいで京子やハル、ランボ、イーピンとすっかり子供達の保護者代わりとなっていたフゥ太は先に部屋を出ていった。後に残ったのは洗い物をすると言ったくるみ、由良と、寝てしまったツナ、山本を起こしておくからと言ったリボーンだ。

「起きろダメツナ。」
「ふぎっ!?」
「リボーンくん!?」
「ちょっと乱暴過ぎない!?」

その宣言通り、リボーンはツナを起こしたのだが、そのやり方が良くなかった。その小さな足のどこにそんな威力があるのかと言う具合でツナの顎を蹴り上げたのだ。赤く晴れ上がったツナの顎を痛々しく思った由良、くるみは思わずリボーンに詰め寄るが、これが俺のやり方だと返されるだけで反省の色は見られなかった。
久々に見るツナにだけ行われる家庭教師様の横暴さに呆れつつ、どこか懐かしさを感じた2人はそのせいか許しかけてしまったが、それは良くないと首を振り、もう一度何か言おうと口を開くがその前に、完全に覚醒したツナが話す方が早かった。

「そーいや、ビアンキと獄寺君の例の件って何の事だよ…」

問い掛けではあったが、それに反応したのはリボーンだけでなく、由良やくるみもだった。しかし何か言うでもなく、リボーンの聞いていたのかという問いに一瞬ね、と答えるツナのやり取りを静かに聞いている。
リボーンは先程、ビアンキがお風呂に行くという前に明らかに獄寺と何かあったような口振りでこのまま修業を続けられそうか尋ねていた。それに対し、この時代では乗り越えられたことを知っていたビアンキは問題ないと答えたが、事情を知らないツナが心配し、気にかけるのも当然の事だった。案の定最近の獄寺君はおかしいよ!と言って何があったのか聞いている。

「!くるみ…」
「!分かった…」

心配で問うてきたツナにリボーンがこのまま誤魔化すのはツナの修業にも影響が出ると判断し、仕方ないと話そうと口を開く前に、由良はぼんやりと、しかしはっきりと気配を感じ、隣にいたくるみに声をかける。気づいたくるみも頷き、2人に声をかける。

「2人ともごめんね。獄寺くんの話、私達は聞かないでおくね。」
「えっ!?どうして…!?」
「私ら、この時代の獄寺にもビアンキさんとのこと話してもらってないからね。過去の獄寺なら余計に気にするでしょ。」
「で、でもっ…」
「ああ。分かったぞ。」
「リボーン!」

ツナが縋るように言う前に、リボーンに遮られ、抗議の声を上げる。2人はリボーンにありがとうと早口に言ってダイニングルームから出て、自室に向かった。

「なんで…」

残ったツナは、パタパタと足早に移動した2人の様子を眺め、戸惑いと、苛立ちを混ぜたような声を零す。
気づいたリボーンが見上げれば、ムッとしてはいるがどこか傷ついたような、ショックを受けたような顔をしたツナがいた。ツナの気持ちが手に取るように分かったリボーンはまだまだガキだな、と心の内で独りごちて、仕方がないと嘆息した。

「ツナ。アイツらのことはほっとけ。」
「っでもっ…獄寺君のこと、心配じゃ…!」
「だからおめーはガキなんだ。」
「っな………はぁ!?」

ツナの言い分は全て聞かずとも分かっていた。修業が始まり、成果としてイマイチでもなんとか前に進もうとしている自分達。だが、その中で獄寺は明らかに普段と違う様子で、疲れているからという理由で片付けるには無理があった。ツナだって、山本だって疲れてはいたが、それにしても獄寺の様子はあまりにも違いすぎて、ずっと気にかかっていた。
そんな中で、リボーンとビアンキの会話があったから、無礼を承知で、リボーンに尋ねたのだ。自分でなんとかできるなら、力になれるなら知るべきだと思ったから。
しかし、それは自分だけだったのか。過去の由良とくるみなら、きっと同じように心配して聞こうとしたはずなのに、何故この時代の彼女達は聞かなかったのか。獄寺の事が心配では無いのか。気にかけていないのか。疑いたくはないがそんな思いがふつふつと湧いて出てくる。

「俺もそー思うぜ。」
「!山本…」

難しく考えていたツナに、先程まで寝ていたはずの山本の声がかかる。起きてたの!?と驚けば、今さっきな、と返ってきてそのまま伸びをした。そんなやり取りを見ながらリボーンは静かに口を開いた。

「確かに、今のお前から見れば、アイツらは薄情に映るかもしれねぇ。でもアイツらだって心配してないわけじゃない。特にビアンキと一緒に担当してる由良はな。」
「だったらっ…」
「だがな。」

そこで一度区切られ、ツナも山本も次の言葉を待つ。

「アイツらは、乗り越えられた獄寺を見てきたんだ。例え時期が少し早くとも、いずれは乗り越えなければならない問題なんだ。それが今か先かの違いなだけだ。アイツらは先の獄寺を見て、今の獄寺は心配しなくても問題ないと判断したから聞かなかったんだ。」
「……………。」
「小僧の言うとおりだな。俺も2人が獄寺を気にしてないから聞かなかったんじゃなくて、聞かなくても獄寺なら大丈夫って思ったから席を外したんだと思うぜ。くるみは結構聞いてもいいかとか気にする方だろーし。」
「急に惚気んな。」
「へへっ。」

からかうように山本に言ったつもりだったリボーンだが、返ってきたのは照れたように笑う山本で、しかしそれはどこかいつもと違うように見えた。どうやらこの時代のくるみと話したことで何か変化があったらしい。
山本は思い悩むこともあるが、解決策を見つけるのも早い。心配はいらないだろうと思っていたが、それはどうやら正解のようだと、ツナに目を向ける。
リボーンや山本の言葉を聞いて、納得したような面持ちでおり、こちらも問題なさそうだと判断したリボーンはふっ、と軽く笑んだ。

「手間かけさせんな。」
「ぶっ!」

ようやっと理解したツナに、それでも手間をかけさせられたのはムカついたので頬に容赦なく蹴りを入れたリボーンは抗議するツナの声を右から左に聞き流し、獄寺とビアンキの間にある件に関して話し始めた。

prev / next

[ back to top ]



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -