リボーン複数主 | ナノ


▼ 標的121

リング争奪戦から凡そ10年後。裏社会では争奪戦を行ったボンゴレだけでなく、マフィアの全てが各七属性に当てはまるリング、それと同じく当てはまる匣が重要視され、戦いに広く流通していた。リングはファミリー内で代々伝わる物も多かった為か、フォーカスが当てられたのは突如として現れた匣の方だった。
匣は元々4世紀前にとある生物学者が残した343 編の設計図が元となっていた。その設計図だが、当時の技術では追いつかず、荒唐無稽な内容だと相手にされず、数年前まで倉庫に眠っていた。
それに陽の目を浴びせたのは3人の科学者。イノチェンティ、ケーニッヒ、ヴェルデ。彼らは匣の動力源が多くのファミリーが持つリングが灯す炎に関係するのではないかと考えた。彼らの実験は密かに行われ、つい最近まで安価でマフィア達に売られていた。しかし3人のうち2人が変死した。

「残ったケーニッヒは地下に潜り、今も匣の研究を続けて出来たものを闇の武器商人に流しているらしいわ。」

元々あったオリジナルの343編の匣でもあるアニマル匣と呼ばれるものの一つ、蠍を肩に乗せて説明するビアンキと、その説明を何故か座り込んだ状態で聞いている獄寺を眺めつつ、由良はある人物を思い出し、目を細めた。

あれは確か、高校を卒業したあたりだっただろうか、それこそ匣が密かに出回り始めた頃だったように思える。
なまえやくるみが話していた未来編と呼ばれるものが訪れず、遂にマフィアとして動き出すという時、いずれ必要になるだろうリングを探したが、自分達の属性だろう雪のリングが一向に見つからなかった。このままではボンゴレリングが壊れてしまえば自分達は名ばかりの守護者となり、過去からボンゴレリングを持ってきたとしても匣がなければ役に立てない。
そう考えた由良、くるみは匣の研究をしていた3人の科学者のうち、リボーンと関わりのあるヴェルデを頼った。
そんな彼との初対面は非常に衝撃的だった。
この時代のリボーンと同じ背丈でありながら、言動は到底その姿のように見えない彼は、確かに科学者らしいもので、会って数秒で接し方を改めた。当時由良はリボーン含め、彼らがどういう存在なのか知らなかった。それはくるみも同じだったようで、彼に会って初めて理解したと言っていた。彼は姿が赤ん坊でも、中身は成熟し、自分達よりも何倍も経験を積んで、長い時を過ごしていた人間なのだという事を、リボーンと同じくアルコバレーノと呼ばれた天才科学者、ヴェルデに出会ったことで嫌という程感じさせられた。

『私がお前達に協力したところで、それはつまりリボーンの利に繋がるということだろう。奴のメリットになるのは癪だからな。お断りだ。』

言っている内容は子供のわがままのようなものなのに、彼が纏う空気はどこか威厳のようなものが感じられ、空気に圧された由良もくるみも、最初は大人しく引き下がってしまった。しかし彼は科学者で、当時匣研究の為に資金は常に不足していたし、何より自分達は絶好の研究材料だった事から、それを存分に使って最後には協力を得られた。
マーモンやコロネロといったリボーン以外のアルコバレーノに会った事もあったが、2人はどこか子供らしいというか、人間らしい所が見えて可愛らしい部分もあった。しかしヴェルデは違った。彼は常にメリットかデメリットかを考え、無駄な物は徹底的に排除する、非常に効率重視の偏見ではあるものの科学者らしい考えの持ち主だった。だからこそ、言動は他のアルコバレーノと似たようなものでも可愛らしいものではなく、成人した人間と接しているような気分になったのだろう。
文句を言っていたヴェルデだったが、彼にも科学者としてのプライドはあるようで、頼んでいた匣は自分達の希望通りいや、それ以上のものが出来上がっていた。何かあった時の為にと複数個頼んでいたからか、それともリボーンの身内に近かったからか、請求された費用は莫大だったが、それ程の価値はあった。
ちなみにそれが、ラルに伝えた秘策でもあった。

「イノチェンティについては分からないけど、ヴェルデさんなら会った事あるよ。」
「!神崎…」
「由良、早かったわね。」
「確認だけだったので。特に問題ありませんでしたよ、すぐに始められます。」
「ありがとう。」

物思いに耽っているような獄寺と、対峙するビアンキに声をかけた由良は少し驚いたように見る2人に密かに似た者同士だと感じつつ、移動しましょうと伝える。頷くビアンキに反し、獄寺は理解出来ていないようにどういう事だと眼光鋭く唸る様に聞くが、由良がそれに怯えるはずもなく、警戒しキャンキャン吠える犬のようにおいだのなんだの言ってくる獄寺を華麗に無視し、獄寺の腕を掴み、持ち上げた。

「はい立ってー。」
「っおい!」
「はい行くよー。」
「離せよ!おい!」
「いいから歩く。」

そのまま引っ張ってここに来る前にいた嵐(ストーム)ルームへ向かう由良。その後ろを文句を言いつつもついて行く弟の姿を見て微笑ましく感じたビアンキは少し口角を上げた。

「じゃ、ここにいてね。」
「おいちょっ、待てコラ!」

引っ張っていた腕を少し強めに引いて嵐(ストーム)ルームに放り投げ、文句を言う獄寺の声を右から左に聞き流しながら扉に鍵をかけた由良はビアンキが居るだろう上階に上がる。部屋に入れば案の定ビアンキがいて、下を覗き込めば砂嵐が吹き荒れかろうじて獄寺の姿が確認できる。

「くそっ!前が見えねぇ…!なんだここは…!」

ビュオオオオ!という風の音に紛れて戸惑う獄寺の声がスピーカー越しに聞こえる。先程確認出来なかった音声も問題無いようだ。

「10年後の貴方が特注で作った部屋、嵐(ストーム)ルームよ。」
「!俺が…!?」

戸惑う獄寺に、ビアンキがマイク越しに説明する。その姿は先程までと違い、どこか冷たさを感じさせるもので、彼女が任務を遂行している時のようだった。

「足場も視界も悪い砂漠の嵐を再現したの。そこにいるのは貴方だけじゃない。私の蠍も20匹いるわ。」
「なぁ!?」

何時になっても慣れないなぁ。心の中で少し困ったように呟いた由良、未だ戸惑いが隠せないでいる獄寺を置いて、ビアンキはそのまま話を進めていく。

「貴方のノルマは、1分以内に20匹の蠍を全滅させることよ。それが終われば、次は由良に幻覚を使って貴方の幻術の耐性を上げてもらうわ。」
「えっ…」
「なっ!あのカテーのを1匹当たり3秒で!?しかも幻術まで使うのかよ!」

ビアンキの言葉に驚いたのは獄寺だけではなかった。後ろで聞いていた由良もそれは初耳だとビアンキに目を向けるが、由良の戸惑いの言葉が聞こえていなかったのか、ビアンキは振り向かない。

「大体俺はなぁ…!」
「私の事は憎んでいてくれて結構よ。当然よね。私は貴方とは違い、お父様と正妻の間に生まれた娘ですもの。」
「!!」
「ビアンキさん…?」

ビアンキの言葉に明らかに反応を示した獄寺、そして漸く普段とは違い、苛立っているように見えるビアンキに声をかけた由良。しかし今のビアンキには見えていないようで、始めましょうと言って由良が置いていたこの時代の獄寺が考案したSISTEMA C.A.Iを送り、強制的に獄寺の修業を始めた。

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