リボーン複数主 | ナノ


▼ 標的118

ヒバリによる強制的な特訓というよりも一方的な殴り合いの最中、幻術、そして死ぬ気の炎を灯して戦うことに成功したくるみと由良だったが、思ったよりも成果は思わしくない。
というのも、理由はそれぞれあるが、共通しているのは1つにまずヒバリが成長しすぎており更に手加減していない為単純に力で負けてしまうこと。もう1つはそれに少し関連しているが、激しい攻防の中未だ慣れない死ぬ気の炎を常時リングに灯して戦うことに体も心も追いついていないこと。そして最後にヒバリ相手だからか、それともリングが2つになっているからか、ヒバリよりも炎が微弱なことにあった。
ただでさえくるみと由良、ヒバリの間には大きな戦力差があるにもかかわらず、由良にはそれらに加えて、これまでの課題でもある戦闘中の更に高度な幻覚をタイムロスなく発動するという問題も残っている。そのため同じようにヒバリと相手をするくるみ以上に体力、気力共に激しく消耗していた。

「っ!またっ…!」

一時でもヒバリを足止めできた極寒の世界の幻覚はここ数日でコツを掴めてきたのか、意識せずとも頭の中に詳細が浮かび上がり、そのまま発動することができた。しかし相手は単調な機械ではなく自身と同じように成長する人間であり、自分より数段格上のヒバリだ。由良がコツを掴み、何んとなくものにできた時にはもう攻略されており、完全に不発に終わってしまう。悔しそうに顔を歪める由良にヒバリは何を言うでもなくチラリと視線をやるだけで、すぐにくるみのもとへ向かう。
それすらも、自分の無力さを痛感し、焦る要因へと変わる。そのまま薙刀を握る力を強め、指に嵌めたリングに炎が灯るのを感じながらくるみと応戦中のヒバリに向かって大きく振りかぶる。

「っつ…!」
「!由良ちゃん!」

しかしそれは難なく防がれ、後ろ手で振り上げられたトンファーと薙刀の刃先が交わり、キィンッと高い音が響く。由良が限界に近いと悟ったくるみが近づこうとするが、それを許すヒバリではなく、隙を狙ってトンファーが死角となった下から振り上げられ、それを一歩下がって避ける。

「っ…」

その風圧だけでも怪我をしてしまいそうな程の重い一撃に息を呑み、汗がこめかみから頬を伝う。しかしそのままではヒバリの格好の餌食となってしまうので、反撃をするべく炎でコーティングし、少し強化された銃を構える。
対するヒバリは数日前と変わらず、いや、寧ろ不機嫌さが増しているように殺気立っており、まるで射殺さんとばかりに睨み付けている。ヒバリの機嫌の悪さに比例して、ヒバリの攻撃の精密さ、威力共に高くなっており、これまでかろうじて避け反撃に転じていたくるみも今は防戦一方で苦しめられている。
しかしこれ以上は、由良の体は保たないだろう。そう判断したくるみはヒバリを一人相手取るためにも懐に飛び込んでいく。それを予想していたかのようにヒバリからトンファーが振り下ろされるが、それを銃をクロスするようにして防ぎ、右からくるトンファーを咄嗟に充填した弾丸を放って防ごうとするが、XANXUSの死ぬ気弾のように死ぬ気の炎を蓄積したレーザーのような威力はないただの弾丸では弾かれてしまう。それを内心舌を打って認めたくるみは右腕をトンファーが当たる直前に横に滑らせ、銃を持つ腕に力を込めて何とか防いだ。しかしヒバリの一撃の方が重く、防ぐための銃もくるみの力が弱いせいで弾かれ、手からすっぽ抜けてしまった。

「あぁあっ!もうっ!」

苛立ったように声を上げたくるみよりも早く、隙を見せた彼女にヒバリのトンファーがすかさず襲い掛かってくる。それを右腕を垂直にして受け止め、左腕も戻し、足元に数発発砲してヒバリを怯ませ後退する。素早く銃を拾い、荒い呼吸を整えつつ、ヒバリの奥で先ほどから薙刀を支えに肩で息をする由良に視線を向け、大きく息を吸った。

「由良ちゃん!ここは私に任せて行って!」
「!でもっ…」
「由良ちゃんの気持ちは分かるけど、これ以上やったら由良ちゃんの体壊れちゃうし、今日は行かなきゃいけない日でしょ?」
「っ…」

くるみの言葉に悔しそうに唇を噛む由良は顔を俯かせ、やがてごめんと一言呟いて出口を目指す。それを見逃すヒバリではなく、くるみよりも近い位置にいた彼はトンファーを振るおうとするが、それよりも早くくるみが間に割って入り、蹴って防ぐ。ちょうどその時屋上のドアがパタンと閉められた。

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