リボーン複数主 | ナノ


▼ 標的117

ツナがヒバリに強制的に殺意を向けられ特訓を始めたことで、獄寺と山本の修業も始まった。それぞれ修業する場所に移動をとなったが、由良とくるみはこれまでツナの修業をしていたラルに呼び止められ、その場にとどまることになった。
室内にはヒバリ、草壁、遠くに見学に来たフゥ太とランボがいる状態になったところで首をかしげる2人にラルは真剣な表情で口を開いた。

「ここに来るまで、ボンゴレ10代目のファミリーについて粗方情報は入れてある。今の雪の守護者であるお前たちのことも、だ。が、ここにきて実際お前たちを見て、現時点でミルフィオーレを討つための戦力になるとはとても思えん。」

それはそうだろうな。
2人は声に出さずとも同じように思い、内心息を吐いた。
2人とて、考えなかったわけではない。何せ10年前と今とでは、状況が違いすぎるのだ。この時代で必要なリングがそもそもボンゴレリング以外存在せず、何とか使える炎ですらうまく扱えず、片や反動で寝込み、片や10年前よりも扱えるようになった幻術を使おうにも長期間使うことができないという守護者としてあるまじき体たらく。ラルの言葉は昔であれば落ち込んでしまうものだったが、今となっては納得してしまうものとなっていた。
ラルはそのまま本当にこのままの状態で戦うつもりかと問うてきた。それに即答はせず、互いに視線を合わせ、どう答えるべきか悩んだ。が、急かされるだろうと由良が口を開いた。

「もちろんこのままでいいとは思ってない。だから私達も強くなる。短期間でどれだけ強くなれるかは、まあ、私達次第だろうけど…」
「それに、私達だって何も考えていないわけじゃない。私の課題も由良ちゃんの課題も理解しているし、それを解決するための秘策もある。」
「!何故それを…」
「今はまだ言えないから。」

非難の声を上げるラル、此方の会話を聞いていたからか息を呑んでこちらを見てくる草壁、フゥ太の視線を由良が手を挙げ、くるみが言葉で静める。それで落ち着いたのか視線を寄越してきた2人は前のめりになっていた姿勢を戻し、ラルも言葉を遮られたことで何か言いたげにしつつも黙った。それを見た由良がくるみの言葉を継ぐように話す。

「でも、このままで戦うつもりはないってそれだけは分かってほしいし、それがだめなら、ていう時の覚悟もある。」
「………分かった。それを確かめたかっただけだからな。行っていいぞ。」

2人の目が本気だと伝わったからか、ラルは一つ息を吐いて2人を認め、それまで張りつめていた空気も和らげた。2人は何を言うでもなく一つ頷いて部屋を出た。その後ろ姿をチラリとヒバリが目を向けていたが、2人が気づくことはなかった。

「由良。」
「ビアンキさん。」

エレベーター前に着いた頃、ちょうどエレベーターが着き、ビアンキが由良を呼びに来たのかドアが開いた瞬間目が合い、微笑んだ。気づいた由良が呟くように声を上げ、目を丸くする。ビアンキはそれにちょうどよかったと零す。というのも、先に特訓場所に向かっていた獄寺がまだ目覚めないようで、当の本人が起きなければ始められないから先に準備をしてしまおうと必要なものを取りに来たらしい。聞いた由良はラルからの話も終わったからと、すぐに手伝いを申し出たためここでくるみと別行動となった。

「じゃあくるみ、またあとで。」
「頃合いを見て、京子達の手伝いをしに行ってあげてちょうだい。」
「分かりました!2人ともまたあとで!」

ビアンキと入れ替わるようにしてエレベーターに乗り込んだくるみは2人に手を振って別れ、そのまま目的階である地下10階のボタンを押した。もともとトレーニングルームと近いフロアにあったためエレベーターはすぐに着き、扉が開く。

「くるみ!」
「遅かったな。」
「ごめんね!遅くなっちゃったっ…」

ちょうどエレベーター付近にいたのか、くるみに気づいた山本とリボーンに声をかけられ、小走りで向かう。
いつの間に着替えたのか、山本は袴姿で巻き藁を数本抱えていた。また、リボーンもジャンニーニに作ってもらったのか、おしゃぶりの保護カプセルはそのままに、以前まで着ていた黒いスーツにボルサリーノの姿でいるが、特に問題なく活動している様子に驚くと共にホッと安堵する。くるみの様子に気づいているらしいリボーンだが、それには触れずにちょうどいい、と零す。

「ちょっとトイレ行ってくるから、くるみも山本と一緒に巻き藁運んどいてくれ。」
「あ、うん!分かったよ。」

恐らくトイレではなくツナの様子を見に行くのだろう。リボーンの意図に気づいたくるみだが特に何か言うでもなく頷いた。くるみと山本、2人に見送られたリボーンはちょっくら行ってくると言ってそのままエレベーターに乗り込んだ。それにあれ?と首を傾げた山本だが、くるみから半分持つよと声がかかり、その疑問はすぐに消え去った。

prev / next

[ back to top ]



×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -