リボーン複数主 | ナノ


▼ 標的112

一頻り泣いた2人は、漸く涙が止まり、お互いボロボロな顔でぎこちなく笑い合った。いくら心を許し合い、なんでも曝け出す仲になったとはいえ、気恥しいものが無い訳では無いのだ。
由良はベッド脇の椅子に座り直し、涙でベタつく顔を指で拭う。以前は化粧が崩れると気にしていたが、いつしかウォータープルーフのものを使用するようになりその心配もなくなった。この時ばかりはウォータープルーフの化粧をしておいて良かったと、場違いなことを心の底から思い苦笑する。
ふと、くるみの顔を拭ってやろうとハンカチを取り出そうとしたが、由良が取り出す前にす、と差し出された。差し出した人物を見ようと視線を横に動かせば、そこには白いスーツに身を包んだ小さな赤ん坊。

「リボーンくん…!?」
「いつの間に…!」
「邪魔するぞ。由良、コイツを使え。」
「え…」

まるで自分達が泣いていた事など無かったかのように自然に切り出され、2人は目を丸くしたまま息を呑む。
正体を知っているとはいえ、見た目赤ん坊のリボーンに気を遣われてしまい、少しいたたまれない気持ちになりながら由良はありがとうと言ってハンカチを受け取った。そのまま流れるようにくるみの顔を拭う。

「由良ちゃん?」
「私のは使っちゃって汚いから…」

驚いたくるみはそれを聞いて納得し、恥ずかしそうに謝った。

「久しぶりだな、由良。」

久しく見ていなかった懐かしい姿に自然と込み上げるものを感じた由良は頷こうとして首を傾げた。リボーンがここに来たのは、教えてもらったことが間違っていなければ過去の自分と会っていたはずの次の日。この時代であれば久しぶりという言葉は分かるが、過去のリボーンからすれば、久しぶりと言う程離れていなかったはず。それでもその言葉を言ったということは、それはつまり。
そこまで考えついて、目を細める。

「………もしかして、知って…?」
「ああ。くるみに回収されてな、この時代の山本から粗方聞いた。」
「そっか…」

今も昔も変わらないなあ。
言葉を選んだはずが失敗してしまい、濁して聞いた由良に対しなんてことないように答えたリボーンに懐かしむと同時に舌を巻く。これまで何度かこの世界について教えてくれたなまえとくるみから、リボーンの本来の姿については聞いていたが、こういうところでその事実を実感する。
由良が懐かしさでリボーンを見つめていれば、それでと幼くも鋭い声が発せられる。

「何か分かったのか?なまえについて。」

リボーンの言葉に静かに目を見開いた由良はうん、と頷いた。ここに来る前に訪れた記憶とはかけ離れた無惨な状態に陥ってしまった大切な友人の家だったものを思い浮かべながら口を開く。

「ここに来る前に、なまえの家に行ってきたんだ。それで、可能な限り状態を見てきた。」
「!どうだった…?」
「………………。」

恐る恐る聞いてくるくるみに、何と言おうか暫し考える。
正直これから言おうとしていることはくるみもそうだが、由良も話す事が憚られる内容の為、一度気持ちを落ち着かせる上でも間を置く必要があった。一瞬黙った後、こちらを見上げるくるみから逸らすように目を下に向け、口を開いた。

「たぶん、ていうか、これは、確率的に高いと思う、私の推測になるんだけど…」

自分でも驚く程言葉が出て来ず、内心冷や汗が流れる。それでも話さなければと黙って聞いているくるみに、なるべく冷静を努めて話す。

「なまえは、自分で死を選んだんじゃないかって、思う…」
「!どうしてっ…!」
「根拠はあるのか?」

動揺を見せるくるみとは反対に、この場の誰よりも冷静に見えるリボーンに聞かれ、こくりと頷いて見せる。そして次に話す時にはここに来る前、更には日本に来る前に骸から聞いた事も思い出し、整理しながら答える。

「私がここに来るまで、骸から貰った情報も合わせて考えたの。」
「!骸から…?」
「白蘭の狙いは、ボンゴレリングを集めること。その中で唯一、触れる人間が限られている雪のリングは、闘える私やくるみよりも、戦えないなまえを捕らえる方が簡単なのは、火を見るより明らか。きっとなまえは、それに気づいたから自分で家を爆発させたんだと思う。」
「なるほどな。確かに俺やツナ達が過去からボンゴレリングを持って来ている以上、過去のお前らが雪のリングを持って来ることも有り得るだろう。その時なまえを人質に取られれば、従わざるを得ないだろうな。」
「そん、な…」

骸と由良が繋がっていたことに驚いた様子のリボーンはしかし、すぐに由良から得た情報を元に同じように推測する。そのリボーンの話した内容に粗方自分のものと差異がなかった為頷いた由良は、ショックを隠せない様子のくるみに目を向ける。

「たぶん、ヒバリも気づいてる。」
「!会ったの?」
「うん。くるみの事聞いたのも、ヒバリが教えてくれたからだし。協力お願いしたけど、断られちゃった…ただ、ヒバリの口振りからすると、なまえが自ら決めたっていう感じらしい。」
「っ…」

先程会った時の余りにも当然と言うようなヒバリの態度に自分が考えた事を話すが、恐らくあの場にくるみがいても同じように考えるだろう。この時代のヒバリは、自分たちよりもなまえの事に詳しいはずなのだ。
リボーンは先にツナ達に伝えてくると言って、ぴょいとベッドから飛び下りて医務室を出た。
そんなリボーンを見送った由良は先程よりも幾分落ち着いた様子のくるみに呼びかける。そして不思議そうに見上げた彼女を安心させるように微笑みながら話す。

「全部終わったらさ、なまえに文句言ってやろうよ。勝手に決めるなって言った本人が勝手に決めてるじゃんって。」
「………………うんっ…!」

思い出すのはリング争奪戦でくるみと自分、どちらかが死ななければどちらも助からないと言われ、お互い譲り合って無茶してしまった時のこと。まだこうして気兼ねなく話せる関係でなかったからか、なまえにとって自分は大した存在では無いのだと思って進めていたが、それを知った当人はそう思っていなかったようで酷く怒られた。
凡そ10年の月日が流れていたとしても、あの時の事は昨日のように思い出せる。そんな中でこちらに勝手に決めるなと言っていたくせに、その本人が今回勝手に決めて、更には命まで失った。
聞いたところでは無事に終わればミルフィオーレファミリーに殺された人達は生き返るらしいが、なまえは殺されたのではなく自分から死んでいったのでその対象ではないだろう。だから何処かにいるだろう彼女に聞こえるように大声で叱ってやろう。
そう思い、漸く笑ってくれたくるみに安堵の笑みを返した由良はこの後5日間程、連日の体の酷使による反動で眠り続けることになることを今はまだ知らない。

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