リボーン複数主 | ナノ


▼ 標的110

山本の意識が戻り、暫く話したくるみは獄寺のいる部屋に向かった。
部屋に入ればちょうどツナとリボーンは話していたようで、こちらに背を向けるツナはくるみに気づかずリボーンに何やら叫んでいる。対するリボーンはいつものように落ち着いた様子で淡々と話していた。

「よかったじゃねーか。ミルフィオーレを相手にする俺達が生き残る為に残された道は成長しかねーんだ。」

ピタリ、とリボーンの言葉にツナと同じタイミングで息を呑んだくるみは一瞬足を止め、動かした。

「それにピンチの次にはいいこともあるはずだ。」
「お前な!みんな怪我したんだぞ!」
「まあまあツナくん!落ち着いて。」
「!くるみちゃん!」

驚くツナとは対照的に、くるみが来たことに気づいていたリボーンは口角を上げてちゃおっスと軽く挨拶をしている。くるみはツナを宥めるために挙げていた手を振って微笑んだ。何かあったの!?と詰め寄るツナをもう一度落ち着かせ、伝えたい事があってと言いかけた時だった。

「10代目…」
「!獄寺君!」

微かな声が聞こえ、その出処を見ればベッドに横たわっている獄寺が目を覚ましていた。慌てて駆け寄るツナに獄寺は小さく絞り出すような声ですみませんと謝った。同じように駆け寄ったくるみが傷に障るから話さないよう言うが、聞こえていないのか獄寺は続ける。

「俺…こっちの世界に来て…びびってたみたいっス…テンパって、山本に当たって、あんなことに…」
「獄寺君…」

獄寺の言葉にツナはかける言葉が見つからず、黙り込んだ。暗い雰囲気になる2人に見ていたくるみは努めて明るい声で話しかけた。

「ならちゃんと仲直りしないとね!さっき武くんも目が覚めて、同じこと言ってたんだよ。」

ここに来たのも武くんのこと言おうと思ってたんだよ。
そう続けたくるみに2人は驚き、山本は!?と聞いてくるので結構元気だと伝えれば分かりやすく喜んだ。が、笑顔を浮かべるツナに比べて獄寺は照れ隠しなのか舌打ちをして生きてやがったと零している。
いつもと同じだと心の中でつっこむツナ、獄寺に苦笑いを浮かべるくるみはそれじゃあと山本の所へ戻る為、一声かけた。

「そろそろ戻るね。武くんにも獄寺くんが目を覚ましたこと伝えてあげたいし。」
「あ、うん!ありがとう!」
「どういたしまして!」
「またな。」

リボーンの挨拶に手を振るだけで返し部屋を出たくるみはそのまま来た道を戻り、山本がいる医務室へ向かう。

「っ………」

あと少し、という所で突然視界がブレ、平衡感覚が保てなくなり壁に手をついた。少し待てば落ち着くかと思っていたが、目眩は治まらず、ぐわんぐわんと頭全体が揺れているような感覚が強くなっていき、遂に膝を着いてしまう。更にズキズキと激しい頭痛も起こり、座り込んだくるみはなんとか手で頭を抑えるが痛みは治まらない。

「っ…炎の調節っ…間違った、かな…」

小さく呟いたくるみはなんとか意識を保とうとしたがその努力虚しく、その場に倒れ込み気絶した。


遅くなった…!
内心舌を打ち、カツカツとヒールを鳴らして早足で進むのは、漸くアジトに着いた由良だ。以前ツナから聞いていた情報を元に、渡されていた地図を思い出しながら向かうのは医務室。きっと炎を酷使し、満身創痍に近い状態のくるみがいるだろうと踏んだからだ。
急ぐ由良の前方から不機嫌な空気を隠しもせず、殺気にも似たオーラを飛ばして向かってくる存在を認識し、ピタリと立ち止まる。

「!ヒバリ…!」

驚いているからか、それとも別の理由からか、或いは両方か、声を上げた由良に対し、ヒバリは気づいているだろうに言葉を返すことも顔を見ることもなく向かってくる。それはまるで用はないと言わんばかりの態度で、由良は何か反応をすればいいのにと思いつつ、そういえばヒバリは誰に対して、それこそなまえに対しても同じように反応をしていた事を思い出し諦めた。
しかしここで会えたのはちょうどよかった。自分が急いでいたのもこの男に用があったからなのだ。そう考え直し、名前を呼び、行く手を阻むように前を陣取った。

「……………邪魔。」
「話があるんだけど。」
「僕にはないよ。早く退いて。」

言って、殺気まで出すヒバリに気圧されそうになるが踏ん張って耐え、私にはあるんだって!と言い返す。更にずしりと重たい空気が襲いかかるが、由良はこの殺気に覚えがあり、怯まなかった。
そもそも、通常のヒバリであれば、今自分の行く手を阻む行為をしている由良に殺気を向けるだけでなく、愛用のトンファーで殴りかかるはずだ。それが例え強かろうが弱かろうが、ヒバリの行動に制限をかけるのであれば容赦はない。分かりやすいものでいえば、リング争奪戦の嵐戦で乱入したヒバリを止めようとした山本が、邪魔だからと殴られそうになっていた。だのにこうして殺気を向けるだけというのは、言外にヒバリの中で由良の話を聞く価値があると判断したからだろう。
更にこの殺気。由良に覚えがあるのは当然で、これはなまえ関係の苛立ちに近い殺気であり、なまえの事を案じている時等に邪魔される際のものと同じであった。そこに話しかけた由良の話したいことという内容は己も考えているなまえの事なのだから、邪険にはできない。

「さっきここに来る前アンタらの家に行ってきた。で、私が手に入れた情報も踏まえた上で、私の憶測にはなるけどたぶん合ってるだろうから伝えておく。なまえが死んだのは…たぶん、自分からやった事、だと思う。」

由良が詰まらせながらも伝えた言葉を聞いたヒバリはスっと目を細めるが、静かにそれで?と促すだけであまり動揺は見られない。虚をつかれた由良だがだ、だから!と吃りながら続けた。

「なまえはミルフィオーレの連中に直接殺された訳じゃないから、その…」
「ミルフィオーレファミリーを噛み殺すことには変わらないだろう。」
「っ…それは、そう、だけど…」

こんな風に言うつもりじゃなかったのに…!
由良は内心歯噛みする。言いたいことがうまくまとまらず、考えていたことと全く違うことを言ってしまっていた。
由良が言いたいのはヒバリと協力したいというものだった。しかし、うまい切り出しが思いつかないまま遭遇してしまい、なんとか引き留めようと声をかけたのだ。
そんな由良の焦りなど知らないとでも言うように、ヒバリは動こうとする。気づいた由良はええいままよ!と口を開く。

「折角なら協力しようよ!骸とかクローム程じゃないけど、私だって幻術使えるし、情報収集なら得意だし、人数多い方がやりやすいでしょ?」
「やだ。」

即答で返され、由良はたじろいだ。その隙を見逃すヒバリではなく、ヒバリはスタスタと由良を通り過ぎて自身のアジトへ向かっていく。気づいた由良は追いかけようとしたが振り返るだけに留め、なまえは!と声を張る。

「あの子の事は、僕が対応する。君たちの手は借りないよ。」
「っ…………」

ヒバリの言葉を聞いた由良は何か言おうと思っても言葉が出てこず、悔しそうに唇を噛んだ。
ヒバリの声から彼の意志の固さを感じ、覆すことは出来ないと悟ったからだ。
この時代のヒバリは、自分達以上になまえを気にかけていたし、理解していた。例え一緒に行動していなくとも、なまえが何を考え、どう行動するかもある程度把握している。それは彼女の一番の友達である自分達よりも正確で、だからこそ、協力を頼んだのだ。悔しいけれど、今自分達よりもなまえを理解し、なまえの事となると何があっても優先するヒバリがいれば格段に勝機は上がる。そう思ったから。
まあ、実際はすげなく断られたけど。そう思っていると歩いていたはずのヒバリがピタリと立ち止まり、振り返る。何かあったのか。首を傾げる由良に、ヒバリは静かに言った。

「くるみなら、この先の医務室だよ。」
「!分かった。ありがとう。」

ヒバリの言葉に素早く返した由良は急いでくるみがいるだろう医務室に向かう。
本当は、ヒバリをまだ説得しようと思っていたが、それよりも優先すべきは友人だ。また無茶をしたのだろうか、それともミルフィオーレと一戦交えたのだろうか。
無事を祈りつつ、由良は警鐘を鳴らすようにズキズキと痛む頭を無視して医務室へ急いだ。

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