リボーン複数主 | ナノ


▼ 標的105

まさかなまえが過去から来て、更に本来よりも1日早く来ていたヒバリがなまえを保護していたとは思いもしないくるみは京子やハルと共に皿洗いをしていた。といっても、包帯を巻いている手の傷が開いたりしないよう、2人が洗った皿を乾いた布巾で拭く作業を担当しているのだが、せめてこれだけでも手伝わせてほしいと言って任されていた。

「それにしても、くるみちゃんあんまり変わりませんね?」
「えっ?私そんなに子供っぽいかなぁ?」

粗方終わったところで、くるみと同じように皿を拭いているハルがふと思いついたように言う。それに対し、くるみは少しショックを受けたように不安げに聞いており、慌ててハルはそうじゃないんです!と手を振って誤解だと伝える。その横で、京子がクスクスと笑っていた。

「私もハルちゃんと同じ事思ってた!くるみちゃん、大人っぽくなったけど、雰囲気は私達の知るくるみちゃんのままだったから、だからハルちゃんも変わってないって言ったんだと思う。」
「そうです!そうなんです!京子ちゃんの言う通りです!」

京子の言葉に必死に頷いて伝えるハルに呆気に取られたくるみだが、やがてへらりと笑ってそっかぁ、と安堵した。

「まだ子供っぽく見られてたのかと思っちゃった…」
「す、すみませぇん…なんだか、皆さんピリピリしていたので、くるみちゃんはハル達の知るくるみちゃんと同じだと思ったら安心しちゃって…」
「ツナ君達、忙しそうだったもんね。」
「新しい特訓始めちゃったからね…」

表情が陰った2人に気づいたくるみは話題を変えようとそれより!と少し大きめに声を上げる。

「あんまり教えちゃダメなんだけど、この時代の2人も結構今と変わらなかったりするんだよ?雰囲気は全然変わってないんだ!」

本当は、未来の話を過去の2人に話すことはタブーなのだが、人から聞いてイメージすることは必ずしもイコールではないし、事細かに説明するつもりもないので問題ないと結論づけてにこやかに言ってみせた。するとくるみの意図に気づいたのか、それとも純粋に気になっていたのか、2人は表情を明るいものに変えて興味津々に他の人は!?と聞いてきた。勢いに圧倒されたくるみは一瞬目を丸くさせ、次にふふっと微笑むと座って話そうかと2人をテーブルに向かわせ、紅茶を用意する。

「あんまり話せないから、あと1人だけにしようかな。」

誰がいい?
紅茶の入ったティーカップを2人の前に置きながら聞けば、お礼を言ったハルが元気よくハイ!と手を挙げる。

「ツナさんの事が聞きたいです!」
「私も!」
「分かった。」

勢いよく言ったハルに続いて京子も声を上げたことで、くるみはこの時代のツナについて話すことにした。

「て言っても、ツナくんもあんまり変わってないんだよねぇ…相変わらず優しいままだし、色んな人に振り回されてるっていうか、苦労してるっていうか…」

言って思い返すのは知り合ってから変わらずにリボーンやヒバリ、獄寺にツッコミを入れつつ振り回されるツナの成長した姿。変わった点と言えば、ツッコミを入れることを諦めることが多くなったところだろうか。悲しい成長である。
そんな風に思い出しているくるみの脳内を知らないハルは外見はどうですか!?と聞いてくる。くるみは外見かぁ、と呟いて思い出す。

「たぶん背は伸びたと思うけど、皆伸びてるからシルエットは変わらないかなぁ。獄寺くんと武と並んだら一番小さいのは今も一緒だよ。」
「それだけ、ですか…?」
「うん。それだけかな?最初に言ったけど、未来のことあんまり教えちゃダメだから細かいことは話せないし。」
「そ、そんなぁ…」
「仕方ないよ、ハルちゃん。」

期待していたよりも少ない想い人の情報量に落胆し、机にぐでっとへたり込むハルに、京子が慰めの言葉をかける。ハルの様子に苦笑しながらごめんねと謝ったくるみは紅茶を飲み、2人にも飲むよう促した。2人は温かい紅茶を飲んだからかホッと息を吐いて、ハルも落ち着いたようだった。
そんな2人にくるみは声をかける。

「急に未来に来ちゃって、慣れないことお願いしちゃって、ごめんね。私も極力お手伝いするし、ツナくん達がなんとかしてくれるから、大変だろうけど一緒に頑張ろうね!」
「はい!」
「うん…!」

くるみの言葉に安心したのか、今日一番にいい返事をしたハル、一拍遅れて返した京子に、くるみは微笑んだ。暫く談笑し、明日も早いだろうからと2人を先に部屋に戻らせ、飲み終わったカップや空になったポットを洗おうとシンクに向かう。

「くるみちゃんっ…」
「京子ちゃん?」

そんなくるみに声をかけたのは部屋に戻ったはずの京子で、どうしたのか聞けば何か言いたそうな顔をして部屋に入ってきた。くるみは京子が何か言うまで何も言わず、黙って首を傾げる。
暫くして、言う決心が着いたのかあの!と少し大きな声をあげる。

「お兄ちゃんはっ…お兄ちゃんは、無事、なんだよね…?」
「………………。」

京子の問いに、息を呑んだ。すぐに返すことが出来ず、一瞬目を伏せたが、すぐに眉を下げて困ったように笑う。

「ごめんね。皆が今どうしているのかについては、本当に分からないんだ。了平さんも、大分前にツナくんと連絡を取りあっていたのは覚えてるんだけど、そこから連絡が取れなくて、今どこにいるのか、何をしてるのか分からないの。」
「っ………そ、っか…」

くるみの答えにショックを受けたように息を呑んだ京子は震える声で呟いて俯き、キュッと唇を引き結んだ。京子の姿にくるみは申し訳なく思うが、ボンゴレのことを京子に話すことは出来ないし、了平が何処にいるのかは本当に知らないのでどうしようもなかった。

「教えてくれてありがとう。おやすみなさい!」
「あ、うん!おやすみなさい。」

パッと顔を上げた京子は笑って矢継ぎ早に言うと、くるみの返事も待たずに部屋を出ていった。くるみは後を追うことも出来ず、ただ自動で閉まるドアを見ていた。

prev / next

[ back to top ]



×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -