リボーン複数主 | ナノ


▼ 標的100

山本が未来に飛ばされたとくるみから連絡があった翌日、なまえ、くるみ、由良の3人は今後どうするか話し合った。
くるみがいたにもかかわらず、山本だけが飛ばされたところを考えると、未来のツナ達の計画ではくるみも由良もまだ飛ばされる時期ではないらしい。そして覚えている限りでは、未来の世界ではボンゴレリングを破壊していたはずで、未来に飛ばされたタイミングによっては敵地に乗り込んでいる状態ですぐに戦う事になるかもしれない。そこまで考えた3人は、ひとまずくるみと由良は未来での戦いにすぐに対応出来るよう今日からリングに炎を灯せるよう特訓を始めることにした。
その為暫く別行動となり、くるみ、由良はくるみの家に向かい、なまえはタイミングよくヒバリに呼び出された為応接室に向かった。黒曜の一件から続いているヒバードの校歌訓練の為だ。未だ部屋に入るのは緊張してしまい、すんなり入る事は出来ないが、ノックが出来るようになったので少し進歩した。中から入るように声がかかり、なるべく音を立てないようにゆっくりドアを開ける。

「し、失礼します…」

そろりと中を伺うようにして入れば、ヒバリはいつものように応接室の窓際の机に向かって黙々と鉛筆を走らせており、その頭にはヒバードがちょこんと乗っている。そのほっこりする光景に頬を緩ませたなまえをちらりと見たヒバリは再び机に向かう。同時にヒバードがパタパタと小さな羽を動かしてなまえの元に飛んでいく。

「ヒバ、小鳥さん…!」

ヒバードに気を取られたなまえはヒバリの視線に気づくことなく更に頬を緩ませ、差し出した手にちょこんと乗ったヒバードに微笑んだ。右に左に首を傾けるヒバードはなまえの手の上を器用に動き回り、ふとなまえを見上げた。

「ナマエ!ナマエ!」
「!」

驚き目を丸くするなまえは突然の事に固まる。ヒバードは尚もナマエと頻りになまえの名前を呼んでいた。
ヒバードを常に可愛がり、親バカのようにいつも褒めちぎるなまえが何の反応も示さないことにヒバリも不思議に思い、目を向ければ、ヒバードを凝視したまま固まっていた。しかし、すぐに我に返ったように瞬きをし、息を吐いた。そして、じわじわと頬を紅潮させ、キラキラと瞳を輝かせてヒバードを見る。

「す、すごい…!私の名前、よく言えたねぇ…!偉いね!賢いねぇ!」

まるで天才と言わんばかりに、いや実際心の内では天才なのでは!?と興奮して頻りにヒバードを褒めるなまえは立派な親バカだった。なまえの珍しく興奮した様子にヒバリは目を丸くし、作業の手を止めて頬杖をつき、未だヒバードをすごいすごいと褒めそやしているなまえを見た。

「ねぇ。」
「!す、すみません…」

ヒバリに声をかけられたことで漸く我に返ったなまえは気まずそうに、そして恥ずかしそうに謝った。ヒバリはなまえがはしゃいでいたことは気にしていないが、ヒバードに名前を呼ばれたことを酷く嬉しそうにしているなまえに苛立ちを覚え、じとりと見る。見られたなまえはオロオロと困惑するが、ヒバリはお構い無しに不機嫌さを隠すことなくぶすっとした顔で聞いた。

「名前を呼ばれたのがそんなに嬉しかったの?」
「えっ…?」

聞かれたなまえは質問の意図が分からず、きょとりと首を傾げた。しかしヒバリはただこちらをじっと見て、なまえの返事を待っているだけだった。ヒバリの表情は不機嫌なものであったが、その瞳は真剣味を帯びていて、そんな目で見られたなまえは更に困惑し、目を泳がせながらもえっと、と口を開いた。

「名前を呼ばれたことも、そうなんですけど…それよりも、あの、私の名前を呼んだことにビックリしたというか…今まで一度も、私の名前を教えたことがなかったのに、ちゃんと呼べてるのがすごいなって思って、それで…」

ああ、そういうことか。
なまえの答えを聞いたヒバリは漸く合点がいった。それと同時になまえが話した中のある点で内心ドキリともしていた。
しかしそんな素振りはおくびにも出さず、ヒバリはふぅんと一言言うだけだった。
何を隠そう、ヒバードになまえの名前を覚えさせたのは他でもないヒバリだ。リング争奪戦が始まる前、己の家庭教師として鍛えると宣ったディーノが、ひょんな事からなまえを名前で呼んでいる場面を目撃してしまい、そこからヒバリの胸には小さなわだかまりを感じていた。原因がディーノがなまえの名前を呼び、更になまえも嫌な素振りを見せなかったことだと分かり、発散させるように1人の時必ずなまえの名前を呼ぶようになった。そこに偶々ヒバードがいたからか、ヒバリが口にするなまえの名前を覚えてしまい、こうしてすんなりと呼べるようになっていたのだ。
勿論そんなことを知る由もないなまえは、くるみや由良が呼んでいるのを聞いていたのではないかというヒバリの言葉を鵜呑みにし、またもすごいねえ!とヒバードを褒めちぎっていた。その様子を見ていたヒバリは信じやすいなまえに別の意味で不安になっていたが、ふと違うことを思い出し、ねぇと呼びかける。

「その子の名前も、呼んであげなよ。」
「………………え!?」

不思議そうにしていたなまえは暫し無言の後驚き声を上げた。そのまま名前があるのかと聞けば、帰ってきた答えは否。どういうことかと首を傾げるなまえにヒバリはサラリと言った。

「君、時々この子のこと別の呼び方で呼ぼうとする時があるでしょ。ちょうどいいからその呼び方で呼んでみたら?」
「………………え!?」

事も無げに言ってのけるヒバリに、今度は一気に顔を真っ赤に染め上げて声を上げたなまえ。自分では誤魔化せたと思っていたのだが、ヒバリには通用しなかった。バッチリ気づかれていたことを知って今更ながら恥ずかしくなってしまったのだ。しかしヒバリは急に赤くなって恥ずかしがるなまえに、いい気になって逃がそうとしない。暫く視線を送り続ければそれに気づいたなまえは更に顔を赤くし、加えて目も潤ませてくる。そこからまたじっと見続ければ、観念したのかヒバリを極力視界に入れないよう努めてヒバードと向き合った。その間も、ヒバードはなまえの手の上で愛くるしい体を落ち着かせつつ首をクルクルと右に左に傾かせている。
そんなヒバードになまえは緊張で震える口を開いた。

「ひ、ヒバード…」
「?」
「何それ。」

なまえの呼び掛けにヒバードは勿論反応を見せず不思議そうにし、ヒバリは間髪入れずになんだその名前はと言いたげに言葉をかぶせてきた。いたたまれなくなったなまえは真っ赤になった顔を俯かせる。

「ひ、ヒバリさんの、小鳥さん、なのでっ…ひ、ヒバリさんの名前を、ちょっと文字ってみました…!」

一生懸命説明するなまえの姿に微笑ましさを感じ、しかしその安直な理由に少し呆れつつふうんと返したヒバリはヒバードを見る。ヒバードは理解しているのかいないのか、いつもと変わらないように見えるが嫌ではないようだ。そう思い、なまえに声をかける。

「それでいいんじゃない。」
「えっ…?」

ヒバリの言葉に弾かれたように顔を上げたなまえは、頬の赤みが引かないままヒバリを見つめる。潤んだ瞳で見つめられたヒバリはトクトクと早くなる心臓の音を感じながら、その子も気に入ってるようだしとなんともないように言う。聞いたなまえは目を瞬かせ、手の上にいるヒバードを見た。そして、ヒバリの言葉を噛み締めて、嬉しそうに顔を綻ばせる。

「これからもよろしくね!ヒバード!」
「?」

言われたヒバードは不思議そうにするだけだったが、なまえはそんなヒバードが可愛らしく感じ微笑んだ。ヒバリはそんな1人と1羽の微笑ましいやり取りに自然と口元を緩ませた。
そんな折、なまえはあ、とヒバリの方を見る。

「あのっ、ありがとうございます!ヒバリさ……くしゅっ!」
「…………風邪?」
「そんなことは、ないと思うんですけど……くしゅっ!」

否定するが立て続けにくしゃみを繰り返すなまえ。折角お礼を言えたところだったのに、最後の最後で台無しである。

「今日はもういいから、暗くなる前に帰りなよ。」
「えっ…で、でも…」
「風邪を移されたりしたら面倒だからね。」
「あ…ご、ごめんなさい…」

2回もくしゃみをしたなまえに冷たく言い放ったヒバリだが、それは暗に心配していると言っているようなものだった。しかしなまえはそれに気づかず、以前ヒバリが風邪を拗らせて入院したことを思い出しシュンとする。

「あの、今日はこれで失礼します。さようなら。」
「うん。」

恐る恐るヒバリに声をかければごく普通に返され、返してくれたことに嬉しくなり、にやけそうになる顔を必死に抑えて応接室を後にした。
どうせなら、特訓をしているであろうくるみ達の様子でもに行こうかな。
校舎を出て暫く歩いていたなまえはふと思い立ち、それならばとくるみの家までにあるコンビニの場所を思い出す。折角行くなら差し入れも持っていこうと思ったからだ。
ヒバリの心配が無下にされた瞬間だが、なまえは心配されているなど思ってもいないので彼女にとっては知らない話である。

「そうと決まればちょっと急ご…」

呟いたなまえは歩くスピードを少し速めて目的地まで急いだ。
そんななまえの耳に、ふと後ろからヒュルルルル、という花火が上がるような音が聞こえた気がした。

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