リボーン複数主 | ナノ


▼ 標的98

ツナ達を部屋に案内した山本のように、アジト内に入った途端環境の変化に体が追いつかず気絶してしまったラルを運んだくるみが再び先程の部屋に戻れば、先に戻っていた山本とリボーンが話していたところだった。くるみが部屋に入ったことに気づいた山本が話を切り上げて、心配そうに近づいてくる。

「くるみ、平気か?」
「うん。大丈夫だよ。武の方こそ、大丈夫?さっき強く握りすぎちゃったから…」
「これくらいなんともないぜ!」

本当は別の事で聞きたかったのだが、それは言えずに先程握りすぎた手の事を聞けば、言わんとしていることを察したのか山本はからりと笑って答えた。それにホッと息を吐いたくるみの様子を伺っていたのか、リボーンがもういいか聞いてきた。

「あ、ごめんね!リボーンくんっ…」
「悪いな、小僧。」
「気にすんな。」

慌てて謝るくるみに対し、山本は焦る素振りもなく、リボーンは山本の変化に心の内で笑う。以前カマをかけるようにからかっていた頃はくるみと同じように慌てふためいていたが、この10年でどう過ごしてきたのか今は慌てふためく青臭いガキはいない。ただ一人の成長した男がいた。
いっちょまえに色気づきやがって。自分の知る余裕のなかった姿とかけ離れた山本に少しのつまらなさを覚えたリボーンは、そんな山本が気遣わしげに見るくるみに目を向ける。

「くるみ、その状態であとどれ位戦える?」

リボーンに聞かれたくるみは息を呑む。何時もなら、どれ程辛くともいくらでも大丈夫だと答えられるが、それは今のリボーンの目が許さないと言っている。先程今後について話すと言っていたから、その為にもここは正直に話すしかない。1度固く唇を引き結んでから、リボーンに向き直る。

「もしすぐに敵を撃つ事になれば、たぶん1回でダメになる。もし数日くらい休む時間があれば、あと1日くらいはなんとしてでも保たせることは出来ると思う。」
「そうか…」

聞いたリボーンは考え込むように黙り、山本は静かに肩を抱いた。それに甘えるように山本の胸元に頭を預ける。
明日には会えなくなるからか、少し心細く感じてしまう。

「くるみ、お前ももう休め。まだ辛いんだろ?」
「そうだな。俺達はまだ話してるから、先に休んどけ。」
「っ…」

山本とリボーンに言われ、くるみは顔を顰める。本来なら、くるみもこの時代で戦う歴とした守護者なのだから、2人と話し合う必要があるのだが、彼女の体はまだ立っているのがやっとの状態だった。山本の体に頭を預けたのも、怪我や気力の使いすぎでフラついてしまったからだ。自然にしたつもりだが、普段から行動を共にすることが多い山本には通用せず、自分に寄りかかるように頭を預けたくるみを気にかけたから言葉をかけ、リボーンもそれに気づいたから同意したのだ。
しかし、くるみにとってそれは許容し難いもので、更にこれ以上山本と会えなくなる時間が増えることも思った以上に堪えていた。その状態で落ち着いて休める訳もない。そう思ったくるみは首を横に振り、大丈夫と伝えた。

「私だって、この時代の情報少しは持ってるから、仲間外れなんて悲しいよ。」
「くるみ…」
「そうか。まあラルがあんな状態だから、今話すのは守護者の誰を探すかだけだからな。くるみの意見も聞かせてもらうぞ。」
「うん!」

茶化すように話せば察したのか、心配する山本と違い、リボーンはそれ以上休む事を勧めはせずに頷いた。

「今欲しい守護者は即戦力になるつえー奴だ。」
「となるとやっぱり…」
「恭弥くん、だね…」
「ああ。」

10年前から不動の最強で最恐と謳われる雲の守護者、雲雀恭弥。その名前が出てきたからか、リボーンがくるみに何か知らないか聞くが、10年前と比べて今は殆ど別行動で、連絡も頻繁に取っていないからと首を振った。山本も同じように分からないと答えたが、2人とも近いうちにこの並盛に帰ってくると確信があった。それについてリボーンに言えば、分かっていたかのようにピンポイントに聞かれた。

「なまえか?」
「ああ。」
「この時代の恭弥くんが、なまえちゃんのことを知ったら絶対に帰ってくる。何を置いても、ナマエちゃんを優先して。」

それこそ、原作で帰ってきた日よりもずっと早くになるかもしれない。
その言葉は心の中に留めてくるみはリボーンに自信を持って説明した。聞いたリボーンはやっぱりな、と嘆息する。

「アイツら、落ち着くところに落ち着いたのか。」
「まあ、落ち着かせたって言う方が正しいけどな。」
「恭弥くん強引なんだもん…」
「ヒバリらしいな。」

元々流されやすく、更に憧れていたヒバリには余計流されてしまうなまえの焦った顔を思い出し、苦笑した山本とくるみ。リボーンは知らないはずだが、知らずとも目に浮かぶ様な2人の言い方に相変わらずだと一人思う。
しかし、いくらなまえの事を知って必ず帰ると分かっていても、それではいつ帰ってくるのかも、結局のところ今どこにいるのかすら分からない。それ以外にも手がかりは欲しいところだ。それが伝わったのか、山本が一枚の写真を取り出す。

「まあ、ヒバリの手がかりと言ったらあとはこれだな。」
「!バーズの鳥か。」
「ああ。今はヒバリが飼ってて、ヒバードって名前がついてるぜ。」
「念の為の連絡用でも飛ばされたりするから、もしかしたら帰った事を知らせるのに使うかもしれないよ。」
「なるほどな…」

リボーンは暫し考え込むと、パッと顔を上げ、今日のところはここまでにしようと言って話を切上げる。流石のリボーンも体に限界が来たらしい。先に戻るぞと言って自分に与えられていた部屋に戻って行った。
そんなリボーンを見送ったくるみは部屋のドアが閉まると同時に山本に体を預けるように倒れ込む。

「くるみっ…!」
「ごめん、ね…ちょっと、限界、みたい…」

笑ってみせるくるみだがその顔は青く、体に力を入れようとしても震えるだけで逃げていく。支える手から伝わるその状態に山本はすぐ様くるみを抱き上げ、医務室に向かった。

「武。」
「ん?」
「今日は、一緒に、いたいなあ、なんて…」

医務室に向かう中、くるみは珍しく小さなわがままを言った。度重なる体を酷使するほどの気力の使いすぎと、ナマエの事、更に明日来るであろう山本との一時の別れを考えて、くるみの心はすっかりボロボロだったのだ。
山本は本当であれば、くるみを医務室に届けてそのまま自室に戻ろうと思っていた。しかし、普段あまりこうしてわがままを言ったり、頼み事をしないはずのくるみがここまで言う姿に断ることも出来ず、分かったと頷いた。

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