リボーン複数主 | ナノ


▼ 標的96

くるみ達がいた日本から処変わってフランス某所。由良は走る車の中、ただただ己を落ち着かせることに必死だった。
ツナが殺されたと報せを受けてから数日、漸く敵の目を掻い潜ってなんとか用意出来たというボンゴレが秘密裏に手配したジェット機がある飛行場へと向かっている最中だった。敵の目を欺く為、10年前とは比べ物にならないレベルに上達した幻術で隠している由良の脳内に突然骸の声が届いた。
その内容はどうやって入手したのか、何故か日本に先に向かっていたくるみ達の動向で、一方的に伝えられて反応を返す前に骸はいなくなっていた。それとほぼ同じタイミングで、車に同乗していたビアンキとフゥ太の元にある情報が入ってきた。
それは、ボンゴレ本部が壊滅状態に陥り、敵の狙いがボンゴレ関係者全てを消すことというものだった。由良の脳裏に浮かぶのは、生まれ育った故郷に残した家族、友人の姿。
骸からの情報を思い出し、ぐっと拳を握り締める。そんな彼女の変化に気づいたのは前に座るビアンキで、落ち着いた声で呼びかける。

「由良。落ち着いて。焦っていても仕方がないわ。私たちは、私たちに出来ることをしましょう。」
「ビアンキさん…」

ビアンキの言葉が届いたのか、由良の顔が少し安心したように緩む。
昔から、ビアンキは歳上ということもあって京子やハルを宥めたりすることが多かったが、それは由良に対しても同じであった。本来なら、前世を含めれば自分の方が遥かに歳が上のはずなのに、ビアンキは暴走することはあるが、言動は全て年齢よりもずっと大人びていて、由良の心を落ち着かせていた。
ビアンキのお陰で落ち着きを取り戻せた由良は小さく笑って頷いた。

「そうですね。まずは、日本に行かないと。」

その笑顔は、どこか悲しみを隠すような苦しそうなものだった。


由良が漸くフランスを経とうとしていた頃、先に日本にいたくるみは放心状態でベッドに横になっていた。
先程まで部屋にいたリボーンは話を終えるとどこかへ行ってしまい、山本もボンゴレ門外顧問からの使者を迎えに行くと言って出ていった。

「嘘だよね…」

暫く呆然としていたくるみだったが、不意にぽつりと呟いた。その言葉は、先程リボーンが話した内容に対するもので、言葉とは裏腹に、表情は未だ呆然としたままで感情が追いついていない様子だった。

「嘘だよ、きっと…」

リボーンの話は嘘と言うには難しいものだったが、現状情報が入りにくい状況では誤報という可能性もある。第一、10年前ならば確かに有り得たかもしれないが、この時代ではそれが起こりうることは不可能だ。それを許すはずがないのだから。

「確かめないと…」

そうと決まればこんなところで寝ている場合ではない。思い立ったくるみは全身に走る痛みに苦戦しながらもなんとか起き上がり、ゆっくりとベッドから降り、部屋を出た。

「うぐっ…」
「おい!どーした!?」
「お前もだったのか…」
「ど、どーなってんの!?」

壁を伝いながらなんとか歩を進めていたくるみの耳に、小さなやり取りが聞こえ、ピタリと止まる。
つい先程まで共にいた山本の他に、少し違和感を覚える獄寺の声、そして、この時代とは違って若干高めの、しかし安心するような彼の声も聞こえた。泣きそうになるのをぐっと堪えて、彼らがいる場所に急いだ。ついでに、何ともない様を装うために壁についていた手も離した。

「!くるみ…!もう平気か?」
「うん。寝てたらだいぶ良くなったよ。ありがとう。」
「えっ!?くるみ、ちゃん…?」

近づくくるみに気づいた山本が驚き声を上げたが、それに平気と笑って返す。
そして、驚きと戸惑いが入り混じったような声を上げ、困惑を隠さずに顔に出した幼い姿を見て、泣きそうになるのを堪えて、きっと彼らが見ていたであろう笑顔を返した。

「そうだよ!2人は、もしかして10年バズーカで来ちゃった昔のツナくんと獄寺くんかな?合ってるか分からないけど、久しぶり!」
「あ、ひ、久しぶり、です…?」

山本と同じように、10年経って姿が変わっても雰囲気があまり変わっていないくるみに戸惑いつつも言葉を返すツナと、どう返せばいいのか分からず無言で顔を逸らす獄寺。くるみはそんな2人にこっちだよ、と気にした様子もなく、山本が案内しようとしていた部屋へ向かう。
彼女についていくツナは、歩きながらそっと盗み見た。
纏う雰囲気は変わっていないが、10年成長したくるみは顔立ちも、動きも、自分が知る彼女とはやはり違っていて、以前夏祭りで見た少し化粧をした時のような落ち着かない気分になる。が、それ以上に気になったのはくるみの全身を覆う包帯。手は了平のように指まで包帯を巻き付けてあり、それは着ているスーツの袖の隙間から見える手首にも及んでいる。更に首、そして顔の鼻辺りも包帯を巻いており(口部分は避けているが)、この時代は一体どうしたのかと気になって仕方がなかった。

「あのっ…」
「ここだよ!」

勇気を振り絞って声をかけようとしたツナだが、それはくるみの言葉に遮られ、届かなかった。仕方なく室内に入ったツナが目にしたのは、昨日から行方知れずだった己の家庭教師。

「リボーン…!」

リボーンとの再会に感動しているツナがそのリボーンに騙され、雰囲気をぶち壊されている間、くるみは倒れた女性をソファーに寝かせる山本に近づいた。彼女と同じ、写真でしか見た事はないが、門外顧問からやってきた使者だとすぐに分かった。そして、未来を知るくるみにとっては、彼女と、ツナの姿を見た時点で分かってしまった。今目の前にいる山本と、暫く会えなくなるだろうということが。
そんな考えを悟られないよう、声をかける。

「この人が使者の人?」
「ああ。どうやら彼女も小僧達と同じらしい。」
「そっか、だから…」

納得した素振りを見せたくるみに、山本は心配そうな目を向ける。それを肌で感じているくるみは笑って返し、騒いでいるツナたちの方に行こうと山本の手を取った。

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