リボーン複数主 | ナノ


▼ 標的91

“原作に動きあり“
昨夜なまえからそんなメッセージが送られてきた。早速話そうという流れになったものの、皆家族から頼まれていたり早く寝ろと言われていたりしたので明日にしようとなり、早い方がいいからと昼休みに屋上で話すことになった。

「!なまえちゃん!」
「朝ぶり。」
「やっほ〜。お腹空いたぁ、早く行こう。」

授業が終わり、由良と共に教室を出たくるみは同じように教室を出てきたなまえと合流して屋上に向かう。一瞬屋上はあの3人組がいてマズイのでは?と声が上がったが、たぶん大丈夫というなまえの言葉と、今日は珍しく休んでいたツナ、獄寺の状況にもしかしてと思ったくるみは大丈夫そうとメッセージを送っていた。

「すごい!屋上だ!」
「何気に初めて来たかも…」
「確かに滅多に来ないもんね!」

このご時世にしては珍しく解放されている屋上に着いた3人は、開放的な空気に思わず大きく伸びをした。窮屈な室内にいた気分がスッと晴れる心地がして気持ちが良い。一通り屋上を堪能した3人は出来るだけ目立たない、人に見つからないような場所にということで隅に移動し、持ってきていた弁当を広げながら本題に入る。

「未来編入りました。」
「やっぱり?」
「未来編って確か、皆が未来に飛ばされるヤツだっけ…」

由良の言葉に頷いたなまえは昨日ね、と説明する。

「リボーンが行方不明ってことは、たぶん昨日か一昨日10年バズーカに当たって、未来に飛ばされたままって事だと思う。」
「今日ツナも獄寺も休んでたけど…そういうこと?」
「獄寺くんは分かるけど、ツナくんは最近休んでなかったもんね。リボーンくんと同時期ってことは、きっとそうだと思う。」

確かリボーンがいなくなった次の日にツナがいなくなるはずだというくるみの言葉に納得した由良は、それでと2人に目を向ける。

「その後はどうなるの?」
「皆バラバラのタイミングで飛ばされる。京子ちゃんもハルちゃんも、ランボくんもイーピンちゃんも。」
「一番最後は了平先輩だね。未来編の一区切りつくところで飛ばされてたから。」

細かい所は説明されていなかった由良に、2人も思い出せる限りのことを説明する。そして一度区切ったなまえはそこでなんだけど、と身を乗り出した。2人も合わせて乗り出し、なまえが小声で話す。

「2人とも、笹川先輩となるべく一緒に行動したらいいんじゃないかな?」

なまえの思わぬ発言にどういうこと?と由良が尋ねる。くるみも無言で頷いて理由を催促する。

「いやだって、過去の皆が飛ばされたのはボンゴレリングが必要だったからで、2人だって持ってるでしょ?未来のツナ達がどう計画立ててるのかは知らないけど、飛ばされた次の日が突入の日とかだったら何も出来ないじゃん。でも行かないと皆死ぬから行かなきゃいけないし。それだったら、笹川先輩と同じタイミングで飛ばされた方がゆっくり修業出来るからまだいいかなって思って…」
「無理でしょ。」
「私も難しいと思うなぁ…」

どうかなと聞く前に2人にバッサリ切り捨てられる。思わずなんで!?と叫ぶように聞けば、由良は呆れたように溜め息を吐き、くるみは困ったように笑った。

「さっきアンタも言った通り、未来のツナ達がどう計画立ててるのか分かんないから。過去の私らが何かしたって、向こうの方がアドバンテージあるんだから無駄でしょ。」
「過去の協力者になった正一くんとは、私達誰1人として接点ないからねぇ。計画教えて、なんて言えないし…」
「それは、そうだけどぉ…」

正論で返されたものの、納得がいっていないナマエは不貞腐れ唇を尖らせる。自分達の心配をしてくれていることが分かった由良、くるみはそんな彼女にふわりと微笑む。

「まあなんとかなるでしょ。これまでもなんとかなってたし。」
「リングを持ってるから飛ばされることは確定だろうけど、だからって簡単にやられる私達じゃないってこと、なまえちゃんも知ってるでしょ?」

いつも通りの様子の2人に、でもと言いたい気持ちを抑え、うんと頷いた。なまえの答えに満足した由良はていうかさ、と疑問に思っていたことを口にする。

「なまえの方が身構えてた方がいいんじゃない?」
「なんで?」
「なんでって…アンタだって絶対飛ばされるでしょ。」

由良の言葉にきょとりとしたなまえはこてりと首を傾げ、それはないんじゃない?と答える。続けて私ただの一般人だしと言ったなまえにバカなのこの子はと頭を抱える。くるみは苦笑いをしてなまえちゃん、と困ったように呟いた。分かっていないなまえは戸惑ってえっ?えっ?と2人に目をやる。

「京子やハルが飛ばされてるんだったら、アンタだって可能性あるでしょーが。」
「え、でもさ、京子ちゃん達が飛ばされたのはツナが強くなるためでしょ?私が飛ばされたところでツナに影響ないって。2人よりも接点少ないし。」
「うーん…ツナくんにはなくても、恭弥くんにはあるんじゃないかな?」
「ヒバリさんに…?」

飛ばされてから未来のディーノと単独行動をしていた自身の推しを思い出したなまえはそれはないでしょ、と首を振る。なまえの全く分かっていない様子にとにかく!と語気を強めた由良はビシリとなまえを指差した。

「アンタも絶対飛ばされるから、飛ばされても1人で突っ走ったりしないで私かくるみ、あとはまあヒバリが来るまで大人しくしてること!」
「何その問題児扱い!?」
「事実でしょうが。」
「なまえちゃん。由良ちゃんも私も、大空戦の時も無茶してたから、心配なんだよ。」

由良と言い合いになるというところでくるみの言葉を聞いて、気まずくなって目を逸らした。そしてすぐに大空戦でヒバリに言われたことを思い出す。

「………分かった…」

渋々といった様子で頷いたなまえによし!と頷いた由良、よかったと安心して胸を撫で下ろすくるみ。2人の様子に私の立場が、と思ったがグッとこらえ、ちらりとくるみを見る。
やっぱり、ちょっと元気ない。
いつもなら、もう少し明るい雰囲気のくるみだが、今日はそんな様子が見られない。いや、今日だけじゃない。ツナの祝勝会があった日から、どこか様子がおかしかった。
今なら、聞けるかな。
そう思ったなまえはくるみと呼びかけた。

「何かあった?」
「えっ…?」
「山本と、なんかあったんじゃない?様子おかしいよ。」
「あ…」

なまえと由良に言われ、気づかれてたんだ、と笑って誤魔化す。が、なまえが少し悲しそうな顔になり、由良が顔を顰めた様子を見て、やめた。

「実はね…」

少しの沈黙の後、ポツリと呟いて、説明した。
山本に告白されたこと、返事はまだ返していないこと。詳しいことは話していないが、掻い摘んだ話を聞いた2人は顔を見合せた。
おかしい。雪戦後のお泊まりの時、確かくるみは山本が好きだと言っていなかったか。それなのに返事はまだしていないというのは、どういうことだろうか。

「返事を保留にしてる理由、聞いてもいい?」

なまえに聞かれたくるみはピクリと反応し、暫し目をふせ目線をウロウロと巡らせた後、口を開いた。

「武くんが好きなのは、変わらないの。嬉しかったのも本当で、出来ることなら、私も、お、お付き合い、したいなって、思ってる。けど…その、武くんに、言われたの。なんでも話してって。でも、私、武くんに沢山助けられているのに、私だけ話すのは、どうなんだろうって、思って…武くんが悩んでる時も、不安な時も、何も出来てない私が、話してもいいのかなって、思って…話してって言われても、話せる自信がなくて…その状態で応えるのって、どうなんだろうって思って…」
「そっか…」

くるみの答えを聞いて、なまえと由良は頷き合った。

「話してくれてありがとう、くるみ。」
「私達も山本のこと分かる訳じゃないから、こうだって言えないけど、私は、くるみの選択に間違いはないって思う。」
「由良ちゃん…」
「くるみの気持ち、ちょっと分かるからさ。私も、フェアな状態で相手と向き合いたいし。」

くるみに言った由良の脳裏に、大空戦後に会った骸の姿がよぎる。なんで今、と疑問に思ったところでなまえが私も!と声をあげる。

「くるみの考えは間違ってないと思う。好きな人を支えたいって思うのは当然のことだし、私も推しは支えたいし!」
「なまえちゃん…」
「でも、私から見たくるみは、充分山本くんを支えられてると思う。くるみって、山本くんを第一に考えること多いし、何かと気にかけてるっていうか…だから、山本くんも話してって言ったんじゃないかな?山本くんからしたら、支えてもらってるからお返ししたいっていう感じなんだと思う。」
「くるみは山本だけじゃなくて私らの事も先に考える感じだから、山本もそう思ったんじゃない?」
「2人とも…」

なまえ、由良の言葉がスッと心の中に入ってくる感覚がする。
そうか。今まで自分からの視点でしか考えていなかったけど、周りからはそう見えていたんだ。
初めて気づけた事実に、少し納得出来た気がした。

「ありがとう。」
「どういたしまして。」
「付き合ったら教えてね!」
「気、早…」
「う、うんっ…」

話して、別の視点からの話を聞いたことで今朝まで考え込んで絡まっていた糸が少し解れた気がした。
まだ、話す勇気は出ないけど、もう少ししたら、話せるだろうか。
そう考えながら、くるみは微笑んだ。

prev / next

[ back to top ]



×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -