しゅごキャラ夢小説 | ナノ

4話


今朝から、あむの様子がおかしい。珍しくお母さんに声をかけていたし、目玉焼きを食べるのを、なんだか躊躇していたように見えた。それに、登校中も、昨日のテレビの話をするのかと思えば、どこか上の空の様子で、いつも以上に静かだった。話を振っても、うん、とかそうだね、しか言わないのは、何か悩んでいることがある証拠だ。


「見て!ガーディアンだよ!」

「カッコいい〜」

「特にキングスチェアの辺里唯世様!」

「優しくて、頭もよくて、何でもできる!まさに王子様!」


何か聞いた方がいいと思って、あむに声をかけようとした瞬間、ガーディアンが来たと誰かが言って、聞けなくなってしまった。ガーディアンのことを無視して聞くこともできるけど、あむのことを考えたら、できない。王子様と言われた辺里君が、あむの憧れの男の子だから。クラスも違うし、見る機会もあんまりないから、今が絶好のチャンス。そんなあむに、野暮なこと聞けない。

ガーディアンと呼ばれる4人は、聖夜学園小の生徒会みたいなもので、生徒のために、日々活動しているらしい。私はガーディアンの4人のうち、キングスチェアの辺里君と、クイーンズチェアのなでしこちゃんと同じクラスになったので、ちょっとだけ何をしているのか聞いている。こんな風に目立ってはいるけど、仕事内容は割と地味らしい。4人以外に誰もいないから、やっぱり大変らしい。いつもお疲れ様です。なでしこちゃんがたまに、権力使って何かしてそうな時もあるような気もするけど。


「ね!日奈森さんたちもそう思うでしょ?」

「え、あ、あたし?」

「べっつにー?ガーディアンなんて、群れちゃってガキっぽいじゃん。」

「あむ…」

「さっすが日奈森さん!」

「クール&スパイシー!」


一緒に登校していたからか、珍しく私にも話を振られた。でも、一番はやっぱりあむのようで、あむの返事を聞いて、勝手に盛り上がっていた。あむの答えは思った通り、素直じゃなくて、思わず心配して声をかけてしまった。そんなガキっぽい集団の1人に憧れてるのは、あむなのに。


「じゃあじゃあ、あめちゃんは!?」

「えっ…私、も?」

「もっちろん!」

「教えて教えて!だってあめちゃん、王子様とクイーンズチェアの藤咲なでしこ様と一緒のクラスでもあるんでしょ!?」

「気になる〜!」

「あっ、そっか…」


あむだけで終わらず、私の答えにも興味を持ってくれて、嬉しくて、声が弾んだ。でも、その後の彼女たちが言った理由に、納得してしまって、さっきまで上がっていたテンションは下がっていった。


「2人とも、大変だな、と思ってるよ。少し話して、私たちのために、いろんなことしてくれてるって分かったから。だから、カッコいいな、とも思うよ。」

「そうなんだ〜!」

「やっぱりガーディアンって素敵〜!」


私の答えに、聞いてきた2人はますます興奮した様子で話を広げていく。ガーディアンは、遅刻しても欠席しても無条件で許される。だとか、ガーディアンだけが着られるロイヤルケープが羨ましいだとか。確かあのケープ、あむにとってはファッションの美意識、みたいなのに反しているから、着たくないって言ってたな。似合うと思うけど。


「日奈森さんが次のクイーンズチェアだって、もっぱらの噂だよ〜!」


なんて考えていれば、話はまた進んでいて、そんな噂もできていることを教えてくれた。そっか。たしかガーディアンって、メンバーは1年に1回発表されるんだよね。もうそろそろで春休みに入るこの時期だと、そんな噂も出てくるんだ。まぁでも、あむはあのケープ着たがらないからな。きっと断るだろうな。


「残念だけどその噂、きっと間違いね。」


そう言って、私たちの話に入ってきたのは、確かあむと同じクラスの山吹沙綾さん。学校へうの寄付金がどうのこうの言ってるあたり、確かにお金持ちなんだろうな、この子。言葉遣いもお嬢様っぽいし。あむはあんまりこの子のこと意識していないみたいで、今までの話も全部聞かずに、辺里君に夢中な様子。山吹さん、ちょっと可哀想。


「ん?」


そんな時、あむが声を上げ、鞄をいじりだした。山吹さんやさっきまで話していた子たちを放っておき、あむの方に近寄る。何か忘れ物でもしたのかな。


「あむ、どうかした…」

「君。」


どうかしたの?と聞こうとして、聞けずに終わってしまった。というのも、辺里君が急にあむの肩を掴んできたからだ。突然のことで、あむも私も驚いて固まって、言葉が出ない。ただ、復活はあむの方が早かったようで、割と大きな声で反応していた。


「用もないのに、気安く触らないでくれる。おチビさん。」

「あ、ごめん…」


とは言え、すぐに周りの目に気づいて、いつもの塩対応をしてしまって、あむは颯爽と歩いていった。あむの反応に、周りで見ていた人たちはすごいと思っていただろうけど、辺里君はどうやら違うみたい。あむが好きになるわけだ。


「辺里君、急にどうしたの?」

「あ、いや、なんでもないよ。」

「そっか。あむ、あんなこと言っちゃったけど、ビックリしちゃっただけだから、気にしないでいてもらえると嬉しいな。」

「僕の方こそ、いきなり掴んでしまったから、悪かったな、と思っているよ。」


伝えておいてもらえるかな、と言われて承諾し、あむがいるであろう場所まで駆けていく。同じクラスで、私がしっかり話せる数少ない人の1人。それが辺里君。たぶん、あむと双子でも、あむはあむ、私は私、そう思って接してくれる人だと、なんとなく感じているから、私も普通に話すことができる。


「あむ。総会遅れちゃうよ?」

「あめ…どうしよう…あんなこと言っちゃって…絶対王子に嫌われちゃった…」

「いきなり肩を掴んじゃってビックリさせちゃったから、って辺里君行ってたよ。こっちこそごめんって。だからそこまで気にすることないよ。」

「本当?」

「本当。」


落ち込んでいるあむに、さっきの辺里君の言っていたことを伝えれば、安心したような顔をした。あむは確かに誤解を受けやすいけど、それは決して、悪いものじゃないことを、私は知っている。ずっと前からそうだったから。そこまで落ち込まないでほしいとも思ってる。でも、きっと私が言うよりも、自分で確かめた方がいいんだよね、こういうのは。

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