しゅごキャラ夢小説 | ナノ

9話


あむと2人、待ち合わせの場所に行けば、なでしこちゃんが既にいた。着替えも済ませていて、なでしこちゃんは藤色の着物を着ていた。とっても似合っている。なでしこちゃんは、まさに日本の大和撫子って感じだった。

そんななでしこちゃんは、既に場所を確保してあると言って、私たちを案内した。入っていったのは学校で、私服で入るのはなんだか変な感じもしたけれど、それよりもなんで学校なんだろう、と不思議に思った。すると、なでしこちゃんはここよ、と言って立ち止まる。扉を開けば、なんてことない、いつもの家庭科室の風景が広がった。


「家庭科室だ。」

「勝手に使っていいの?」

「勿論。ガーディアンですもの。」


戸惑う私たちに、ウィンクをしながら言うなでしこちゃん。それ、職権乱用って言うんじゃ、なんて思ったけど、きっと何を言っても無駄なんだろうな、と思って、そっか、と言うだけで終わらせた。

今日作るのは、辺里君が好きなフルーツタルト。主役はあくまでも辺里君に恋するあむ、と思っているからか、なでしこちゃんは口頭で教えるだけで、自分で作るということはしなかった。私はマドレーヌを作ることにした。オーブンはいくらでもあるから、あむとは別の作業台で黙々と作る。


「できた!」

「うまく焼けたわね。」

「本当だ!美味しそうだね。」


あむの嬉しそうな声が聞こえたので、作業を一旦中断して、様子を見に行く。すると、焼き上がったタルトを持って嬉しそうにしているあむと、微笑んでいるなでしこちゃんがいた。タルトを見てみると、確かにいい焼き色がついていて、上手くできている。あむ、やっぱりすごいな。


「あむちゃん、先にクリームを作っておいて。私は、タルトに乗せるフルーツを取ってくるから。あめちゃんはどう?」

「私もあとは焼くだけだから、片付けておくね。」

「うん、分かった。」


私とあむの返事を聞いて、教室を出て行ったなでしこちゃん。あむは暫く、入口の方を見ていた。きっと、いいこだな、なんて思っているんだろうな。私も作業を再開して、オーブンに入れ、タイマーのスイッチを押した。あとは焼き上がるのを待つだけ。その間に、使った道具を片付けておこうと思って、同じ作業台に併設している流しに道具を持っていく。


「あめ。」

「どうしたの?あむ。」

「1人じゃ、自信ない。」


水で一旦洗ってから、スポンジに洗剤をつけたところであむに声をかけられた。手を拭いて、駆け寄ればあむはそんなことを言った。確かに、さっきのタルトも、なでしこちゃんがいたから、あむも自信を持って作ることが出来ていた。でも、今はあむだけ。それはやっぱり不安にもなるよね。


「なでしこちゃん程じゃあないけど、私でよければ…………えっ?」


教えてあげるよ、と言おうと思っていた言葉は、出てくることはなかった。代わりに、私には今、とってもおかしな状況が見える。

泡立て器が、宙に、浮いてる。
呆然と見ていると、どこからともなく手を叩く音が聞こえ、泡立て器はそのままクリームの入っているボウルに落ちた。音の出処を探ってみると、近くの窓に寄りかかって立つ月詠さんがいた。隣のあむも、驚いた様子で声を上げた。


「猫耳コスプレ変態男!」

「あむ!?」

「コスって、お前…」


と、思ったら、指で指しながらとんでもないことを言った。指をさすこともそうだけど、何よりも、ほぼ初対面の人に対してあまりにも失礼な物言いだ。月詠さんもあむに言われたことに驚いて、戸惑っている。ちゃんとあむに注意しないと。


「っていうかここ3階…!」

「俺猫だし。」

「答えになってない…!ぎゃー!来るな変態!」

「えぇ…」


隣にいるであろうあむを見て口を開けば、あむは窓際近くまで移動していて、月詠さんと言い争っていた。思わず変な声が出ちゃった。けど、2人とも私のことに気づいていない様子で、そのまま話を進めていく。あむ、確かに月詠さん不法侵入だけど、私のこと助けてくれた人だから、変態ではないと思うよ。私の贔屓目かもしれないけど。


「今度こそ、エンブリオかな?」


そう言った月詠さんは、何かを舐め上げるような仕草をして、あむを挑発するように見た。前も辺里君が言っていたけど、えんぶりおって、なんなんだろう。たぶん、私には関係の無い話だから、と思っていると、あむは返してと叫びながら月詠さんに向かって走っていった。そしてその勢いのあまり、月詠さんに襲いかかってしまったようで、2人とも大きな音を立てて倒れてしまった。


「あむ!月詠さん!大丈夫…で……」


駆け寄って、怪我はないか聞こうとしたけど、最後まで言うことが出来なかった。月詠さんが、あむのことを押し倒していたから。時が止まったかのように、私はその場から動くことが出来なかった。その間、あむが何か話していた気もするけど、あまり聞き取れない。意識が、2人の体制に集中してしまって、何も考えることが出来なかった。

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