しゅごキャラ夢小説 | ナノ

8話


「えっ、断っちゃったの?」

「だって、ケープ着たくなかったんだもん。」


昨日の放課後、ガーディアンのお茶会に招待されたあむは、ガーディアンに勧誘されたらしい。辺里君と近づける最大のチャンスでもあったのに、それを上回る程のファッションへのこだわり。あむって、時々思いもよらない行動するんだよね。だから昨日、あんなに疲れきった顔してたんだ。昨日帰ってきたあむの顔を思い出し、1人納得する。とは言っても、なでしこちゃんがいる以上、すんなり引き下がるようには思えないな。


「あ〜むちゃんっ。」

「ひっ!!」

「ふふっ、本当に怖がりさんなのね。」


そう思っていると、予感は的中して、なでしこちゃんがあむの背後から静かに声をかけた。当然あむはビックリして腰を抜かす。呑気に感想なんか言ってるけど、逆効果な気がするよ、なでしこちゃん。あむに手を貸し、立ち上がらせれば、警戒した様子でなでしこちゃんに食ってかかった。


「あむちゃんとお友達になりたくて。」

「とかなんとか言って、ガーディアンの勧誘に来たんでしょ!」

「あら、バレた?」

「当たり前じゃん!」


潔く肯定するなでしこちゃんに、流されつつも、なんとかギリギリで踏みとどまるあむ。たぶんなでしこちゃんのペースには、あむは流されまくりだろうな、なんて、同じクラスで少し話しただけの私が言えた立場でもないんだけど。


「対あむちゃん用秘密兵器。うたた寝辺里君隠し撮り!」

「なっ!」


しかしそんなあむに容赦なく、なでしこちゃんは誘惑をした。隠し撮りについてはあまり触れないでおくとして、辺里君でもうたた寝することあるんだ。なんて思っていれば、他にも、と言ってプライベート写真やプロフィール等々の誘惑を次々と出してくるなでしこちゃん。汚職って、こういうところで起きてくるのか、なんて考えてしまうほど、なでしこちゃんは用意周到だ。


「あむ。まさかこれで入る、なんて言わないよね?」

「はっ!そ、そうだよ!買収なんて卑怯な手で入るわけないじゃん!」


つられかけていたあむに呆れた様に言えば、ちゃんと我に返り、全て断った。流石にこれは人として、見過ごす訳にはいかない。つられそうなあむを、引き止められてよかった。

あむの返事を聞いたなでしこちゃんは、純粋にあむの恋を応援してくれることになった。ガーディアン云々関係なしに、あむと仲良くなりたいんだな、と思って、あむが少し羨ましいと感じた。そんなこと、絶対に言えないけど。


「明日、辺里君の誕生日で、彼の家に行くことになってるの。だから、手作りのお菓子なんか、プレゼントしてみない?」

「え、無理無理!あたし家庭科超苦手。」


なでしこちゃんの提案に、秒で断るあむ。確かに、思い返してみれば、あむは実技が苦手。体育、美術、家庭科が代表的。音楽はまだ好きって気持ちもあるから、少し得意かな。あむの返事は予想済みだったようで、なでしこちゃんは教えてあげる、と事も無げに言った。それでもまだあむは不安からか言い淀んでいたけど、話はトントンと進んで、30分後、今いる場所に集合ということになった。


「勿論、あめちゃんも来るでしょ?」

「えっ、私、も…?」


てっきり、2人で待ち合わせてどこかに行くのかと思っていたら、私もカウントされていたらしい。なでしこちゃんに声をかけられて、初めて気づいた。そんな私の動揺振りを見て、くすりと笑ったなでしこちゃん。品があるとは思ったけど、ちょっと恥ずかしい。


「当たり前じゃない。私はあむちゃんもだけど、転校してからずっと、同じクラスだったあめちゃんとも、仲良くなりたかったんだから。」

「気がつかなくて、ごめんなさい。そう言ってくれて、とっても嬉しいな。じゃあ私も、家族みんなで食べる分、作ろうかな。」

「そうこなくっちゃ!じゃ、30分後、ここでね!」


そう言って、なでしこちゃんは駆けて行った。すぐ帰って準備するんだろうな、きっと。私たちも急ごう、とあむに声をかけて、2人で走って家に戻り、また学校に向かった。忘れ物、ないといいな。

それにしても、あんな風に思ってくれてたなんて、思わなかった。転校初日、初めて話した時、名前で呼んでと言われたから呼んではいたけど。やっぱり嬉しいな。

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