しゅごキャラ夢小説 | ナノ

7話


翌日。あむと登校するものの、いつも以上に元気がない。確かに、いつものあむとは全く違うキャラみたいな発言をしてしまったから、落ち込んじゃうんだろうな。幾度目かの溜息を繰り返したあむに、何か声掛けを、と思って口を開くと、突然あむは私とは逆の方向を向いて言った。


「あんたのせいでしょうが!」

「あむ…?」


驚いてあむの方をよく見ても、何も見えない。でも、あむの手は、何かを持っている、摘んでいる?ように見える。私が声をかけたことに気づいていない様子のあむは、恐らく摘んでいるであろう何かに対して、色々と言っている。主にその何かを責めているようだけど、昨日の総会の発言と関係があるのかな。


「あむ、どうしたの?」

「あめ!あめもさっき聞いたでしょ!あたしの昨日のあれ、ランのせいだったんだよ!」

「ラン…?」


ほらコイツ!と差し出されたあむの手には、何もない。ただ、あむが空中を握っているようにしか見えない。近くで見ても、あむの手と、制服しか見えない。誤魔化すように少し笑みを浮かべながら、あむにごめん、と謝った。


「私には、そのランっていうのは、見えないみたい。」

「えっ…でも、確かに今あたしの手に…!」


私の返事に、あむは説明しようとしたみたいだけど、手に握っている何かが話し始めたらしく、途中で止まってしまった。あむの様子から、嘘をついているようには見えないし、本当に、あむの手の中には何か、ランというものがいるんだろう。

やっぱり、あむは特別なんだ。私に見えなくて、あむに見えるものの方がたくさんある。昔からそう。でも、あむはそんなこと気づいていないから、私が勝手に感じて、落ち込んでしまうだけ。勿論、あむには気づかれないように。


「あむ、ごめんね。」

「ううん。あたしこそ、混乱させて、ごめん…」


あむに謝れば、謝り返され、気にしないでと返した。この後にくる、微妙な気まずさが私もあむも苦手。今の沈黙の時間は、あむにとっても、私にとっても、耐え難い時間。だから、あむに悟られないように、この気まずさをなくそうと、声をかける。


「そういえば、さっき昨日の総会で、様子がおかしくなっちゃったのはランのせいって言ってたけど、どういう意味なの?」

「あたしもよく分かんないんだけど、あの時、王子に謝りたい、誤解を解きたいっていう気持ちが強かったんだけど、いきなり、頭の中で声が聞こえてきて…」

「それで、あの発言をしちゃったの?」


私の質問に、うんとぎこちなく頷いて肯定したあむは、それもこれもあんたのせいだからね!と、またどこかに向かって話し出す。周りには私たちしかいないということもあって、安心しているのかもしれないけど、誰かに見られたら、だいぶ危ない人認定されてしまいそうな光景だな。私がいる時は、なるべく私がフォローするようにしたいけど、あむが見ている方向が、私とは真逆だから、難しくなりそう。


「あむ、とりあえず、学校行かないと。遅刻しちゃう。」

「……………でも、あんなこと言っちゃったし…」

「気にしすぎ。確かに、普通とはちょっと違うこと言っちゃってたけど、悪いことばっかりじゃなかったと思うな。」

「どういうこと?」

「私のクラスの子達、あむに親近感が湧いたって言ってたよ。」

「えっ…」


あむとは違い、早退をしなかった私は、休み時間の時にまた囲まれ、あむについて聞かれた。その時みんなが言っていたのは、あむも辺里君のこと好きって分かって親近感が湧いた、ということだった。辺里君がいるところで大きな声で言っていたけど、まあいいとしよう。ついでに言えば、辺里君もなでしこちゃんもあむについて少し聞かれた。明日学校来れそうか、とかそんな感じのことだけど。今のあむには言わないでおこう。余計混乱しちゃいそう。


「ほら、もうすぐ学校。たぶん、あむのクラスも私のところと同じだと思うよ。だから落ち着いて、いつも通りでいいんじゃないかな。」

「いつも通りって言ったって…もう、昨日のことなのに…」


あむが気にしているのは、きっと、私のクラスの子達もあむのクラスの子達も、改めて考えてみたら、キャラと全然違う、と思っているんじゃないだろうか、ということだと思う。確かに、昨日の今ぐらいの時間に、あむは総会で大胆な発言をして、そのまま帰ってしまった。でも、言ってしまえば、それだけなんだ、あむがしたことは。確かに発言は大胆ではあったけど、その内容は普通の子と同じだし、それ以外は何もしていない。だったら、きっとあむのことをそこまで変な子だと思うのか、私は不思議に思う。


「あのね、あむ。周りの人たちは、ちょっと変なことをしたくらいで、あむの見方を変えたりしないよ。確かに、親近感が湧いたって言ってはいたけど、カッコ悪いなんて、誰も思ってないと思うよ。むしろ、みんなの前で堂々としてて流石だねって言ってた。」

「でも…」

「確かに、頑張った後って、ちょっと怖いよね。でも、頑張った結果まで、あむが決めることなのかな。私は、あの時のあむ、すごいなって思ったよ。言いたいこと、ちゃんと言えてたもん。」

「あめ…うん、そう、だよね。ちょっと元気出た。ありがと、あめ。」

「ふふっ、どういたしまして。」


校門をくぐり、教室へ向かう間、あむを説得し続けた。あむが自分から頑張った訳では無いけれど、事情が分かっていない私みたいな子にとっては、あむは憧れの眼差しを向けられるような気がした。あんな大勢の前で、勇気を出して発言していたのだから。だからこそ、あむには自分を卑下して欲しくなかったし、悪い方に考えて欲しくなかった。

あむも少し元気になって、私たちはそれぞれの教室に入った。あむは、きっとクラスでたくさん話しかけられるんだろうな。教室に入った途端私の元にやってきた子達の話を聞きながら、そう思った。

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