リボーン複数主番外編 | ナノ


▼ お揃いのプレゼント

由良が黒曜方面に向かうのをしっかり目に焼き付けたなまえは自分もそろそろ帰ろうと席を立った。

「あ。」

真っ直ぐ家に帰ろうと思っていたが、すぐに今日は違うルートを使うんだったと思い出す。後でどうにかなるだろうと、明日のクリスマスパーティーで行うプレゼント交換用のプレゼントを今日買うつもりだったのだ。
思い出せてよかったと、ホッと息をついたなまえはカバンを肩に提げ、家に向かう反対側の方面に曲がり、目的地に向かって歩いていった。
そのなまえの姿を校舎から見下ろす影が1つあることも知らずに。


なまえが辿り着いたのは商店街から少し離れたこぢんまりとした小さな雑貨屋。ハンドメイドのアクセサリーや小物などを販売しているお店で、奥まった場所にあるからかお客さんも少なく、店員も必要以上に話しかけないので気に入っていた。
店内に流れるオルゴールで奏でられるクリスマスソングのBGMを聴きながら、ピンとくるものがないか探していく。2人に似合いそうな、邪魔にならないような物。
なまえもそうだが、3人とも1度死んでいる身でいつ死ぬか分からない、明日死ぬかもしれないという考えでいるので、基本的に使わない物は買わない。予め3人で話していてプレゼントは日頃使える物をという事になったのだ。

「うーん…」

唸りながら商品を見ること暫く、屈んでいた体勢から1度切り替えようと顔を上げた時、ある商品が目に止まった。カバンに挟むだけで可愛いアクセントになり、更に失くしにくくなるとコメントが書かれたPOPにこれだ!と閃いた。1つ選んで、と思ったが、どれも可愛らしく選びにくい。加えて自分も欲しいと思いなんなら皆でお揃いにしたいと思い始める。

「どうしよう…」
「みょうじなまえ。」
「ひぅっ!!」

むむ、と再び唸り出したなまえは耳元で聞こえた声に驚き、息を吸いながら悲鳴を上げ、すぐに店の中だと思い直し口元を手で押えた。店の人は驚いた表情で見ているが、特に注意することも無く、また黙々と作業に戻った。それを荒くなった呼吸を整えながら確認して、安心したなまえは口元を押えたまま恐る恐る振り返る。
背後にいたのは思った通りの人で、売場の通路が狭いため、至近距離にあった整った顔に驚き、赤面する。

「ひ、ヒバリ、さん…」
「また寄り道?それも堂々と制服姿で買い物なんて、いい度胸してるね。」
「す、すみません…!すみません…」

普段と同じ学ランを肩に羽織ったヒバリが腕を組んで見下すように言う。その顔は笑っているが、纏う空気は機嫌が悪そうで、許してもらえるとは思えないが咄嗟に謝ったなまえは勢いよく頭を下げようとしてヒバリにぶつかり、すぐに小さく謝罪し項垂れた。
やっちゃった…!
羞恥で顔を赤くし、しかししゅんとした表情で俯くなまえを見てヒバリは口を開く。

「以前寄り道するなと言ったはずだけど。君は理解出来なかったの?」
「っ…す、すみません…」

ジトリと睨めつけるような視線を受け顔を上げられず縮こまるなまえは今度は顔を青くし、小さく震えた。以前黒曜生が並中生を襲う事件を起こした時、首謀者である六道骸を倒しに行く前に寄り道をせずに帰るよう言ったにもかかわらず寄り道をしまくって巻き込まれ、散々くるみや由良、ヒバリから怒られたのを思い出したからだ。
どうしようと震えるなまえを見て、普段なら違反者は容赦なく噛み殺すはずなのに何故かなまえにはそういう気が起きなかったヒバリは嘆息し、少し横にずれてなまえの隣に立った。

「何がどうしようなの。」
「えっ…」
「さっき言ってたでしょ。」
「あっ…」

ヒバリの突然の質問に顔を上げたなまえだが、聞かれていたことにまた恥ずかしくなりますます顔に熱が集まり俯いた。ヒバリは急かすように聞いてるのと声をかけ、しまったとすぐに顔を上げたなまえは真っ赤になったまま口を開いた。

「く、クリスマス、プレゼントに、良さそうな物を見つけたん、ですけどっ、交換だから、1つだけ買わないとっていうのは分かってて、でも、お揃いがいいなって思っちゃって、それで、どうしようって…」

言葉尻を窄めて再び顔を下げていくなまえの言葉に、ヒバリは驚いたように目を見張る。普段の彼女は揃いの物がいいと言わない、というか言っているのを見たことも聞いたこともなかった。しかし実際はそうではなかったようだ。自分と揃いの物がいいと言う姿はとても健気でいじらしい。ヒバリは自然と口角を上げ、面白そうなものを見たと言わんばかりに笑った。
ここで盛大な齟齬が生まれた。
しかしそれを指摘する者はどこにもおらず、2人はそのまま会話を続けていく。

「どれがいいの?」
「えっと、これ、なんですけど…」
「何これ。」
「えっ、あっ、えっと、キークリップっていうので、鍵を失くさないようにする物です。」
「ふぅん…」

なまえの説明に聞いているのかいないのか、よく分からない返事を返して1つ手に取った。店内のオレンジ色の柔らかなライトに当たったそれはキラリと光り、ヒバリが持っているせいもあってかとても輝いているように見えた。
自分の分は今ヒバリが持っている物にしよう。
そう決意したなまえはまだ色々な角度からキークリップを見ているヒバリを盗み見て、自分も物色し始める。2人にはどんなモチーフが似合うだろうか。真剣な表情で吟味するなまえの姿に、ヒバリはじんわりと胸が暖かくなる心地がした。

「これと、これ、かな…」

ようやく決まったなまえは2人に似合うだろう雰囲気のキークリップを手に取った。喜んでくれるといいな、ビックリするかな、などと思っていると横から2つもいらないよと声がかかる。

「えっ…?」
「お揃いにしたいんでしょ?」
「は、い…」

ヒバリの言っている意味が理解できず、ポカンとしたなまえは確かにお揃いにしたいとは言ったけど、だったら2つって普通だよね?と考え、困った顔でヒバリを見る。ヒバリもどういうことかと怪訝な顔でなまえを見た。
しかしそれで分かるはずもなく、推しの言いたいことも察せられない自分なんて…!と心の中で嘆いたなまえはこれ以上長くいるのは店の迷惑になると考え、お会計に向かおうとする。自分が持つ2人の分のキークリップと、ヒバリの持つキークリップを店員に渡したいのだが、と震えそうになる口を恐る恐る開いてヒバリさんと声をかける。

「あの、お会計を、したいので…その…今、手に持っているキークリップも、あの、買いたいなぁ、と思っている、ので…わ、渡して、頂けないで、しょうか?」
「なんで。」
「えっ?あ、あの、お会計を、したいので…?」
「これも渡すの?」
「えっ?い、いえっ、自分用に…」
「じゃあ問題ないでしょ。」
「えっ?あ、あのっ…交換、だし、お揃い、なのでっ…!」
「君はそれを渡す。僕はこれを渡す。それで交換でしょ。」

スタスタと進むヒバリに吃りながら待ったをかけていたなまえだったが、なんとなくヒバリが言っている事が理解でき、慌てて違います!と叫ぶ。聞こえたヒバリは目を見開き、固まる。その直後、店の空気が一気に下がった。ビクつき、震える店員となまえ。ヒバリが持つキークリップがミシリ、と小さな音を立てた。それにいち早く気づいたなまえはあのっ!と声をかける。

「揃いにしたいんじゃないの。」
「そ、うですけど、それは由良とくるみの話、で…」

なまえの声も気にせず聞いたヒバリに答えれば、眉間に深く皺が刻まれる。それにまたビクついて、でも少しだけ期待して、もう一度声をかける。

「お揃いでも、いいんですか…?」
「……………。」

期待を込めてしかし怖々と少しだけ赤い顔で見つめると、ヒバリは眉間に皺を寄せたまま顔を背ける。それに不安になったなまえだが、ヒバリの纏う空気から冷たさが消え、少し雰囲気も柔らかくなったことに気づきホッとする。

「好きにすれば。」
「!あ、じゃ、じゃああの、も、もう1つ見つけてたのあるので、それを!」

ボソリと言ったヒバリに嬉しくなり、少し興奮して上気し赤くなった頬をそのままに、嬉しそうにしかし丁寧に目をつけていた物を取って今度こそ会計に向かった。


会計を終えた2人は店を出て暫く歩くとポツリポツリとオレンジや白、青色の光が見え始める。

「!」

気づけば駅付近に来ていたようで、駅前の通りに続く木々に電飾が付けられ暗い中キラキラと輝いていた。
まるで自分がこの綺麗な光の中の中心にいるような心地になったなまえは思わず足を止め、目の前に広がるイルミネーションに目を奪われた。なまえが止まったことに気づいたヒバリが足を止め振り返ると、キラキラと目を輝かせ、寒さと興奮で上気した頬を少し緩ませてイルミネーションを眺めるなまえの姿があり、目を見張る。
しかし、それもすぐになまえが止まってしまったことに気づいて慌てて戻ったことでヒバリも表情を戻し、再び歩き出す。
イルミネーションを通り過ぎ、暫く歩いて辿り着いたのはなまえの家。ヒバリがまたしても自分を送ってくれたことにようやっと気づいたなまえは慌てる。

「あ、あのっ、ヒバリさんっ!すみません!また、送ってもらってしまって…!」
「僕は見回りしていただけだよ。」
「でもあのっ…ありがとうございますっ!」

ガバリと頭を下げたなまえはそれで、とワタワタとしながら店を出てから渡せなかった物を差し出した。
真っ赤な顔で無言で渡してきたなまえにヒバリは少し考え、無言で受け取った。ヒバリの行動にホッと息を吐いたなまえは嬉しそうに小さくはにかんだ。

「?………ぁ!」

そんななまえにヒバリも無言で渡してきた。すぐに気づいたなまえは推しから渡されたプレゼントという凄い物を震えながら、しかし丁寧に両手で受け取りゆっくりと胸に抱いた。

「ありがとうございます…」
「大切に使いなよ。」
「はいっ!」

嬉しそうに笑うなまえを満足気に見たヒバリは早く家に入るように言って、学校への道のりを歩いていった。


料理も無事完成し、くるみの部屋に運んで机に並べ終わった頃、ちょうどなまえの話も終わったようでそんな感じと言って話し終えた。

「イルミネーションって、よくヒバリがそこ通ったね。結構人いたんじゃない?」
「それがあんまりいなくてさ、だからヒバリさんも平気だったのかも。」
「あそこ時間帯によっては人通り少なくなるんだよね。」
「へぇ〜。」

解説のように付け足したくるみはそんなことより!となまえに顔を向ける。

「もしかして今日持ってきたそれ、恭弥くんからもらったプレゼントでしょ!」
「ぅえっ…?」
「それを言うならくるみのカバンについてるストラップ、そうなんじゃない?」
「そ、それなら!由良の首元につけられてるのも…!」

3人それぞれ指摘し合って自爆したように顔を真っ赤にして黙った。全員昨日のことを思い出したからだ。
いち早く立ち直った由良がそれより!と強い声を上げ、飲み物が入ったコップを手に取った。

「料理冷めるし、始めよ?」

由良の言葉に2人とも一瞬呆けるが、すぐにパアッと顔を破顔させて頷いた。各々コップを持って、お互い見合う。

「「「カンパイ!!」」」

3つのグラスがカチャンと当たり、3人だけのクリスマスパーティーが始まった。
皆で作った料理を食べ、談笑し、賑やかな雰囲気に気分も高揚する。

「それではお待ちかねのプレゼント交換タイムー!」

暫くしてくるみが声を上げ、2人もわー!と拍手とともに掛け声をかける。そのままくるみが用意したプレゼント交換用に編集した音楽をかけ、それぞれが用意したプレゼントを一定のリズムで回していく。

「ストーップ!」

音楽が止み、くるみの声で全員手に持っているプレゼントを自分の膝に置いた。3人ワクワクした表情で自分が持っているプレゼントを見る。

「じゃあ1人ずつ開けようか!」

まずは私から!
そう言ってくるみが受け取ったプレゼントを開ける。

「わあ!可愛いポーチだ!」
「あ、それ私が選んだヤツ。」
「くるみにピッタリのデザインだね!」

くるみが受け取ったのは由良が選んだ普段使いもできるデザインのポーチだった。くるみは嬉しそうに大事に抱き寄せてありがとう!と微笑んだ。それにどういたしましてと微笑み返した由良は次は私ね、と持っていたプレゼントを開ける。

「あ!これなまえちゃんが選んだのだよね?」
「すっごいネタバレしてたことにさっき気づいたよマジごめん。」
「面白かったからいいよ。どんなデザインかと思ったけど、結構いいセンスしてるじゃん。」

由良が受け取ったのはなまえが選んだキークリップで、偶々由良に似合いそうだと考えていた物だったようでよかった!と安心していた。由良のお礼に笑って返したなまえは最後は私!と開ける。

「これ、栞…?」
「あ!私が選んだのだ!」
「ステンドグラス風になってるんだ。使うの勿体ない気もするけど。」
「長く使えるように丈夫に出来てるんだって!皆本とか漫画とか読む時に使うかなって思ってっ…」

くるみの説明になるほど、と理解した2人。なまえはありがとう!とくるみに伝えて徐にカバンからもう1つのプレゼントを取り出した。

「てことではい!お揃いの!」
「わぁっ…!ありがとう!お揃いって憧れてたんだ!」
「良かったね。」

なまえ、くるみのやり取りを微笑ましく見ていた由良は実はと言って同じようにプレゼントを取り出し、なまえに差し出した。差し出されたなまえはきょとりと見返す。

「私も用意しててさ、お揃い。だからこれはなまえの分。」
「!ありがとう由良!私も欲しいって思ってた!」
「あ、じゃあ私も…」

言ってくるみも引き出しからそっと取り出して由良に手渡した。

「由良ちゃんに似合うなって思って、買っちゃったっ…!」
「くるみ…ありがとう。」
「どういたしまして!」

どうやらくるみも買っていたようで、皆でお揃いの物が一気に増えた。

「来年も一緒に出来たらいいね〜!」
「今から予定入れとく?」
「それもアリだね。そうしようか。」

各々スマートフォンのカレンダーアプリを開いて次の年の予定として、3人でパーティーと入れる。

「よし!それじゃあケーキ食べよう!」
「食べよう!」
「お皿用意するね。」

プレゼントを大切にしまい、お待ちかねのケーキも食べて、3人はまだ話が尽きない様子で談笑を続け、それは深夜遅くまで続いた。

fin.


と、いうことでリクエスト頂いていたましたクリスマスにちなんだお話です!
が、リクエスト頂いてから既に1ヶ月も経ってしまってる…!大変申し訳ありません!
夢主たちのクリスマスの過ごし方というか、そういったリクエストだったのですが、相手キャラとのやり取りに結構割り振られててこれでご納得いただけてるか不安ではありますが、こんな感じでどうでしょうか…!?
一応memoの方にこの話はこういうネタもあったんだよーみたいなことも書いておりますので、そちらもお読みいただければと思います…!
すみません書き手がポンコツなせいで上手く入れられなかったりしちゃって…
ですが書いていてすごく楽しかったです!みんな仲良しなお話を書くのは本編のあの感じもあって余計楽しいー!てなりました。(笑)
改めまして、なまえ様、この度はリクエストありがとうございました!もしまた何かリクエストしたいというのがありましたらまたキリ番を踏まれた際にして頂けると幸いです!
本当にありがとうございました!これからもよろしくお願いします!

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