標的4

夏休みに入り、四季は補習がなかった為に自室で勉強をしていた。あと少しで終わりそうだから今日の分を終えたら鍛錬に行こうと計画を立てていると、コンコンと部屋の扉からノック音が聞こえてきた。

「綱吉?どうしたの?」
「ごめん四季。あのさ、今から山本と補習の課題やるんだけど、よかったら一緒にやらない?考えてみれば、分かる人がいないと解けない問題もあると思って、教えてほしくて…」
「分かった。私も少し宿題が残ってるから、一緒にやろう。」

四季が言うとパアッと表情を明るくさせたツナに先程まで立てていた計画は遥か彼方へ飛んでいき、可愛らしいなあと小さく微笑んだ。
出されていた課題や宿題、解き方が載っている教科書に参考書を持ってツナの部屋に向かう。すると山本だけでなく獄寺もおり、どうやら山本もツナと同じことを考え、NASAから声がかかる程頭の良い獄寺を呼んだようだ。笑顔の山本と複雑そうに顔を歪めた獄寺に迎え入れられた四季は空いたスペースに座り、早速残っている宿題に取り掛かった。

「で、こうなる訳です。」
「獄寺お前さぁ、さっきから教科書読んでるだけじゃね?」
「なっ…!」

勉強会が始まって暫くして、獄寺の解説の声だけだった所に聞きながら解いていた山本から指摘の声が上がる。図星を突かれたためか少しどもりながら解き方は教科書に載ってある!と怒鳴る獄寺に怯えるツナと、呑気に笑いながら同意し更に大体解けたと答える山本。獄寺が彼の解答を確認すれば解けなかった問7以外正解しているようだ。山本の隠れた頭脳の良さに感心と驚き、仲間を失ったショックが隠せないツナ。黙々と課題を進める四季には彼らのやり取りは右から左に流されている。

「四季。」
「どうしたの?」
「四季はこの問題分かる?」
「どれ?」

そんな四季に一縷の望みを賭け、ツナが獄寺も解けなかった問7の問題を見せる。問題文を読み、自分のノートの余白部分に解き方を書いていく四季だったが、途中でピタリと手が止まる。
この解き方は違う、ではこちらの方はどうだろう。何度か試すが、どれも途中で解けなくなり、手が止まる。
四季の様子を不安げな表情で見ていたツナはやっぱりダメか、と肩を落とした。

「ごめん。」
「いや全然!獄寺君でも分かんなかったんだからしょーがないって!」
「やべーな。全部解けなきゃ落第だったよな?」
「なんでそれを早く言わねぇ!!」

謝罪する四季にそれをフォローするツナの横で、山本が困ったように笑いながら言えば机を壊さんばかりの勢いで叩き吠える獄寺。それにビクついたツナと、あれ?と首を傾げた四季はみんなで何とか問7を解こうと意気込む3人に疑問を口にする。

「義務教育に落第ってあるの?」
「「「あ。」」」

四季の疑問にそういえばと呆ける3人。

「そういえば、中学生で落第になってるって聞いた事ないかも…!」
「確かにどんなに成績悪くても進級できるって先輩から聞いたことあったな…」
「考えてみりゃあ普通中学で落第ってありえねーな。」
「出来ねーこともねーぞ。」

希望が見えた!と喜ぶ3人に水を差すように別の声がかかる。今回の勉強会で家庭教師にも関わらず口出ししないと言っていたリボーンだ。リボーンが言うには、落第、正確に言えば留年になるが、は実際あまり起こるわけではないが、理由によってはさせることは可能らしい。その理由は成績不振も入っているので、ツナたちはバッチリ対象に入っていた。

「ごめん。ぬか喜びさせるようなことを言ってしまって。」
「いいって!お陰でやる気も出てきたし!みんなでガンバローぜ!」
「そうだね。」

しょんぼりと肩を落として謝罪する四季を励ます山本に鼓舞されたのか、4人は問7の解き方を教科書や参考書から探し始めた。


解き始めてから数時間が経過し、時刻は15時になろうとしていた。それでもまだ答えは分からず、先程の四季のように途中まで解けるがそこで解けなくなってまた最初からの繰り返しだった。

「このクソ暑い時にお前たちむさくるしーぞ。」

どうしようとお手上げ状態になりかけていた時、再びリボーンの声がした。と思えば、彼は何故か炬燵に防寒具着用で入り、鍋までグツグツ煮ているという季節感まるっと無視な格好でいた。暑っ!とツナがつっこむが、それはリボーンではなく別の人間が思いついたものらしい。

「お前以外に誰がいるんだよこんなの思いつくの!」
「ハルです。」
「ハル!?」

ドアの陰から出てきたのは並盛ではなく他校の制服を着た少女で、ツナたちの気分転換になればとこの我慢大会を思いついたらしい。弟の新しい友達だろうか?そう思って四季が眺めていれば、パチリと目が合った。途端ハルと呼ばれた少女は目を釣りあげ、ツナに詰寄る。

「ツナさんサイテーです!ハルというものがありながら、堂々と浮気ですか!?」
「は、はあ!?何言ってんだよお前!浮気って、なんのことだよ!?」
「じゃあこの儚い雰囲気の女の子は一体どなたですか!?」
「姉弟だよ!俺の双子の!」
「はひ?」

ツナの叫びながらの説明に先程までの勢いは何処へやら、目を丸くさせ双子?と首を傾げる。

「綱吉と何時も仲良くしてくれてありがとう。双子の四季です。どうぞこれからも、弟をよろしくね。」

落ち着いたハルに少し微笑みながら言った四季はすごいね、たくさん友達できたね、とツナの頭を撫でる。やめろって!と照れて逃げるツナ。

「は、早とちりしてすみませんでした!」
「?綱吉とあまり似てないから仕方ないと思うよ。」
「本当にすみません!ハルは、緑中の三浦ハルといいます!ツナさんのお嫁さん候補です!これからよろしくお願いします!四季さん!」
「そうなの?じゃあ義妹になるのかな?」
「はひ!まだ先のお話ですよー!」
「ならないって!!」

青い顔で謝ったと思えば、今度は照れて顔を赤くするハルに蜜璃ちゃんみたいと感情表現豊かだった前の友人を思い出す。
そんなハルの通う緑中は並盛よりも偏差値が高い学校らしく、問7も分かるかも、と問題を見せれば見たことがあるとの事だったのでそれじゃあと任せることにした。

「すみません!分かりませんー!」

日もどっぷり暮れた頃、分かると言ったはずのハルが涙ながらに謝罪した。一気に絶望感が増すツナたち。このままでは弟が落第になってしまうと焦る四季。

「あー!ハルこの問題解けそうな大人の女性知ってます!」

山本の大人なら解けるのでは、という言葉にハルが先程の名誉挽回とでも言うかのように挙手をしながら叫んだ。そのまま携帯を取りだし連絡をしたのはなんと先日ツナの家庭科等の家庭教師になったビアンキで、近くにいたからすぐに来れるとのこと。納得した四季とは対照的に顔を青くしたツナと獄寺は反対するが、外から自転車のベルの音がして獄寺が目にも止まらぬ速さで部屋を出て玄関まで駆け降りる。その直後、彼の悲鳴が聞こえ、かと思えば獄寺を担いだビアンキがやってきた。

「こんなものどーでもいいわ。」

体調不良で気を失った獄寺をベッドに寝かせ、問題を読んだビアンキは一言言うとそのままツナの課題を破いてしまった。掴みかかろうとするツナを山本が宥めつつ止めるが、ビアンキは悪びれもなく大事なのは愛だと宣う。
その後、ハルの父親も来て解いてもらったが、結局それまで静観していたリボーンが答えを教えたことでなんとかツナたちの落第は免れた。


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