標的18

パァンッという大きな発砲音の後、ドサリと倒れる1人の少年の体。四季は思わず手当てをしていたヒバリを置いて、倒れた少年、骸の傍に駆け寄った。

「四季!?」

流れるような彼女の動きに追いつけず、ツナが声を上げるが、四季は気づいておらず、手を口元に当てたり、脈を測るため首筋に指を当てたりして確かめている。そんな彼女に、リボーンが硬い声でやめろ、と止めさせる。リボーンの声に動きを止めた四季は静かに首を振り、ヒバリの手当てに戻った。

「ついに、骸を倒したのね…」
「!アネキ!」
「よかった!意識が戻った!」

手当てをする四季の傍で、やるせない思いで会話していたツナ達だったが、フゥ太によって腹を刺され、意識を失っていたビアンキが目覚めたことで喜んだ。四季の手当てを受けたとはいえ、まだ無理はできない状態のビアンキは、近くにいた獄寺に肩を貸して欲しいと頼み、獄寺は今日だけだからと念押ししながら近づいた。

「行っちゃダメだ!!」
「えっ」
「ん?」
「綱吉?」

途中で何かに気づいた様子のツナが制止の声を上げるも、皆、声を上げたツナでさえも理由が分からず、結局ツナの言葉は叶わず獄寺はビアンキに近づき、手を差し伸べた。ビアンキは申し訳なさそうな顔ではい、と獄寺の手に重ねようと手を伸ばした。

「!な、何しやがんだ!!」
「!」
「えぇ!?」

しかし伸ばした手には何故か骸の武器である三叉の槍の刃先があり、その切っ先が獄寺の頬を掠め傷つけた。少し横に逸れていれば、鋭利な刃が獄寺の顔に突き刺さっていただろう恐るべき事態に、そしてそれを引き起こした犯人がビアンキという事実に皆が驚き、一斉にビアンキに目を向ける。しかし彼女はまあ!私ったら…!と、事の事態を理解できていないのか、思わずといった風に零していた。そんな彼女にツナは違和感を覚え、その正体を探るより早く、リボーンがしっかりしろとビアンキの鼻をぺちりと叩く。そんなリボーンを愛しているはずのビアンキは、なんて事をしたのかしらと言いながら、その言葉とは裏腹にリボーンに向けて槍を突き刺そうとした。
その動きで漸く皆異変に気づき、不可思議な行動をするビアンキを警戒する。マインドコントロールかと推測するが、リボーンが即座に否定し、何かに憑かれているようだと続けた。呪いのようなその言葉の内容に皆驚くが、ツナが何かに気づいたようにハッとする。

「ろくどう…むくろ…?」
「!」

無意識のままで呟いた言葉は、先程銃でこめかみを撃ち抜いて死んでしまったはずの骸の名前。ツナのぼやきに反応した四季はピクリと手当てをする手を止め、一度倒れているはずの骸に目を向けてから手当てする速度を上げた。
そしてツナのぼやきに反応したのは四季だけでなく、ビアンキも同様に、ツナが骸の名前を呟いた途端、纏う雰囲気を変え、クフフ、と特徴的な笑いを零したと思えば、また会えましたねと右目を赤く変え、顔を上げた。その右目はまさしく骸と同じもので、眼球の中には漢数字の「六」の文字が刻まれている。
驚き怯えるツナと獄寺が叫ぶが、リボーンが制し、そのお陰で落ち着きを取り戻したのか、獄寺がここは自分に!と声を上げ、魔除けの呪文を並べ立てるとビアンキの中にいる骸が呻き出し、倒れた。獄寺の魔除けが効いたのかと思ったのも束の間、今度は獄寺の体に乗り移った骸はツナの背後に立ち、軽く声をかけるといつの間にか手にしていた槍を振り下ろした。
間一髪で骸だと気づいたツナが避け、獄寺と距離を取っている様子を横目に、四季はヒバリの手当てを終え、倒れている骸の傍に駆け寄った。再度口元に手を当て、呼吸しているかどうかを確認し、脈を測ろうと首筋や手首に指を添え、実際に心臓が動いているか確かめるために耳を胸元に当てた。しかし、どれも確認は取れない。

「やっぱり、死んでる…」
「四季!何してんだよ!危ないから離れろって!!」

四季がぼやいたところで、ツナが焦ったように声を荒げた。見れば、いつの間に移動させていたのか、倒れ込んだヒバリの近くにいる状態でこちらを心配そうに見ていた。きょとりと目を丸くしながらもう一度確認しておきたくて、と答えようとするより早く、ツナの近くに倒れていた獄寺とビアンキが再び骸の気配を纏いながら立ち上がり、気づけば入り口付近に傷だらけの黒曜生2人が立っていた。うち片方は獄寺が相手を買って出たニット帽を被った黒曜生だった。その黒曜生2人も骸の気配を纏っている。

「四季、危ねーから離れてろ。」
「分かった。」

骸の気配を纏った獄寺のダイナマイト、そしてニット帽の黒曜生による攻撃を避けながら、リボーンが短く言い、それに頷いた四季は骸の体を少し離れたところに運んだ後、倒れたままのヒバリの元へ急いだ。その間、ツナやリボーンに集中的に攻撃が向かっており、四季に攻撃が向くことは一切ないままヒバリも移動させた。


×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -