標的19

自身を銃で撃ち抜いた骸は死しておらず、どんな絡繰りなのか、獄寺やビアンキ、仲間の黒曜生2人の体を使ってツナやリボーンに攻撃を仕掛けた。途中、怪我で倒れてしまい、手当ても受けずに血を流しながらも動く黒曜生を心配したツナに、骸は知ったことかと言わんばかりに憑依している自分の体だと言い張り、困惑させた。そして敵であろうと相手を気遣うツナを見て、閃いたとばかりにそれでいこうと零し、憑依した獄寺の体を傷つけながら、これ以上仲間を傷つけられたくなければ体を差し出せと脅してきた。
それに対し、ツナは迷い、リボーンに助けを求めた。しかしリボーンは手を出せない為、自分でなんとかしろと突き放す。その言葉に見捨てられたと感じたのか、ツナは縋るようにリボーンを呼べば、甘えるなという言葉と合わせてリボーンの拳が飛んだ。

「お前は誰よりもボンゴレ10代目なんだ。お前の気持ちを吐き出せば、それがボンゴレの答えだ。」
「!オレの、気持ち…」

ツナの胸倉を掴み、怖気付いて尻込みしていたツナに喝を入れるリボーン。リボーンの言葉を聞いたツナは自分の気持ちが何かを暫し考える。

「綱吉…」

そんなツナを案じた四季がポツリと零すが、彼女の声をかき消すかのように黒曜生の1人、城島犬に憑依した骸がツナの気持ちは逃げ出したい、若しくは仲間がいるから逃げられないのどちらかだと声を上げる。しかしツナは動じることなく、ボソリと呟いた。

「骸に、勝ちたい…!」

静かに、しかしはっきりと言葉にしたツナの思いに応えるように、ずっとリボーンの背中にリュックの如く丸まっていたカメレオンのレオンが光り出し、宙に浮く。口をもごもごと動かし何かを吐き出そうとしていたレオンは骸によって真っ二つにされたものの、吐き出そうとしていたものはツナの手に無事渡り、ツナは新たな武器を手に入れた。

「って、毛糸の手袋ー!?」

どんなすごい武器が出てくるのかと思いきや、ツナの手にあるのは暖かそうな、しかしこの季節には不釣り合いの毛糸でできたミトン型の手袋。受け取ったツナはこれでどうやって戦うんだ、手の血行を良くしてどうするんだと叫びながらもリボーンがつけてみろと言うのでつけると、即座に狙われた骸からの攻撃を弾くことに成功した。弾いたのは手袋の中にあった特殊弾で、骸が阻止するより早くリボーンが手にし、すかさずツナの脳天向けて撃ち抜いた。と同時に、ツナの頭上で骸が憑依した獄寺によるダイナマイトが立て続けに爆発し、巻き込まれた。

「綱吉…」
「さあ、虫の息の彼の体を乗っ取りましょう。」

ボムをまともに受け、ツナは傷だらけの体のまま倒れ込んだ。暫く経ってもリボーンが撃ち込んだはずの特殊弾の効果は現れず、勝利を確信した骸は憑依した千種の手に三叉の槍を持ち、ツナに近づいた。
しかし四季には、ツナがこのままで終わることはないという漠然とした、しかし確かな感覚があった。ポツリと呟いた弟の名前は、心配からくるものではなく、寧ろ頑張れと励ますために発したものだった。

「もう、少しだよ。綱吉。もう少し、頑張って、また笑って帰ろう。私達の家に。」
「?何を馬鹿な事を…」

ふと、無意識にツナに向けての言葉が零れていた。気づいた時には止められず、呆然と、しかしはっきりと発した言葉は、気を失っているはずのツナに届くことは無いもの。そう考えた骸は憑依した内の一人、ビアンキの体で四季に視線を向け、首を傾げた。しかし、それは届かない、意味の無いものではなかった。
倒れたまま、開眼したツナの目は先程の弱気なものとは違い、はっきりとした意志を宿していた。しかしそれに怖気付く骸ではなく、そのまま槍を突き刺そうと振り下ろす。
が、それはツナの手によって掴まれ、ミトンの手袋が眩い光を放ち、形を変えていく。

「なっ…」

やがて、それは黒とシルバーのグローブに変化し、槍の一つを破壊した。ツナの様子も変わっていたことに気づいた骸が飛び退き、距離を置いたところで、ツナが起き上がり、顔を上げる。

「骸、お前を倒さなければ、死んでも死にきれねぇ…!」

再び死ぬ気になったツナは、これまでと違い内なる静かな闘志を引き出す小言弾と名付けられた特殊弾によって、今までよりも格段に戦い方が的確になっていた。あっという間に骸が憑依していた4人を戦闘不能にし、ビアンキと獄寺の処置を四季に頼むと、米神を撃ち抜き、絶命したはずの骸が生きていると言い放ち、それに答えるように起き上がった骸を相手取る。
ここに来るまで見せていなかった唯一の能力(スキル)である人間道を無理矢理右眼をいじって発動させた骸は桁違いの強さだったが、ツナも負けじと喰らいついた。途中、骸に殺せと頼まれたツナが出来ないと背を向けてしまい、逆に骸に利用され危うく憑依を許してしまいそうになったが、新しい武器であるグローブの力によって回避し、骸を倒す事が出来た。

「お疲れ様、よく頑張ったね、綱吉。」

ツナとの戦いで意識を失い、倒れた骸に近寄ろうとして警戒し怒った彼の仲間である犬、千種から自分のファミリーにモルモットにされていたという過去を聞いたり、鬼とも人間とも取れない黒い何かが骸ら3人を鎖で連れ去ったり、骸との戦いで筋肉痛で動けず痛みで気を失ったツナの傍で疲労からリボーンが寝たりと色んな事があったが、四季はこの数時間で多くの事を学び、成長した弟に向けて労いの言葉をかけた。そしてタイミング良く彼をボンゴレの医療班が運んでいき、外傷も精神的にも特に問題無いと伝えた四季だけが、室内に残った。

「あ。」

そんな彼女も、家に帰ろうと足を一歩踏み出して、そう言えばと思い出したように立ち止まる。

「綱吉のお守り、渡したままになってしまった…」

新しい物を作らないといけないな。
この建物に来る前に出会った骸に渡したままだった、本来ならば弟を追いかけてきた理由であるお守りだったが、暫く彼と再会することはないだろうと思い、お守り用の材料は足りていたかと思い出しながら、今度こそ歩を進めた。


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